第37話 海(ソフィー・ユキ編)・前編

【ソラ視点】


「ユキちゃん、ソフィーのことお願いね」


ナギサ様にソフィア様を見ておくよう頼まれた。

ソフィア様達は確か海に行ってて……………なんで戻って来たんだろう?ずっと寝てたからわかんないや、お姉ちゃんもどこか行っちゃったし。


「ユキお姉ちゃん?」


「………!ごめんごめん、ちょっと考え事してた。ソフィーちゃん、外で何があったか教えてくれる?」


「えっとねぇ〜おっきな波がざばぁ〜!ってきてね!エリンお姉ちゃんがどーん!って消しちゃったの!」


「そ、そっかぁ〜………………」


おっきい波をエリンさんが波を消した………………?あの人何してるの???海なんだから波があるのは当たり前だし、サーフィンをする人もいるだろうから波消しちゃったらダメじゃん。


「ねぇね、ユキお姉ちゃん!遊ぼっ!」


「うん、いいよ。何して遊ぶ?」


「もっかい海行きたい!」


「いいよ〜♪じゃあ行こっか」


こんなに楽しそうにするなんて、よっぽどナギサ様との海が楽しかったのかな?私も頑張ってソフィア様が楽しめるように頑張らなきゃ!


浮き輪(2つ)を持ってテントの外に出る。するとなぜかたくさんの人が波打ち際に集まっていた。


(何かあったのかな?)


ソフィア様とはぐれないように手を繋いで人混みの方に歩いていって、大柄の優しそうな男の人に話しかける。


「あの、すみません、何かあったんですか?」


「うん?なんだお嬢ちゃん知らねぇのか?さっき海でいきなり津波が起きたんだよ、いきなり」


「そうなんですか!?」


津波が起きた!?ていう事はもしかしてさっきソフィア様が言ってたおっきい波って津波のことだったの?…………………そう考えると、それを打ち消したエリンさんってやっぱり人じゃないような……………。


「さっき監視員さんが調査に出たんだ、だからもう少し経たないと海には入れねぇだろうな」


「そうでしたか…………ありがとうございました、おじさま!」


「おう、良いってことよ。それと、お嬢ちゃん達はまだちっこいんだからちゃんと大人がいる所で遊ぶんだぞ!」


「はい!ありがとうございます!」


おじさんにお礼を言って一回テントに戻る。


「海入れないのか〜ソフィーちゃん、どうしよっか」


「う〜ん……………あっそうだ!後ろの方にあるお店屋さん行ってみたい!」


「ふふっもしかしてお腹空いちゃった?」


「そ、そんなんじゃないもん!た、ただ気になっただけだもん!!」


ソフィア様がそう言った途端に


〈ぐぅ〜〜〜〉


「「……………」」


ソフィア様のお腹から可愛らしい音が聞こえて来た。そしてソフィア様は真っ赤になった顔をかくすように下に向けてしまった。


「じゃあ行ってみよ〜」


私はバッグからお財布を取り出して今度は反対側からテントを出る。



◇ ◇ ◇



「お〜今年もいっぱいあるねぇ〜」


ビーチの後ろに並んでる屋台はほとんどが食べ物系だけど所々には遊び系もある。けど、今は遊びよりもご飯だからね。


「ソフィーちゃん、何食べたい?お姉ちゃんがなんでも買ってあげるよ」


「ほんとっ!?やった〜!じゃあ………………」


なんでも買ってあげると言ってあげたら目をキラキラと輝かせて屋台を見る。


「時間はいっぱいあるからゆっくり見ようね。あと、お姉ちゃんの手は絶対に離さないこと!お姉ちゃんとはぐれちゃったらもう二度とママとも会えなくなっちゃうからね!」


「やっ!!!」


ソフィア様とこの人混みの中で逸れたらまぁ、絶対に見つけることが難しくなる。そうなるよりかはちょっと怖い思いをさせちゃうかもしれないけどこうやって逸れないようにした方がいい……………はず。


ちょっと脅かすとソフィア様は離そうとしてた手をもう一度ぎゅっと握って絶対に離さないように強く握ってくれた………………のは良いんだけど、これでもちょっと心許ない。う〜ん……………


「ソフィーちゃん、お姉ちゃんが抱っこしてあげようか?」


「……………だいじょぶ!」


「…………そっか。じゃあ見よっか」


うぅ……………ナギサ様が言うといつも喜んで飛びつくのに、何が違うんだろう。ちょっと悔しい。


「あっお姉ちゃんお姉ちゃん!あれ食べたい!」


「うん?どれどれ〜?」


ソフィア様が指差す方向には串焼きやがあった。

そういえばソフィア様がお家に来て初めてお出かけをした時にナギサ様と一緒に串焼きを食べたって言ってたっけ?


「いいよ。じゃあ並ぼっか」


お昼前(10時)ということもあってあまり人は並んでなかったからすぐに注文する番が来た。


「ソフィーちゃん、何が食べたい?」


「えっとぉ……………これとこれがいい」


「はいよ〜。鶏皮2本とバラ肉1本お願いします」


「番号札を取って隣に移動して下さ〜い」


カウンターに置かれていた番号札を取って傍にずれる。

目の前ではさっき注文した串焼きが現在進行形で焼かれていく。


「ソフィーちゃん、ちょっと失礼!」


「わっ!?」


ソフィア様を抱き上げて串焼きが焼かれている様子が見えるように体制を整える。


「ほら、お姉ちゃん達の串焼きが焼かれてるよ」


「わぁ〜良い匂いするね!」


ふふっ喜んでくれてそうでなによりだね!


「お待たせしました〜」


「ありがとうございます!」


店員さんから串焼きの入った袋を貰ってお店の前を離れる。

さてと、ここでテントに戻って食べても良いんだけど…………どうせなら外で食べたいよね。この先に行けば座る場所あるかな?


「ユキお姉ちゃん、食べちゃダメなの〜?」


「う〜ん、じゃあテントで食べるのとお外で食べるのどっちが良い?ソフィーちゃんが決めて良いよ」


「………………お外がいい!」


「でしょう?じゃあもう少しだけ我慢できる?」


「出来る!」


「偉いねぇ〜。じゃあもうちょっとだけ我慢してね、お姉ちゃん急いで探すから」

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