第24話 怒りの矛先
ランから口から吐露された思ってもいなかった告白。
レイを裏切って久井那先輩と関係を持ったことから始まり、何故か私が件の先輩に懸想していたかのよう思われ、謝られた。
意味不明すぎる。
私があの先輩に一ピコグラムも想いを寄せたことなんて無いのに、そう思われていた事の方が腹立たしくて。でも、それ以上に許せなかったのは、レイを裏切っていた事だった。
しかも、その理由も私にとっては我慢ならないものだった。
だいたい意味が分からない。
レイとやることやって散々ラブラブな所を見せつけておきながら。
なにが、肉体関係がなくても繋がだていられる、私とレイの関係が純粋で尊くて羨ましかっただ。
私達は肉体関係を持たないのではなく、持てなかっただけだ。
一度失敗しヒビ割れたガラスの器を壊さないようお互い慎重になっていただけに過ぎない。
本音を言えばそんな関係ぶち壊してやり直したいと何度思った事か。
でも、臆病だった私にはそれが出来なかっただけ。
だからこそ、自分の気持ちを真っ直ぐに伝えレイに自信を取り戻させたランを素直に凄いと思った。
そして敵わないと感じさせた。
もう、私はこのまま二番で構わないと思うほどに。
でも、結果はこれだ。
私の時以上にレイを深く傷付けた。
散々取り繕う言葉を並び立てるけど、レイには響かない。当然だと思う。
そもそも謝罪の質が軽いのだ。
自ら罪を告白したこたとに満足して、償うために再構築を望むなんて甘すぎる。
だいたい情に訴えて安易な手段でやり直したとしても、どうせまた失敗する。
本当に……ホントのホントに心の底からのやり直しを望むのなら、自らの罪を身をもって自覚すべきなのだ。そうして本当の痛みを理解しないと、この女は絶対に分からない。
だから今のランは見ていられない。
考えることを止め、ただ闇雲に謝り、罪悪感たけで「ごめん」と口にする。
やり直しを求めるにしても、そこにレイへの配慮が無い。
ただ、レイが好きだから離れたくない、ただそれだけのエゴイズム。
レイの情に縋り付こうとする浅ましい行動だと気付けてさえ居ない。
親友だった存在は、私の何よりも大切だった人を裏切り、また傷付けようとする。
極めつけは「心配ならGPSで位置を特定しても……」なんて考え。
そんな事をしなければ関係を維持できない時点で
、繋がりとして破綻している事にすら気付けていない。
盲目的なレイへの愛着だけしか彼女には残っていない。
下手をすればストーカーにすらなりかねない。
私はもう我慢の限界だった。
彼女の縋ることしかしない落ちぶれた姿を見るのも。
そして何よりそんな最低な彼女さえレイは見捨てる事が出来ないだろうというの事も分かっていたから。
だから私は怒りを込めてランの話を遮った。
冷静になった時のレイが彼女に手を差し伸べる事がないように。
「いい加減にして」と。
そして続けざまに。
「きっと今のランは同じ事を繰り返す。そして、その時は今よりも更に深くレイが傷ついてしまうのは目に見えている」ともハッキリ伝えた。
……でも、そんな言葉は建前できっと本音はレイを取り戻したいだけ。
結局、私もランと変らない浅ましい女なのだろう。だけど一つだけ違う、だって私はどんな事があってもレイが一番だから、自分の事なんかその次で構わない。
だからこの瞬間に決めた。
私は悪女になると。
レイからランから引き離すためには何でもしてやろうと、その結果がやりすぎてしまうことになっても。それで例えレイに嫌われたとしても、それがレイを守ることになるなら構わない。
そのためには手始めとして、ランに……この浮気女にはわからせる必要があるだろう、自分がどれだけ酷いことをしたのかを。
そして、自分の罪深さを自覚すれば、きっとやり直しがいかに難しいか理解するはずだ。
同時に、自分がいかに簡単に復縁を迫った恥知らずだったということも。
だから、その最初の一手として、私はランが見ている目の前でレイの唇を奪ってみせた。
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