第19話 ピクニック

「ソフィー準備は出来たかな?」


「できた!」


「そう♪ じゃあ行こっか。セラ行ってくるね」


「はい、行ってらっしゃいませ」


今日はソフィーと近くにある山にピクニックに行くことになっている。なんでピクニックに行く事になったかというと………


◆ ◆ ◆


「お、終わった………」


やっと、仕事が終わった。疲れた、死んじゃうかと思った。もしソフィーがいなかったらきっと精神的に病んでたと思う。そう思うくらいにはソフィーの可愛さには感謝している。


「ソフィー今度一緒にお出かけしよっか」


「いいの!?」


私の部屋で絵本を読んでいたソフィーに声をかけるとパァッと顔が明るくなった。ふふっ可愛いなぁ♡


「うん、今まで遊んであげられなかったからね。これからはいっぱい遊ぼっか!」


「やったー!」


◆ ◆ ◆


こんな事があって今日はピクニックに行くことになった。

私の家の裏にはピクニックやハイキングをするには丁度いい山があって街の人たちからも人気がある。よく、お年寄りの人とか元気な子供達が山の中で遊んでいるのを見る。


「ママ、たのしみだね!」


「そうね、けど無理はしちゃダメだからね」


「うん!」


そして門に向かって走り出すソフィー。今日は軽く運動をするからスカートじゃなくてズボンを履かせて、動きやすく汚しても大丈夫な服装にしている。これでソフィーも思いっきり体を動かせるでしょう。


「ママっ! 早く早く!」


「はいはい、ちょっと待って〜」


ソフィーは待ち切れないのか門の前でピョンピョンと飛び跳ねている。こう見ると、この家に来た時には考えられないほど元気な年相応の女の子になったよね。これが私の望んでた暮らし、前世では得ることの出来なかった幸せなんだね。


「もうっ! おそいよ!」


「ごめんごめん、じゃあ行こっか」


そして山に向かって歩き始めた。


◇ ◇ ◇


少し歩いて山の入り口に着いた。

この時期になると咲いてた花も散り始めて新緑に染まり始めている。もうちょっと早く来れば良かったかな、そうすれば花がいっぱいに咲いてる風景を見せれたのかもしれない。


「はやくはやく!」


「もぉ〜最初っから急いでたら最後まで体力が持たないわよ〜」


そう言ってもソフィーはグングンと進んでいく。あれ、私の考えだとのんびり山の風景とかを楽しみながら登っていくつもりだったんだけど………ソフィーは好奇心旺盛だからそんなのんびりはしてられない、か。


どんどん登っていくソフィーに置いていかれないようについて行ってようやく休憩できたのは道の途中にある休憩所だった。ソフィーはそこのベンチに座って水筒の水を飲んでいた。


「ソフィー………もう少し………ゆっくり………行かない?」


「ママ? だいじょうぶ?」


「あはは……ダメかも………」


まさか、ここまで体力が落ちてるとは思いもしなかった。もっとソフィーと遊んで体力つけないとなぁ。


「ママ、ソフィーのおやつたべる?」


そう言うとソフィーは背負ってたリュックから自分用のおやつ(棒付き飴)を差し出してくる。うぅ……こんな優しい子に育つなんて、ママは嬉しいよ。


「ありがとう、気持ちだけ貰っておくね」


「ーー?」


あ、ソフィーの頭の上に〈?〉が浮かんでる。まだ、こういうのは難しいかな。


「ふふっ大丈夫、自分で大事に食べなさい」


「わかった!」


そう言うとソフィーは自分で飴を食べ始めた。ペロペロと美味しそうに舐めてる姿は…………尊い♡


「あら、可愛らしい娘さんですねぇ〜」


可愛いソフィーを眺めてると山を降りてきたお爺さんとお婆さんが話しかけてきた。そうでしょうそうでしょう!! ソフィーは世界で一番可愛いんですよ!!


「ほんっっとに可愛いですよね!!! もう毎日メロメロで………♡」


「わかるわぁ〜私にも初めて娘が出来た時は可愛くて可愛くて………一日中くっついてましたから」


「娘にだけじゃないだろう? 孫にだってデレデレじゃないか」


「当たり前でしょう? 愛しの娘が産んだ愛しの孫娘ですよ、デレデレするのは当たり前でしょう」


「本当に娘さん達のことが好きなんですね」


「「当たり前ですよ!!」」


おぉ、息ぴったり。仲良いなぁ。


「お嬢ちゃんもママのこと大好きでしょ?」


「うん! ソフィーはママのことだいすきだよ!」


「ソフィー………私も大好きだよ〜♡」


そう言ってソフィーのことを抱きしめる。ソフィーのモチモチとした肌がくっついてきて気持ちいい。ず〜っとこのまま抱きついてたいよぉ。


「ふふっ相思相愛ですね。では、私たちはこれで」


「はい、では〜」


あ〜すっごく元気沸いたかも。これなら山頂までノンストップで行けそう!


「よし! そろそろ出発しよっか」


「うん! しゅっぱ〜つ!」


今度はソフィーと手を繋いでゆっくりと、周りの景色を眺めながら登って行った。途中で降ってくる人とすれ違ったり、下から猛ダッシュで駆け上がっていく子供達を見ながらゆっくり登って行った。



そして登り始めて3時間、やっと山頂に着いた。山頂からの景色はものすごく綺麗で私たちが住んでいる街を一望できた。そして山頂にはご飯を食べる事ができるスペースが用意されていてちょうどお昼時という事もあって沢山の人がそこでお昼ご飯を食べていた。


私たちはなんとか空いている場所を見つけてお昼ご飯を食べることにした。


「はい、おしぼり。しっかり手を拭いてから食べるんだよ」


こういう所でもしっかり最低限のマナーは教えてあげないとね。じゃないとソフィーが大人になってから恥をかいちゃうしね。


「うん!…………はい、拭いたよ!」


「じゃあ、食べていいよ」


「いただきます!」


そう言ってソフィーはお弁当箱を開けてお昼ご飯を食べ始めた。

今日のお弁当はサンドイッチ(ジャム使用)、鶏肉のハーブ焼き、フルーツ、などなど、おでかけの時の定番のメニューになっている。


「どう? 美味しい?」


「うん!」


ソフィーは満面の笑みを見せてくれる。この笑顔を見るために朝早くに起きてまでお弁当を作ったと言っても過言じゃない。この笑顔は世の母親のどんな疲れも一瞬で吹き飛ばす特効薬なのだよ!


「ママぁ、これってどうやってたべるの〜?」


ソフィーが食べているのを見守っているとフルーツの皮剥きに格闘してたソフィーがついに観念して聞いてきた。


「これはねぇ、皮ごと食べられるの。だからそのままかぶりついてみな♪」


「このまま? わかった………」


そう言ったソフィーは恐る恐る皮ごとかぶりついた。そして次の瞬間、ソフィーの目が輝きに満ち溢れた。


「どうだった?」


「おいしい! すっごくあまいけど、すっぱいのもある!」


「でしょでしょ! これねぇウチで出来たウチだけのフルーツなの!」


これは偶然出来たフルーツで、この前セラに試しに食べてもらったら美味しかったから、このピクニックで初めて出したんだよね。


「これってまだあるの?」


「う〜ん、ごめんねぇまだいっぱいは無いんだけど、これからいっぱい作れるようにするから楽しみにしててね!」


「わかった!」


ご飯を食べ終わってその後は山頂で目一杯ソフィーと遊んだ。かけっこをしたり、鬼ごっこをしたり、偶然居合わせた子供達とだるまさんが転んだみたいな遊びをしたり。とりあえずは……………子供の体力ってすげぇ。


◇ ◇ ◇


「ソフィー流石に疲れちゃった?」


「ぅん………」


日も暮れ始めた。いっぱい遊んだソフィーはもうウトウトし始めていた。目もとろ〜んと垂れてきていて今すぐにでも目を閉じて眠ってしまうんじゃないかなって思うくらい。


「じゃあ、そろそろ帰ろっか。おいで、ソフィー」


「ん………」


私はソフィーを抱っこして山を降った。

私が家に着くまでにソフィーは完全に熟睡モードに入って耳元からは「すぅ……すぅ……」と、可愛らしい寝息が聞こえてきていた。

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