第20話 幼馴染との過去
「もう、顔がニヤついてるわよ。どうせランの事でも考えてたんでしょう」
隣で歩くレイのだらしない表情を嗜める。
でも、本音は私に対してこの表情をさせたかった。
だけど私は失敗した。
私のほうが、そのチャンスを先にもらっていたのにも関わらず。
レイとはそれこそ幼稚園からずっと一緒に育ってきた間柄だった。
親同士も仲が良く、聞いた話では冗談で許嫁にでもしようかと話していたらいに。
実際、レイの家柄は私の家ほどでは無いけど、申し分ないものだったから、半分本気だったのではないかと今は思う。
でも、そんなものが無くても私とレイは相思相愛になれたのだから問題ないはずだった。
あの日、レイの誕生日にプレゼントとして私の初めてを捧げた日までは。
それこそ、幼い頃からずっと一緒で、小学生のときに、周りの男子から揶揄われても、中学の思春期真っ只中でイジられようとも、私達の気持は変わらなかった。
お互いに好きという気持ちを告白して。
正式に付き合って、初めてデートして、初めてキスをして。
全部の初めてをお互いで塗り替えて行った。
そして、愛し合う男女が最後にたどり着く先で、心身共にひとつになって幸せになるはずだった。
でも、結果は最悪な形で終わった。
簡単に言えば私達にはまだ早かったのだろう。
レイは愛情という感情が暴走し、欲望と本能のままに私を求めた。
そして私は、そんなオスの激情剥き出しのレイを受け入れるのことが出来なかった。
いや、正確に言うなら受け入れたが、耐えることが出来なかった。
ずっと一緒にいて大好きだったはずのレイが、まるで別人のように見えて怖くなった。
気付いた時には、必死に「やめて」と泣き喚いていた。
そして理性を取り戻したレイは、泣き喚く私を見て、真っ先に自分を責めた。
他人から見れば、背伸びした童貞と処女のつまらない失敗談。
でも、私達には大きなシコリを残した。
そこからレイは必要以上に私に気を使うようになって、私は私で、そんなよそよそしいレイの態度が嫌な筈のに、でもあの時の恐怖が拭えなくて、何よりもまた失敗したらと恐れて、その距離に甘んじてしまった。
結局、ぎこち無い日々に耐えられなくなった私達はある約束をした。
「今後は付き合うことはせずに、幼馴染の親友として二番目に大切で居続けよう」と。
それがお互いの妥協案。
互いに捨てきれない感情を親友という形で誤魔化し手元に残した。
その時の私はそれが正解だと思った。
友達という関係に戻れば求められる事もなくなり、レイの事を怖がらなくて済むと思ったから。
事実、そこからは少しづつだけど、レイと昔のように話すことが出来るようになって行ったから。
そして、レイも少しづつよそよそしさが取れ、以前のような距離感に近づいていった。
でも、あと一歩からは絶対に踏み込まないようになった。
私達は、そんな関係のまま離れることも出来ず、お互いに示し合わせたかのように同じ高校に進学し、絶妙な距離感で同じ時を過ごすことになった。
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