第28話 銃弾の雨
「クッソタレェ!」
ザンバルはそう吐き捨てながらレバーのトリガーを押す。
大型シールドに覆われた両腕の2連装ガトリングガンから放たれる銃弾は狂うように宙を切り、敵TTを蜂の巣にした。そして風穴の空いた敵TTは無惨にも爆発する。
戦闘が始まって早2時間。
ユウとザンバルが担当する区域に迫るカララバ側の第1陣を難なく凌いだものの、敵の数はそれで収まることはなかった。
作戦通り防衛部隊には無理をさせずに盾を構えてマシンガンを撃たせてはいるものの、激しい敵の攻撃によって既に2機が落とされた。
壁上の砲台も早い段階で破壊され、かなりの戦力不足である。
しかし、そうであってもこの区域の戦線は何とか維持することができていた。それはまさにザンバルとユウの活躍があってこそである。
「畜生め! いつまで続くんだよこの波は!」
だがそれもギリギリであった。
彼らの背後には弾薬の詰まった補給コンテナがあらかじめ設置されていた。わざわざ壁内まで戻っている時間がない故の苦肉の策である。彼らが前線に立ち続けられていたのはこのコンテナがあったからでもある。
だが1時間も経てばそれも限界に近づく。あと2回程の弾薬補給でコンテナの中は空になってしまう。
発砲を続けるザンバルに対し、前方の2機のガ・ミジックが肩に担ぐロケットランチャーを向ける。そしてズドンと弾頭が放たれた。
ザンバルはその光景を目にすると発砲を止め、ガトリングガンと腕を覆う左右2枚のシールドでコックピット前を覆い隠す。
真っ直ぐ放たれた2つの弾頭はやがてシールドに着弾し爆発する。弾ける光と噴き出る煙。
敵パイロットは「やった!」と声を上げ、勝ちを確信する。
しかし、それも一瞬で覆る。
段々と晴れていく灰色の煙。その中で赤く光る目が2つ。睨みつけるその2つの目は、目の前に敵機を地面に縛り付ける。
そして次の瞬間、その赤眼の両隣で轟音と共に光がほとばしった。
煙は逃げるように払われ、放たれた砲弾は真正面にいる2機に向かって伸びていく。
「舐めんな」
着弾する。砲弾はTTのコックピット周りの装甲を抉り、止まることなく突き抜ける。
断末魔上げることなく死ぬパイロット。亡骸は抜け殻となり、地面にその身を倒した。
肩部に乗せられた2門のキャノン砲を放ち危機を脱したザンバル。彼はモニターに映り込む煙のカーテンに目を向ける。
「ユウの奴、まだ動けんのかよ」
悔しさと呆れるような驚きを吐くザンバルは、ほんの少しだけ彼の、ユウ・カルディアを眺めた。
13、14、15……
ユウはカウントを重ねながらモニターに映る敵機を容赦なく撃墜していっていた。
銃口を向ける敵機には、急速で接近し斬り裂く。
距離のある敵には、散弾で撃ち抉る。
接近する敵には、太刀の先端で貫く。
まさしく無双状態であった。
ユウが好き勝手動くことができたのも、後方からの攻撃があってこそだったが、そうだとしてもこの撃墜数は異常である。カララバ側からしたら人が乗っているのか疑う程だ。
「15機目、撃墜。残り敵機数—————10」
最初にレーダーに映っていた敵機数は35。しかしあれは第一陣に過ぎなかった。
なので落としても落としても敵数は減らない。寧ろどんどんと増えていく。
ユウ自身は耐えきれないことはないが、問題は後方の自軍機だ。2機からの信号がない。
「このままだと埒が開かないか。無名のバッテリー、推進剤、共に残量あり。散弾の弾数は残り6。稼働時間はあと30分」
レーダー上の敵数は残り10。だが、レーダーにはぞろぞろと新たな敵の信号が流れ込んでくる。
「普通に考えて、ノアを落とす為にこれだけ大量に機体を導入する訳がない。作戦の障害扱いをしているとはいえ、相手は小さい支援団体と一般人だ。そうなると—————」
ユウはコックピット内のパネルを操作し、レーダーの索敵範囲を広げる。
すると、映っていた敵の群れの後ろには敵機の反応がほとんどなかった。
つまり—————
「敵数……21。ザンバル、聞こえるか?」
『ああ⁈ なんだ⁈』
通信からは苛立ち混じりの男の声が響く。
「残り敵数は21。恐らくカララバ側は作戦本部や補給場を設置していない。これで最後の可能性が高い」
ユウが思うに、恐らく敵の策は短期戦。
相手が小さな支援団体、だからという理由で舐めていたからでろう。所詮は少数団体だから、数で押せばどうにかなるだろうと。
だが、そうなると新たな不安がよぎる。
「他は、どうなっている?」
ユウ達が防衛を任されたのは壁の西側のみ。そこだけで敵数は50機近かった。
では、他の区域、東区域と正面の南区域は対応しきれているのか。ただ、そんな疑問があったのだった。
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