第22話 自問自答


 二人が到着するまでの間、ずっと同じ思考がグルクルと頭を巡る。


 どうして私はこんなバカな事をしてしまったのかと。


 一番は私の強すぎる性欲。


 ずっと抑えていたものが、レイ君との関係で加速し夏休みを経て手が付けられないモノにまで成長してしまったから。


 だからと言って先輩に抱かれるまでは、レイ君以外としたいとは全く思わなかった。


 じゃあ、なぜ先輩は良かったのか?


 それは、きっとタイミング。


 あの夕方の公園で見た二人が余りにも眩しくて、肉体関係がなくても想い合っていられる二人が羨ましくて、体でしか優位性を保てない自分が嫌になった。

 スイと比べて、そういう事でしか関係を保てない自分が穢らわしく、浅ましく思えた。

 でも、レイ君を求める渇きは止まらなくて、どうしようもなく体は疼いてしまって。

 だから、この感情のままレイ君に抱かれたら、そんな穢らわしい考えを肯定するように思えて。


 だから、求めた。


 愛情なんて繫がりの必要ない、ただ穢れた私を受け止めてくれる存在を。


 そして、そこにマッチしたのが先輩。

 秘密厳守で安全性の高く、女性の扱いにも手慣れている。まさに穢れた私の欲望を押し付けるのに都合の良すぎる存在だった。


 そして抱かれて感じたレイ君との差。


 ただお互いの欲求と快楽だけを求める先輩との繋がりより、心も体も満たされるレイ君との繋がりが本当に幸せで気持ちよくて、その差異を感じることでよりレイ君への愛情こそが本物だと実感できるようになっていった。

 レイ君を裏切るような事をしておいて、なお私はよりレイ君を愛し、愛されることに酔っていた。

 そんな歪な愛情確認が間違ってる事にも気づかずに、状況に甘んじて関係を続けてしまった。


 そう、最初から先輩との関係なんて間違ってるなんて、ちょっと考えれば気付ける筈なのに。

 でも完全に脳味噌お花畑レベルまで頭が退行していた私は、浮かれてそんな簡単な事すら気付けなかった。


 だから、あんな男に付け入られてしまう。

 そして、あろうことか付け入られた末に、裏切りに裏切りを重ねようとしてしまった。

 でも、本当に、本当のギリギリで気が付いた。

 レイ君に秘密にするという理由で、あの男に抱かれることが凄く後ろめたい事なんだと思う気持ちに。

 そして、そう思ってしまうと、芋蔓式に今までの事もフラッシュバックした。

 鏡に写ったレイ君以外を受入れても喜ぶメスの顔した私が、快楽だけ貪る浅ましく腰を振る自分自身の姿が。


 なにが、恋愛感情は微塵も無いだ。 

 なにが、スポーツと同じだ。

 

 じゃあ、その事を堂々とレイ君に伝えることができるのかと自問自答した。


 そして何度考えても出てくる答えはノーだった。


 つまり私は、彼氏に言えないようなことを隠れてしていた、本当に穢れてしまったクズなんだと、ようやく気付かされた。


 それこそ同じ位に最低なクソ男の手で。



 本当に情けなかった。

 アレと同レベルまで堕ちてしまった自分自身が。


 だから、それ以上堕ちないように私は決めた。


 全てをレイ君に話そうと、合わせて、先輩に惹かれ始めているスイにも思い留まってもらおうと。


 それが二人の想いを裏切った私の最初の贖罪に繋がるならと思って。

 

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