第5話 検査入院 その②

 検査室までは初めて乗るストレッチャーで移動した。

 「歩けますけど・・」と若い看護師さんにお伝えしたが、「大丈夫ですから乗ってください」と言われ、恐縮しながらストレッチャーに横たわる。病棟の通路を抜け、スタッフ用のエレベーターで検査室のある1階へ。

 広いフロア内を看護師さんが器用にストレッチャーを操縦して検査室に到着。たくさんのモニターに囲まれた室内の中央に手術台があった。周囲には多くのスタッフさんがいて忙しそうに準備をしているが、コンタクトを外しているのでド近眼の私には一人ひとりの顔はよくわからない。

 手術台に移動し、ここからはまな板の鯉だなぁ~とモルモット気分になっていると、「担当する〇〇です。よろしくお願いしますね」と声を掛けられる。不意打ちだったので名前がちゃんと聞き取れず、顔もぼんやりしかわからなかったが、「よろしくお願いします」と返事をする。やはり担当するのはA先生とは別の先生らしい。担当の先生から、部分麻酔をするので痛みはないが、造影剤を投与するときに冷たさや熱さを感じるので、その都度声を掛けること、撮影の時は動かないように気をつけて、と注意事項が伝えられた。

 心電図用の磁石やら脈拍を測る器具やら身体のあちこちにコードや管が繋がれたあと、「麻酔入ります!」の声が聞こえ、検査がスタートした。検査室にはジャズのような軽音楽が流れていて少し緊張が和らぐ。自分でも意識してゆっくり呼吸をし、リラックスを心掛ける。足の付け根にカテーテルを入れるときも「少し痛いですよ~」と声をかけられたが、麻酔が効いていて全く痛みは感じなかった。

 頭の周囲にはCTスキャンのような360度の撮影設備があり、撮影のたびに「はい、息を止めて~、動かないように!」といった指示が聞こえてくる。麻酔でぼんやりしながらも、頭を動かさないように指示に集中する。途中、担当の先生が言っていたように、造影剤で脳内が冷たく感じたり、顔の半分が熱く感じたりといった不思議な感覚も体験した。

 麻酔が効いて検査の後半は寝てしまったらしく、「終わりましたよ~」と肩をポンポンと叩かれて目を覚ますと、もう片付けが始まっていた。これから病室に戻るが、穿孔部の血が止まるまで足を動かさないように、といった注意をぼんやりした意識の中で聞く。少しづつ意識がはっきりすると、相変わらずの耳鳴りと頭痛が再開した。

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