第4話 おやすみ、ソフィー

「ナギサ様、気分はどうですか?」


目が覚めると私は自室のベッドに寝かされていた。隣ではセラが心配そうに私の顔を覗き込んでいた。その目には涙が溜まっていて目の周りは赤くなっていた。あぁせっかくの可愛らしい顔が泣いてちゃ台無しじゃない。


「私……どうなったんだっけ」


「ナギサ様はお風呂で急に倒られたのですよ!」


「あぁ、確か私の記憶では………ソフィーから『ママ』と呼ばれた記憶があるよ」


あぁ、もう一度ソフィーの口から『ママ』と聞きたい。そうすればきっとこの頭痛も治ると思う。


「セラ、ソフィーは?」


「ソフィア様は今お部屋でお休みになっております。ナギサ様が急に倒られてパニックになってしまい先程まで泣いていたのですがエリンが泣き止ませて今は泣き疲れて眠っています」


そっか、私が急に倒れたから。ソフィーには悲しい思いをさせちゃったな。

そういえば………


「セラ、夜ご飯は?」


「いえ、作っておりません。ナギサ様とソフィア様がの対処で忙しかったので」


「そっか、じゃあ今から作ろう。ソフィーもきっとお腹が空いてるはずよ」


だってあんなに痩せ細っていたし絶対にご飯も食べさせて貰えてなかったと思う。だったら今からでも作って食べさせてあげないと!


「夜ご飯の準備は出来ております。急ぎましょう」


そして私達はキッチンに向かった。

う〜ん何にしようか。やっぱり最初はお腹に優しいのが良いよね。いきなり私たちが普段食べてるような物を食べさせちゃったらお腹もびっくりして体に良くないだろうし。


「セラ、シチューの材料ってある?」


「はい、揃ってます」


「じゃあ作り始めるわよ」


そして私達はシチューを作り始めた。流石にシチューだけじゃ物足りないかもしれないからパンも焼いた。ふふっ喜んでくれるかなぁ


「エリン、入っても大丈夫?」


「ナギサ様!?もう動いても大丈夫なのですか?」


「ええ、もうすっかり良くなったわ」


「そうですか。入っても大丈夫ですよ」


エリンから入っても良いと言われたから部屋の中に入ることにした。

部屋の中は薄暗くギリギリ見える位の明るさになっていた。


私達が入ってきたためエリンが電気をつけた。そして部屋全体が見えるようになった。


「ソフィー!」


「……ママぁ?」


「ソフィー、ソフィー!ごめんね心配かけちゃったよね!」


私のことに気づいたソフィーがゆっくりと体を起こした。

それを見た私はソフィーの近くに駆け寄ってソフィーを抱きしめた。


「ママぁ、どうしたの?」


「ごめんね、ごめんね、怖かったよね」


だっていきなり私が……ママが倒れたりしたらびっくりしてパニックになるのは当たり前だよね。ごめんね、もっと強い意志を持ってたらこんな事にはならなかったのに。


「ナギサ様、せっかくのシチューが冷めてしまいますよ」


「あっそうだった!ソフィーのためにシチューを作ってきたの。食べる?」


私はセラに言われてシチューを思い出した。危ない、せっかく作ったのに忘れる所だった。


「食べたい!」


そう言ったソフィーの目は輝いていた。

ふふっ喜んでくれて良かった。


「大丈夫?一人で食べれる?出来ないならママが『あ〜ん』ってしてあげるよ」


「ナギサ様、それは子供扱いし過ぎでは?」


私がそう言うとセラが口を挟んできた。


「うぅ、けど自分の子供にあ〜んってするのが私の夢だったし…………あれ?そういえば、ソフィーあなた何歳なの?」


「えっと………」


そういえばソフィーの歳を聞いてなかった。こっちについてからすぐにお風呂に入れたし、そして私が倒れちゃったから聞く暇が無かったんだよね。


ソフィーは歳を聞かれると少し考えて指を折りながら数え始めた。


「5歳!」


「「「!?!?」」」


「……?」


あれ?予想してたよりもずっと小さかった。にしても4歳て、どんな子を奴隷にしてたのよ!!絶対に許さないんだから。


「まぁ5歳なら普通にあ〜んってすると思うけど?」


「そうですね、5歳なら問題はないですね」


「でしょ!ていうことではいっ!あ〜ん」


私はさっそくスプーンでシチューすくってソフィーの食べやすい位置の持ってってあ〜んとする。するとソフィーは


「あ〜ん」


と、パクッとスプーンを咥えた。あぁ♡可愛い♡♡ちっちゃい子がちっちゃいお口であ〜んってされる姿は本当に……好きぃ。


「美味しい?」


「はい!」


ふふっ笑顔が可愛い〜!もう今すぐ抱きしめてあげたい!!


「ほらほら、もっといっぱいあるよ♡」


「うん!」


◆◆◆


「ナギサ様がここまで笑顔になられるとは………」


「びっくりです!やっぱり子供の力って凄いんですね!」


「それもあるけど………ナギサ様ってもしかして」


「もしかして?」


「ふふっ何でもないわ」


◆◆◆


「もうお腹いっぱい?」


「はい、とても美味しかったです!」


そう言うソフィーは満面の笑みを浮かべていた。あ〜!可愛い!抱きつきたい、ぎゅ〜ってしたい!もうご飯も食べ終わったしぎゅ〜ってハグをしても良いよね!?


「ソフィー!……グエッ」


我慢ができなくなってソフィーに飛びかからろうとした瞬間に背後から襟を引っ張られた。


「何するの!?」


「ナギサ様、食後すぐに抱きついてはソフィア様のお腹の調子が悪くなってしまいますよ」


「うぅ〜そうだけどぉ〜我慢できないよ!」


もう私にはソフィーを抱きしめたいっていう強い感情しかないのだ。この感情を鎮めるには………ソフィーに抱きつくしかないのだ。


「ナギサ様、せめて明日になってからにして下さい。ソフィア様も急激な環境の変化に疲れているでしょうから」


うぅ、そっか。確かにいきなり住む環境が変わったんだし、休ませてあげないとダメだよね。


「うぅ……じゃあ今日は我慢する」


「そうしましょう」


私がそう言うとセラは襟を離してくれた。

ふぅ、ちょっと落ち着いた。


「ソフィー今日は疲れたでしょ?ゆっくり休んでね」


「うん」


「明日はお出かけだから楽しみにしててね」


「うん」


「おやすみ、ソフィー」


「おやすみなさい」


私とはそう言ってセラと部屋を出た。エリンは今日だけはソフィーに付いてもらった。初めての場所で一人ぼっちで寝るのは寂しいだろうからね。


「ナギサ様少しお話があるのですか、お時間を頂いてよろしいですか?」


ソフィーの部屋を出て自分の仕事部屋に戻るとセラが話しかけてきた。その顔はいつになく真剣な面持ちで少し緊張した。


「ええ、何かしら?」


「ソフィア様のことです。ナギサ様はソフィア様のことを娘としてお育てするつもりなのですよね」


「えぇそのつもりよ」


「だとしたら役所にはどうお話しするつもりですか?」


あぁ……確かに。ここでも奴隷は認められているけど15歳からだ。しかしソフィーは4歳と幼すぎる、こうなると私が罰せられるかもしれない。かといって孤児を引き取ったなんて言ってもそれを裏付ける証拠が無いから無理だ。


「私に良い案があります」


「へぇ、言ってみて」


「私の家からの養子、というのはどうでしょうか」


「あぁ、そういえばセラの実家は孤児院をやってたわね」


そうか、実家からの養子だったら裏付けの工作もしやすい。

ふむ、それが良いな。


「よし、決めた。その案を採用させてもらうよ。そしたらさっそく……」


「すでに両親には話をしております」


「え……マジ?」


「はい。明後日には証明書が届くはずです」


うそぉ〜この娘優秀過ぎでしょ〜。え、私が反対するっていう考えはなかったの?いやまあセラの提案とかエリンの提案に比べたら絶対的な安心感があるから反対はしなかっただろうけど。


「助かったよ、セラ」


「いえいえ、どれもナギサ様の為ですから」


私が感謝の意をセラに伝えるとセラは嬉しそうに頬を紅潮させていた。

ふふっセラはたまにこういう風に照れてくれるのが可愛い。


「あっあと明日はすべき事が沢山ありますよ」


「そうなんだよ〜今から考えておかないと」


明日はソフィーのための洋服を買ったり、健康診断をしたり、予防接種をしたりとか色々しないといけないんだよね。


「私が予定を作っておくのでナギサ様もお休みになられたらどうですか?」


「ふふっ私も手伝うわよ、一緒に作りましょう」


「わかりました」


そして私達は明日の予定を一緒に作り始めた。

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