第21話 手術後、ICU(集中治療室)へ

 麻酔から眼が覚めると、まだ手術室の中にいた。室内にスタッフさんの気配はあったが人数はまばらで、皆さん片付けをされている様子だった。もうとっくに手術は終わったんだなと理解すると同時に、あれ?酸素吸入の管もなくなってると気がつく。今回は、酸素吸入の管をセットするところから外すところまで、すべて麻酔で眠っている間に終わっていた。さすが、プロの麻酔科の仕事は違う! のどに多少の違和感はあったが、前回のように口内が傷ついたような痛みはなかった。

 しばらくして、目が覚めたことに気づいたスタッフさんに声を掛けられる。すぐにC先生がそばに来られて、両手と両足がちゃんと動くことを順番に確認。「大丈夫ですね」と言われて自分でもホッとする。「手術は無事に終わりました。これからICUに移動しますので、明日の朝までゆっくり休んでください」と言われ、寝たまま「ありがとうございました」と返事をする。時間はよくわからないが、おそらく夕方になっていた気がする。

 ストレッチャーでICUへと向かいながら、前回ほど全身がぐったりするようなダメージがないなと感じていた。身体が麻酔や造影剤になれたのだろうか? ストレッチャーの上で、これでもう頭痛や耳鳴りから解放されるのかな?と考えながら耳を澄ませると、未だに右耳の奥でザーッザーッと血流音が聞こえた。そう簡単には消えないわよねと少し落胆したが、音の大きさは何となく手術前よりも小さくなっているような気がしていた。

 初めて入るICUは設備の整った個室のように勝手に思い込んでいたが(ドラマの印象?)、着いたところはビルの倉庫のようなワンフロアで、そこにベッドと機器類が何台も並んでいた。

 私が移動したのはフロアの一番奥の角スペースで、お隣とは一応カーテンで仕切られてはいたが、1メートル横にはもう隣のベッドがあるという狭い感覚だった。何人位いるんだろう?と思ったが、あとで夜勤の看護師さん同士の会話を聞いていたら、この日はすでに9人が入っているようだった。ちなみに、夜中に1人救急で運ばれてきたので、最終的には満床になっていたはずである。

 ICUに入ったのは夕方で、ちょうど夜勤の看護師さんに交代する時間帯だった。看護師さん同士の引継ぎの会話を聞くともなく聞いていると、この日の夜は3人の看護師さんでICUの患者さんを見るらしい。コロナ禍で人手不足の中、ギリギリの人数で運営している様子。3人の看護師さんがフル回転で仕事をされるようなので、あまり負担をかけないようにしないといけないな・・と思いながら会話を聞いていた。

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