第32話 変わっていく関係

 ランが自分から別れたことを宣言して、あまつさえその原因が自分の浮気だった事まで周囲に伝えたのは驚いた。


 僕としては、別れるつもりだったので問題無い。

 ただ原因まで告白した事で、ランを見るクラスの目は冷ややかなものに変わった。


 特に僕に詰め寄ってまでランを心配していた友達は、僕にしきりに謝った後、ランには「最低」と告げ絶交を宣言していた。


 そこからは僕たち以外に親しかった友人も距離を取られ孤立していった。

 口さがない噂も広がりあっと言う間にビッチ扱いされるようになり、そういった体目的の男からアプローチされるようにもなった。

 

 何より厳しいのは、うちの学校は三年に進級する際、クラス替えはないので、来年もこの状況下に置かれることになる事だ。


 身から出た錆とはいえ、好きだった子が落ちぶれていく様は僕的には気持ちいいものではなかった。



 ただ、変わらない点もあった。

 本来ならランから別れを宣言した以上、あの約束も反故になると思ったが違った。


 何故かランは約束の継続を望んだ。


「私がレイ君を裏切って傷付けた事実は変わらないから、禊は続けさせて」と。


 そしてスイにも言った。


「レイ君の事を親友としてじゃなく、ちゃんと好きな相手として抱かれて下さい」と。


 これには流石のスイも驚いていた。


 スイの予想では、すぐに音を上げ約束を反故にしてくると思われていたからだ。


 急激な心境の変化に訝しむスイが尋ねた。


「アナタはヤリ部屋を提供するだけになるけど、それで良いの」と。


 ランは「それで構わない」と答えた。


 ただ一つだけお願いされた。


「四ヶ月後の自分をちゃんと見て欲しい」とだけ。


 そこにどういう意図があるのか僕には分からなかった。


 でも、あの告白してきたときのような真剣な眼差しに僕は頷いた。




 そして、いつもの土曜日。


 ランが僕とスイとの仲を後押しする理由は分からない。


 でも、僕とスイはひとつの覚悟を決めてランの家に向かった。


 お互いの一線を超えるために。


 すでに僕のスイに対する燻っていた思いは再燃し火が付いていたし、スイは変わらずに、ずっと僕を待っていてくれてたから。


 正直約束を守るためとはいえ、元カノとなったランの部屋で事に及ぶのはどうかと思ったが。


 そこは、スイが強く希望した。


 過去を払拭するためには絶対に必要だとまで言い切って。


 きっと吹っ切らせる意味もあるのだろう。


 僕が誰よりも未練がましいのを知っているのは、他ならぬスイだから。



 

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