第34話 経過観察~検査入院

 退院後は、定期的に経過観察の外来診療があった。事前にMRI専門の検査センターへ行って検査をし、外来時は採血と事前MRIのデータをもとに、外来担当のC先生が経過を説明してくださるという流れだった。

 退院から3週間後の診療では、まだ血流音が聞こえる状態が続いていたが、さらに1か月後の年末時点では、血流音がかなり改善していた。MRI画像を見ながら、順調に回復しているという説明を聞いてホッとしていると、C先生から「手術から半年後の状態を見たいので、2月にまたカテーテルで血管造影の検査をしてもらいます。今回は1泊2日で済みますので。」と言われる。自分では勝手に、今後はもうMRIの検査だけと思っていたので、少し動揺してしまった。「あの~、MRIではダメなんでしょうか?」と聞いてみたが、やはりMRIで詳しい血管の状態を見るのはむずかしいと言われてしまった。また入院か~という気持ちになったが、検査で問題なければ安心して次に進める、と思い直し、気持ちを切り換えることにした。

 2023年。年が明けてから、体調が大きく改善した。退院直後は5キロ近く痩せてしまって身体がふらつく感があったのが、3キロほど回復した頃から安定し、手足に力が入るようになっていった。そんなある日、家事をしながら、あれ?耳鳴りが聞こえなくなってる!と気づいた。すでに日中は耳鳴りをあまり意識することがなく、夜静かな環境でしか聴こえなくなっていたが、耳を澄ませて意識を集中しても聴こえない。やった! ついに耳鳴りから解放される日がやってきた! 嬉しさがこみ上げてきたが、これがぬか喜びになってはかえってショックが大きい。冷静になって数日様子みたが、その日から(よほど耳を澄ませない限り)耳鳴りが聴こえることはなくなった。

 2月の検査入院は、1泊ということもあり荷物も少なく、一人で向かった。2回目の手術から4か月近く経ち、コロナ禍も一段落した感があった。

 病室に入ると、看護師さんがまた診療計画書を持って説明に来てくださった。検査は午後スタート予定で、少し前から点滴を始めるとのこと。カテーテルを今までのように足の付け根から入れるか、手首から入れるかはまだわからないということだった。しばらくして、久しぶりにA先生が様子を見に来られた。今回は部分麻酔で検査を行う予定とのこと。カテーテルをどこから入れるかはA先生ではわからず、C先生が決めるような話だった。入院関係の書類には、いつも主治医欄にA先生の名前が書かれているが、実際の治療責任者はC先生なので、いつも「主治医はだれ?」と混乱してしまう。仕方なく、自分の中では「治療の責任者はC先生、手続き関係の責任者はA先生」と考えるようにしていた。

 足からのカテーテルでもOKなように、いつも通り全裸に手術着で準備万端に臨んだが、今回は初めて、右手首からのカテーテルだった。部分麻酔なので意識はあり、C先生やB先生が指示を出している声も聞こえてくる。造影剤で頭部が熱くなったり冷たくなったりしながら撮影を進め、検査は比較的(手術に比べて)短時間で終わった。

 手首からのカテーテルは、検査後にトイレにも自分で行ける上、足を動かさないようにベッドでじっと耐えることもなく、呆気ないほど経過が楽だった。造影剤のダメージも今までほどは感じず、翌日、検査結果も問題なしと言われ、安心して帰途に着いた。

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