第15話 鏡に映る自分


 連絡を入れた後、コウ先輩と待ち合わせしたのは都心の方だった。


 理由としては人が多いほうがいくらでも誤魔化しが効くからとの事で、よほど真正面から向かい会わない限りは、良く似た他人としていくらでも誤魔化すことができると言っていた。


 きっと経験からのものだろう。


 私は指定されたカフェで先輩を待ち、約束の時間通りに来たコウ先輩と合流する。

 コウ先輩はさり気なく私に手を差し伸べて、行こうかと促す。私はやんわりと手を繋ぐことを拒否し、関係を持つ上で条件を提示した。


 ひとつは本当に性欲を満たすだけの体だけの関係でいる事。

 だから、親愛の情を示すキスや奉仕などは一切しないし、満足できなかったら今回で終わりだと伝えた。


 ふたつ目は撮影の禁止。写真や動画で二人の関係性を示すものは一切記録しない事。


 三つ目は秘密厳守でどちらかが関係解消を望めば直ぐに応じる事。


 コウ先輩はひとつ目に関しては残念がっていたけど無理強いしないと約束してくれて、ふたつ目と三つ目に関してはコウ先輩も面倒な関係は望んでいないとのことで、むしろこっちからお願いしたい事だったと言われた。


 それから私達はカフェを後にしてホテルに向かう。


 コウ先輩は慣れた様子でホテル街を歩き、私は慣れない為、少し俯き加減で後を付いていく。


 付いた先は煌びやかな感じでいかにもなホテル。


 ここでも先輩は慣れた様子で堂々と入っていき、私はそそくさと付いて行く。


「どの部屋が良い」と聞かれたけど、こんな所が初めてな私は部屋の良し悪しなど分からないため「お任せします」と答えた。


 その時、コウ先輩がイタズラっぽい顔を浮かべていたのに気づけばよかったのだけれど、私はそんな事に気付かないまま、連れ立って部屋に入っる。


 部屋は以外に広く綺麗だったけど、ひときわ広いベッドとそれを取り囲むように配置された鏡に思わず口が開いたままになった。


「先輩。分かっててこの部屋にしましたね」


 恨めし顔で先輩を睨む。

 コウ先輩は私の視線など気にする様子もなく楽しそうに笑って答える。


「アハハハ、良いじゃない。約束通りにキスや胸でしてくれなんて言わないからさ、せめて視線だけでも楽しませてよ」


「はあ、今更部屋も変えれないでしょうし、分かりました。それじゃあ先にシャワー浴びちゃいますね」


 レイ君との時は一緒に浴びるのが当たり前になっていたけどコウ先輩とは一緒に入る気にはならず、先にシャワーを浴びる。

 交代で先輩がシャワーを浴び、待っている間はなるべく余計なことは考えないようにした。


 先輩はシャワーを浴び終えるとタオルなど巻かずに堂々とスッポンポンで出てきた。

 レイ君とお父さん以外の男の人の裸を見るのは初めてで思わず目を逸らしてしまう。


「へえ、おもったより初心なんだね。欲求持て余してる位だからもっとがっつくタイプかと思ったけど」


 私の反応を見て先輩が告げる。


「その、彼以外とはしたこと無いので」


「へぇ、それも以外だね。そっか、じゃあ今の彼氏にそこまで仕込まれちゃったんだね」


 先輩は感心したように言うと私の後ろに回り込み手を胸元に伸ばす。

 最初はバスタオル越しに、直ぐにタオルをはだけさせると直に触れる。

 そこから感度を確かめるからという名目で胸を揉みしだかれ、先端を刺激される。


「ふっふ、本当に感度良好だね。胸だけでこんなに濡れて」


 そう言って先輩は私の大事な場所を撫でると手にまとわりついた粘液を確かめる。


「先輩。約束通りに証明してくれますか、私の体の疼きを治めることができるんだって」


「ああ、勿論約束は守るよ、きっと満足するはずさ」


 先輩はそう言って準備していたスキンを自分で着けると、私をそっと押し倒す。

 それからスキンを潤す為か私の大事な所にスリスリと擦り合わせると、感触を確かめるようにゆっくりと私と繋がって行く。


 私はというと、侵入してくる異物に飢えていた体が正直に反応して、思わず甘い声が漏れ出る。


 少し圧迫感が強い先輩の存在を体の奥まで感じると、薄く閉じていた目を開く。

 すると鏡が目に入り、そこには、気持ちよさそうな顔をしたメスが映る。 


 そこで、ようやく私は実感する。

 レイ君以外の男を受け入れたという事実を。


 

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