第27話 契約

「ヴィ―ド!!」

「よおアラジン。元気にしてたか?」


 ヴィ―ドは磁力を消す。アラジンと誓約碑はその場に落ちた。


「ヴィ―ドォ……!」


 アリババの怒りに震えた声。

 ヴィードは笑みを崩さずにアリババを見る。


「俺達を尾けていたのか……」

「アリババよ。もうちょい背後に気を付けることだな」


 ヴィ―ドはバイクのエンジン音を鳴らす。


「誓約碑を持って後ろに乗れ! 逃げるぞ!」

「わかった!」


 アラジンは誓約碑を抱えるが、


「重いし、肩が痛てぇ!!」


 アラジンがもたもたしている間に五竜星が迫ってくる。


「アラジンくぅん! はやくしないと僕たち死んじゃうよ!」

「わかってるって! でもコイツを持ち上げるのは……!」


 アラジンは誓約碑を見て、あることに気づく。


「読める、読めるぞ!? 誓約碑に書かれた文字が読める!!」


 誓約碑に書かれた文字はアラジンの知らないものだ。なのに、なにが書いてあるかがわかる。


「本当か! なら誓約碑の内容を暗記しろ! 暗記できれば誓約碑は置いていっていい!」

「…………覚えたぞ!」

「乗れ!!」


 アラジンはバイクに乗る。

 ヴィ―ドはバイクを発進させ、階段を猛スピードで駆け降りた。そのまま祠の入り口に向かう。


「逃がすかよ!」


 バルゴとヨルガオはバイクの速度に負けずついてくる。このままじゃ追いつかれるだろう。


「化物共が!」

「どうするヴィ―ド!」


 バルゴは胸の召喚陣から斧を出す。


鬼人の斧オークアックスッ!」


 それを見たヴィ―ドは微笑み、ヨルガオは焦りを覚えた。


「斧を出すな!」

「……ああいう馬鹿が居てくれると助かるぜ」


 ヴィ―ドは左手でハンドルを持ち、右手の赤龍でヨルガオを狙って3発弾丸を放った。

 ヨルガオは2発は避けるものの、3発目は避けきれずに槍で受ける。磁力を帯びた骨の槍に、金属の斧は引き寄せられる。


「なっ! 斧が引っ張られやがる!」


 骨の槍と鬼人の斧オークアックスが鍔迫り合いしている間に祠を脱出。


「いまだ! 祠から離れない内に誓約碑に書かれていたことを読め!」

「我は願いを集める器なり。望むは奇跡、万象を成す力を与えたまえ――招霊せよ、イフリート!!」


 アラジンが叫ぶと、祠の中の誓約碑は光となって消えた。代わりにアラジンの手にペンが握られる。


「笛じゃ無くてペンじゃと! イフリートは精霊じゃ! なぜ霊器を呼ぶためのペンが現れる!?」

「しかもこのペンの形は……」


 それは漫画を描くための道具の1つ。


(Gペンの形だ……!)

「どうしたアラジン?」

「……出たのが精霊を呼ぶための笛じゃなくて、霊器を呼ぶためのペンだったんだ。祠の誓約碑は精霊のものだって聞いてたのに」

「そうなのか? まぁ強けりゃなんでもいいさ!」


 アラジンとヴィ―ドは砂漠の道を走っていく。


「はっはっは! ぜ~んぶ計画通りだぜ!」

「ヴィ―ド、お前どうして祠に……?」

「商人仲間からお前らの動向は聞いてたからな」


 なぜビーストショップの商人があそこまで協力的だったか。それは〈ジャムラ〉で一番の商人であるヴィ―ドが協力するように言っていたからである。


「アラジンが祠の暗号を解けるなら、アリババは必ず利用すると考えた。だからアリババが勝利を確信し油断したところでお前と誓約碑を奪うと決めた」

「アリババの動きが読めてたなら教えてくれればよかったじゃねぇか!」

「アリババの動きを教えたところでお前になにができた?」

「それは……」

「お前の動きはヨルガオのせいで全部割れていた。ヨルガオがお前に付いている限り、お前はアリババの手の平から逃れることはできなかった。だから俺は早々にお前とヨルガオから離れて動いたわけだ。アリババの裏をかくためにな! ヨルガオは全てありのままアリババに話す。俺がお前と手を切ったこともきちんと報告したはずだ。そうすりゃアリババの俺に対する警戒は解ける」


 アラジンの上をアリババがいき、アリババのさらに上をヴィ―ドがいった。

 ヨルガオという仲間を失ったが、ヴィ―ドのおかげでイフリートの誓約碑という強力なカードを手に入れることができた。ヴィ―ドを称賛することはできても、責めることなどできはしない。


「このバイクはなんだ?」

車両霊器ヴィークルウェポン砂上の追跡者サンドチェイサー

「ウェポンショップに売ってたやつか! たしか4000万するんだろ? 例の依頼の報酬金だけじゃ足りない額だ」

「ああ。店も全部売ってなんとか買ったよ! おかげで一文無しだぜ」

「……金にならないことはしないんじゃなかったのか?」

「そんなこと言ったっけな? 覚えてねぇや」

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