第8話 召喚士の世界
この世に炎の球を出す魔術もなければ傷を治癒する奇跡もない。
しかし、炎の球を生み出す精霊や道具、傷を癒す精霊や道具を出す術はある。
召喚術。
それは異界である精霊界の生物や道具を呼び出す術である。
「召喚術ッ……!?」
「そうじゃ。これが魔法界で
ヴィ―ドは青の銃で
2人の強盗の上着と
「うわ、なんだ!?」
「引っ張られる!?」
強盗と
「俺は精霊界の武具を呼び寄せる
ヴィ―ドの霊器は磁力を操る。磁力の特性上、
「それで赤と青の銃で撃たれた強盗と蛇はくっ付いたのか。+の磁力と-の磁力は引き合うからな……」
「中々便利な銃だろう?」
ヴィ―ドが両手を振ると、2振りの銃は光の粒になって消えた。
商人たちが強盗を縄で縛り、強盗事件は幕を閉じる。
商人が「助かりました! ヴィ―ドさん!」と言うと、ヴィ―ドは「気にするなって」と笑顔で返した。
騒動が完全に収まったところで荒神とヴィ―ドは再び歩を刻み始めた。
「
「そいつは
「アイツは笛で蛇を召喚していたが、お前は魔法陣で銃を召喚しているように見えた。あれも
「そうだよ。精霊は特別な笛の音で、霊器は特別な筆で描いた陣で呼ぶ」
荒神はネタ帳にヴィ―ドが言ったことを書いていく。
「へぇ~……」
書き終えた後、ネタ帳を閉じ、荒神は自分の横でプカプカと浮く青肌少女に目を向けた。
(コイツ……俺が魔法のオカリナを吹いたら出てきたよな。精霊は笛の音で呼ぶのなら、もしかしてコイツは……いやしかし、俺の世界に召喚術はないし、俺には召喚術に必要な魔力がない。考えすぎか?)
ヴィ―ドはとある商店の前で足を止めた。
「ここが俺の店だ」
「随分とデカいな」
広さ的にはコンビニ1つ分だが、他の店が軒並み小ぶりだったため大きく見える。
「俺がお前の面倒を見れるのはここまでだ。さて、ここまでの案内料を貰おうか」
「案内料だと? 善意で助けてくれたんじゃないのかよ」
「半分は同情、もう半分は報酬ありきさ。お前の身なり、まったく見覚えが無い。俺ですら知らない土地から来たとわかる。なんか珍しいモン持ってるだろ? 商人の勘がお前のバッグから凄まじい金の匂いを感じ取っている」
「……仕方ないな。借りは返す主義だ」
荒神はバッグからホッチキスを出し、ヴィ―ドに渡した。
「こいつはなんだ?」
「ホッチキスだ。2個あるから1個くれてやる」
「ほってぃきす? 妙な形だな……見たことない。どう使うんだ?」
「紙と紙を合わせるんだよ」
ヴィ―ドは自分の商店の売り物から紙を2枚持ってくる。
荒神はホッチキスを使い、2枚の紙を1枚組にした。
「おおっ!? これがホッティキス!! コイツはすげぇ……地味だけど、有用性抜群だ! 売れるぜこいつは!」
「報酬はこれでいいだろ。じゃあな」
「待ちな」
ヴィ―ドに呼び止められ、荒神は振り返る。
「名前ぐらい教えろよ」
「名前? 名前は荒……」
いや待てよ、と荒神は考える。
(この世界観で荒神千夜という名前は浮くな)
荒神は数秒考えた後、この世界での自分の名前を口にする。
「アラジンだ」
◆
ヴィ―ドと別れた
「早く金を稼がねぇと……!」
「大金持ちになりたいのならいつでも願うがよい」
「黙っとけ。金を稼ぐ方法は考えてある」
「ほう? 気になるのう。どうやって金を稼ぐ気じゃ?」
アラジンは「忘れたのか?」と口元を歪める。
「俺は漫画家だぞ」
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