第3話 大型総合病院へ

 紹介していただいた病院は地域の大型総合病院で、救急外来(ER)は土日も診療を受け付けているということだった。すぐに行ってくださいと言われ、紹介元の病院からタクシーでそのまま向かう。

 紹介状を渡して待つこと30分あまり。対応してくれたのは、脳神経外科の若い男性医師だった。症状を伝えたあと、もう一度MRI検査を受けることに。3日連続MRIとは!と思いながら検査を受ける。その後、冷房のギンギンに効いた待合スペースで震えながら待つこと更に30分あまり。ようやく名前を呼ばれて診察室に入ると、医師から「硬膜動静脈瘻(こうまくどうじょうみゃくろう)の疑いがあります」と告げられる。脳内の動脈から何かのきっかけで静脈に経路ができて、血液が逆流する珍しい病気らしい。「最近、頭部を強く打つような事故やケガはなかったですか?」と聞かれたが、コロナウイルスに感染した以外はまったく心当たりがない。「さらに詳しい血管造影の検査が必要なので、まずは検査入院してください」と言われ、え?いきなり入院ですか?と内心動揺しつつ、これは簡単には終わらないかも・・と予感する。

 検査入院は1泊2日で、3日後の翌週火曜に入院するようにとのことだった。入院した日の午後にカテーテル(医療用の細い管のこと)による脳の血管造影検査を行い、翌日には退院できるという。急な展開に戸惑いつつも、一日でも早くこの症状から解放されたいという思いで「わかりました」と承諾する。対応してくれた若い医師の呼び出しケータイが1~2分おきに鳴って話が中断するので、そうそう質問もしていられない。コロナ禍で病院は大忙しなのに、こうして対応してもらえただけでありがたいと思わなければ。医師からバタバタと検査の承諾書類を渡され、言われるままにサインをしたのだった。

 帰宅前に会計を済ませ、人生初めての入院かぁ~と妙な感慨にふけりながら、病院の入院窓口で手続きを済ませる。「入院のご案内」という立派な冊子と家族の署名等を記入する「入院申込書」、アレルギーの「問診表」などの入院時に必要な書類のほか、頭痛薬や睡眠導入剤の処方箋を受け取ってようやく帰宅。家族への報告、仕事先への連絡等々、やることがたくさんあるが、ひとまず治療への道筋が見えてきたことに安堵する。

 検査入院までの2日間は、窓口でもらった「入院のご案内」を見ながら準備をした。パジャマ、着替え、タオル、洗面用具等々。何だか修学旅行前の学生気分になるが、行先は病院である。1泊2日なんだからと荷物も最小限にした。

 仕事先へは状況を連絡し、しばらく有休を取らせてもらうことにした。先のことがよくわからないので、検査結果が出てから改めて連絡することにする。家族からは、コロナ禍で病院も大変だろうに、すぐに検査してもらえるだけでもラッキーだよと言われ、結果が出てから対応を考えようということになった。

 前日の夜は、明日はお風呂にも入れないだろうからと念入りに身体を洗い、そういえば検査は足の付け根からカテーテルを通すらしいけど、実際どうやるんだろう?やっぱり下着は脱ぐのかな?などと漠然と想像しながら過ごした。耳の奥で鳴りやまない血流音とガマンできないほどではないが不快な頭痛が続いていたが、処方された頭痛薬を飲み、寝る前には睡眠導入剤を飲んで、つかの間やり過ごしたのだった。

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