第14話 夕日に映る憧憬
コウ先輩からの誘いを断った帰り、レイ君からメッセージが届いた。
内容はスイとの買い物終わったから会わないかというものだった。でも、スイと二人で並んで歩く姿が重なって、コウ先輩からの衝撃的な発言もあって会うような気分ではなくなっていたので自分も出先だからと断りを入れた。
そうして、トボトボと自宅に帰っていると、やっぱりレイ君と会いたくなって、コウ先輩の言葉なんて払拭したくて、レイ君に会い行くことにした。
本当はレイ君を家に呼んで、いつものように頭を真っ白に覆いつくして、すべてを忘れさせて欲しかった。
けれど期末テストまでの約束があるのでレイ君が家に来ることはないと思った。
だから私はレイ君の家まで行くことにした。
そして、レイ君の家の近くの公園を通りかかった時だった。
夕日に照らさる、ブランコに乗った二人が目に写ったのは。
それは、まるでノスタルジックな風景を彩る絵画のようにその場に在って。
私は声さえかけられず、ただ尊いと感じる景色に目を奪われて惹き込まれてしまった。
ただ呆然と立ち竦む私。
でも、そんな私に気付いてくれたのはやっぱりレイ君で、少し驚いた表情を見せたけど、直ぐに駆け寄って話しかけてきてくれた。
「どうしたの、さっきは会えないみたいな事言ってたけど」
「うん、ごめんね。でも、どうしてもレイ君の顔が見たくなって」
私はそう言ってレイ君に抱きつくと。
さっきの景色を塗りつぶしたくて、それこそスイに見せつけるかのようにキスまで交わす。
「ちょっとラン。スイも居るから」
逆にレイ君はスイの視線を気にして少し距離を取る。
そんな私達を見ていたスイは、ブランコから降りると微笑みながら「はー、あつい、あつい、邪魔者は退散するから、羽目外し過ぎないようにね」と言って何事もないかのように去って行った。
レイ君はそんなスイの背中に声を掛けること無く視線で見送る。
少し安堵した私は視線を自分に向けてほしくて、再度キスをせがむ。
レイ君もスイの視線を気にせずに良くなった為、私の願いに応じて優しいキスをしてくれる。
すると本当に気持ちが温かくなり、心が満たされる。
でも、それと同時に昂る欲求。
心じゃなく体がレイ君を求める。
本当に最初は会って、ちょっと抱きしめて、ちょっとキスすれば満足すると思っていた。
でも、確実にそれだけじゃ足りないと分かっていた。きっとこのまま一緒にいれば場所も考えずに押し倒してしまいそうなほど私はレイ君を求めてようとしていた。
たから最後の理性で欲望を抑え込むと強がって笑って見せる。
「ありがとうレイ君。満足したから帰るね」
私はそう言って逃げるようにその場から去った。
そして私は帰り道でコウ先輩に連絡を入れた。
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