第35話 年度変わり~先生方の異動

 3月の外来診療日に、以前から気になっていた「血液サラサラの薬はいつまで飲み続けたらいいのか」について、C先生に聞いてみた。すると、手術から1年後にもう一度血管造影検査をし、問題なければ徐々に薬を減らしていく予定、という返事が返ってきた。「また検査入院するんですか?」と聞き返すと、苦笑いしながら「あともう1回だけがんばってください」と言われてしまった。

 さらにC先生から、「3月末で私は病院を変わりますので…」という衝撃的な通告。「え~っ!」思わず声が出てしまった。次から新しい担当者が引継ぎます、のようなひと言があったが、こちらは動揺してしまって言葉が出てこない。ICUから救出してもらって以来、自分で思っている以上にC先生を頼りにしていたことに、動揺して初めて気がつく。C先生の診療が最後と思い、「ありがとうございました。」とお礼を言うのが精一杯。その日はショックをひきずったまま家に帰った。

 衝撃通告の日からしばらく、動揺が尾を引いた。4月に入り、ようやく気持ちを切り換え、病院のホームページを見る。C先生の異動先や新任の先生がわかるかと思ったのだが、人事異動のお知らせ(詳細)は出ていなかった。びっくりしたのは、C先生に加えて、A先生もスタッフ紹介から消えていたということ。一度に二人の主治医が病院からいなくなってしまった。

 年度変わりの異動は、病院でもあって当然のこと。お世話になった先生方には感謝して、新しい担当の先生とまた関係を築いていくしかない。まだ経過観察中だが、術後、順調に回復している私はラッキーな患者である。先生方の異動は、ある意味、私自身が病から気持ちを切り換え、次へ進むタイミングに来たことを知らせる出来事なのかも・・・。時間の経過と共に、そう思えるようになった。

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「右内頚動脈海綿静脈洞瘻」治療記 @fura21

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