第6話 おでかけ・病院編
「ソフィーおでかけの準備できた?」
「うん!」
朝ごはんを食べ終わって少し休憩をしてついにお出かけする時間になった。
今日のソフィーの服装は白色のワンピースに白いニット帽を被っている。そしてソフィーの髪に魔法をかけて他人からは私と同じ茶髪に見えるようになっている。
「それじゃあ行ってくるわね。エリン、お留守番頼むわよ」
「はい! お任せ下さい!」
今日はセラには付いて来てもらうことになっている。エリンを連れて来たらきっとソフィーを連れて勝手に何処かに行っちゃいそうだし、それにセラは武術の嗜みもある。噂によると剣を持った盗賊を素手でボコボコに出来るくらいには強いらしい。
「ナギサ様、ソフィア様、馬車がお着きになりましたよ」
相変わらずセラは優秀だ。細かい出かける時間は言ってないのに私達が家を出るとちょうど馬車が到着するように手配をしてくれている。
「いつもありがとうね。ソフィーおいで」
ソフィーの身長じゃ乗りづらいだろうからソフィーを抱っこして馬車に乗る。
「オズさん。今日もお願いしますね」
「おうよ! しっかり安全運転でぶっ飛ばしてやるからな!」
この白いお髭を伸ばしたダンディな人はオズさん。この馬車の御者さんで毎回私達を乗せてくれる。まぁ、ほぼ私達の専属なんだけどね。よほどの重客じゃない限りは私たちを優先してくれる。
「今日は何処にするんだ?」
私達が馬車の中に入った所で今日に行き先を聞いてきた。
「まずは……病院でお願いします」
「わかった、いつものところで大丈夫か?」
「はい、お願いします」
そう言うとゆっくり馬車が動き始めた。乗る時はあんな事を言ってるけど本当はかなりの安全運転で評判も良い。
◇ ◇ ◇
「よし、着いたぞ」
馬車に揺られること約10分。目的の病院に着いた。ここの病院はたまに行ったりしてて、セラやエリンとかの健康診断とかで使っている。
「俺はどうしてれば良い?待ってるか?」
「あ〜かなり時間が掛かると思うんですけど、どうしましょう」
「ま、待ってるよ。ここから動くのも面倒だからな」
「すみません………では行ってきますね」
「おう!」
そう言うとオズさんは笑顔で送り出してくれた。さらにその時にソフィーに飴玉を渡していた。きっと子供達の人気者なんだろうなぁ。
「早く受付を済ませないと、今日は休みだからきっといっぱい人がいるでしょうし」
私がそう言って少し早足で行こうとするとセラに止められた。
「いえ、その心配はありませんよ。実は昨日のうちから予約をしていたので少し待てばすぐに呼ばれますよ」
「わぉ……」
いや、優秀すぎるでしょ。ていうかいつのまにか予約なんてしてたんだ。………あっ! もしかしてソフィーの服を探してきてもらってる時に予約したのかも。セラなら「ナギサ様なら最初に病院に連れて行きそうなので予約をしておきました」とか考えて予約してそう。
「ナギサ様なら最初に病院に連れて行きそうなので予約をしておきました」
「……ありがとう」
おぅ、全くの予想通りだったわ。これは私がの予測能力が凄いのかセラの予測能力が凄いのかわからんな!
そして病院に入って受付を済ませた。
受付を済ませると同時に私とソフィーは診察室の前の通路で座って待っているよう指示を受けた。(セラは待合室で待機)
「ママ、これからなにするの?」
通路の大きいソファーに座ったところでソフィーが聞いてきた。
「えっとね、これからソフィーが元気かどうかお医者さんに調べてもらうの。あと、感染症とかにならないように予防接種をするわ」
「……ママどこもいかないでね」
私がそう言うとソフィーは急に涙目になって泣きついてきた。
私が何処かに行っちゃうって思っちゃったのかな。
「大丈夫、ママはいつまでもソフィーと一緒にいるからね」
そう言ってソフィーの頭を撫でて落ち着かせようとした瞬間
『うわーーーん!!!』
「「………」」
診察室から女の子の叫び声が響いてきた。
そしてその声に影響されたのか周りで一緒に待っていた子供達の顔から笑顔が消える。そして、それはソフィーも例外ではなかった。さっきまでは少し目の潤いが多いかなくらいだったんだけど、叫び声を聞いた瞬間にもうほぼ泣いてるんじゃないかってくらいの涙が目に溜まっていた。
「……ソフィー………大丈夫?」
「………」
ソフィーは俯いたまま私の腕をギュッと握っている。
これは……大丈夫じゃないね〜。
そう思いながらソフィーの頭を撫でていると診察室から号泣している女の子を抱えた母親が出てきた。そして看護師さんが次に診察を受ける人の名前呼ぼうとしていた。いや〜次に呼ばれる人は………ドンマイ!
「では次の………ソフィアさんお入り下さ〜い」
「ブフゥ!」
このタイミングで来るか!?
まさかのあの叫び声が聞こえた次に呼ばれるとか、可哀想すぎる。ほら、ソフィーが小刻みに震えてて顔が『終わった……』みたいな顔になってるもん。
「ソフィー……行くよ〜」
私はソフィーを抱えて診察室に入った。
診察室には美人なお医者さんと一人の看護師さんがいた。ソフィーを先生の近くにある椅子に座らせて私はその後ろに座った
「よろしくお願いします」
「はい、お願いします。まずは今日は、ソフィアちゃんの健康診断と予防接種で間違いないですか?」
「はい」
そう言うとお医者様は聴診器(←魔石と魔法を使った私の発明品)をつけた。
「ではさっそく健康診断から始めますね〜。ソフィアちゃんお洋服めくって先生に見せてくれるかな〜?」
お医者様にそう言われるもソフィーはずっと俯いたままだった。
「ソフィアちゃ〜ん?………すみませんお母様、ソフィアちゃんのお洋服をめくっていただけますか?」
「は、はい!」
私は言われた通りにソフィーの服を胸の上くらいまで引き上げた。
そしてそこからのお医者様のスピードは凄かった。一瞬でお腹と背中を聴き終わらせていた。一瞬で見えなかたけどきっと空間魔法を使っていたのだろう。
終わったのを確認してソフィーの服を元に戻した。
「じゃあ次はお口をあ〜んって開けてくれるかなぁ?」
おっ今度はすぐに口を開けた。偉いよ〜!
「はい! 閉じて良いよ〜。偉いね〜ちゃんとお口開けれてね」
そしてまた一瞬で終わらせてソフィーの頭を撫でていた。
そしてお医者様が何か書き始めるとソフィーは椅子を降りて私に飛びついてきた。怖かったのかな〜もうすぐで終わるからね〜。
「特に問題はありませんね。そしたら………予防接種もしちゃいましょうか」
……さあ来たぞ。
きっと一番の鬼門となる『予防接種』ここでさっきの女の子みたいに大暴れしなければ良いんだけど………まぁ無理だよね〜だって痛いもん。私も予防接種を受ける時は暴れてたなぁ。
「ソフィアちゃん、袖を捲ってくれるかなぁ?」
ソフィーは言われた通りに左の袖を捲った。
案外大丈夫かも?
と思っていた私が間違いだった。ソフィーが注射針を見た瞬間
「いたいのやっ!!」
と言って腕を引っ込めてしまった。
う〜んやっぱりこうなるかぁ〜ここからどうするか……
「ソフィアちゃんぜ〜んぜん痛くないから大丈夫だよ〜」
「やっ!ぜったいいたいもん!!」
「大丈夫だよ〜ちょっとチクってしてすぐに終わるから〜」
「チクってするのがやなの!!」
ソフィーはそう言うと私の胸に顔を押し付けて泣き出してしまった。
流石にこうなるっちゃうと先生とかも困っちゃうよね。
「お母様、少し耳を……」
そう考えてると看護師さんが小声で話しかけてきた………ふむふむ、ちょっとやってみるか。
「ソフィー、どうしたら注射してくれる?」
「…………しないもん」
「もし注射してくれたらこの後ご褒美に何でも買ってあげるよ?」
「………やだ」
おっ震えが少し弱くなった?
「う〜んじゃあママも一緒に注射する、それならしてくれる?」
「……や」
泣き止んだ!もうひと押し!…………なんだけどもう考えが浮かんでこない。あ〜もう! こうなったらヤケクソだ!
「わかった! ママがずっとソフィーのことぎゅ〜ってしててあげる。そしたらしてくれる?」
「……する」
数回の説得でやっとソフィーが腕を出してくれた。
ていうか、ご褒美に何か買ってあげるよりもぎゅ〜ってしてあげる方が良いんだ。だけどそんなソフィーも可愛い♡
私は言った通りソフィーをぎゅ〜っと全身で優しく包み込んだ。それと同じようにソフィーも右腕でぎゅ〜っと私の体を抱きしめてきた。はぅ♡……ソフィーの柔らかいからだが私にくっついてくる。
そこからは一瞬だった。先生が注射針を刺した瞬間ちょっとだけソフィーの体がビクッとしたけど特に泣くわけでもなくずっと胸に顔を押し付けていた。そして注射が終わるとソフィーは涙目だったけど泣くのを我慢して笑顔を見せてくれた。
「ソフィー偉いよ!!よく泣かなかったね!!」
「……うわぁーん!」
「あらあら……」
私はソフィーの頭をよく撫でた。すると安心したのか逆に泣き出してしまった。それを先生と看護師さんが微笑ましそうに見ていた。
「これで終わりなので帰っていただいて大丈夫ですよ」
「はい、ありがとうございました」
「ソフィアちゃん、またね」
ソフィーを抱っこしたまま診察室を出た。最後に先生が『またね』って言ってたけどソフィーは何も言わなかった、けど私を掴んでいた片方の腕を離して小さく手を振っていた。可愛いすぎるよ〜♡♡
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます