第36話 お仕置き
私はエリンと一緒に監視室に入って、監視員さんと話をしていた。
「急に大きな波が現れたのですか?」
「はい、なんの前振りもなく…………いきなり」
「う〜ん……………
本当になんでいきなりあんな大波が現れたんだろう。
そしてなんでエリンはこんな滝のように汗を流してるんだろう?隣に座っているエリンからは穴という穴から汗が噴き出ていて足元には小さい水たまりが出来始めていて、更には若干顔色が悪いというか……………この表情は………………
「ねぇエリン」
「はっはははっはい!?なんでしょうか!?」
「…………何か隠し事してない?」
「え、えええ、ええ!?いやいや、そんなまさか、私がそんな津波を起こすわけ、ななな、無いじゃないですか!!」
「「………………」」
……………………今、なんて言った?『津波を起こすわけがない』?
私、エリンが津波を起こしたなんて一言も言ってないんだけど。ていうかよくよく考えてみたら、エリン……………何処から来た? 私はてっきりエリンが砂浜から蹴り出してこっちに飛んできたと思ってたんだけど、それにしてはなんの音も聞こえなかったし、エリン程の力がある人が地面を蹴ったら抉れたりするよね?なのに砂浜には蹴った跡が無かった…………………
「エリン、正直に話しなさい?何か知ってるわね?」
「…………………」
「ナギサ様、私にお任せ下さい」
いきなり背後からそんな声が聞こえて来た。
振り返るとそこにはどこかに出かけていたセラが額から角を生やして仁王立ちをしていた。
「今回の大波の件、ナギサ様のご想像の通り犯人はエリンです」
「「……………!」」
「うっ嘘だ!そそそ、そんな証拠、どこにあるんですか!?」
エリンが今にでも泣きそうな震える声で言う。
もうこれは認めてるようなものじゃん。
「ここにありますよ」
しかし、セラは冷酷に机の上にソレをおく。
「これって………………水晶玉?」
セラが置いたのはよくお店とかで防犯用に置く風景を記録できる魔道具(現代で言う監視カメラ)だった。
「これを見ていただければ、全てがわかります」
私は言われた通り水晶玉の映像を流そうとすると、
「な、ナギサ様!お待ちくだs」
「エリン、次に許可なく動いたら……………わかりますね?」
立ちあがろうとしたエリンの首筋ギリギリに氷の刃が突きつけられる。
せ、セラ……………怖っ!
「ナギサさん、再生お願いします」
「はい…………」
そして私達はその映像を見た。
◇ ◇ ◇
「こんの大馬鹿者ぉー!!!!!!!」
「ヒィィィーーーー!!!!」
私は今までで1番大きい雷をエリンに落とす。
まったく!もし私達以外に巻き込まれてる人がいたらどうしてたのよ!!しかも、結界を突き破るほどの威力!?バカじゃないの!? 子供でももう少し加減できるわよ!!
「あ、あのぉ………もう大丈夫でしょうか?」
エリンのお説教が終わったタイミングで警備員さんが話しかけて来た。警備員さんは私の覇気(怒気)にすっかり萎縮してしまっていた。ちょっと申し訳ない……。
「あっすみません、つい………………」
「あはは……………まあ僕もきっとナギサさんの立場ならそうなってますよ」
「えっと…………この大馬鹿者の処置は…………いかが致しましょう?」
これは流石に私の私刑で済ませるわけにはいかない。だって、他の人の迷惑にもなってるしあの大波のせいで怖い思いをさせてしまっている以上、ここは厳しく処罰しなくちゃいけない。
「そうですねぇ………………まあ幸いな事に人的被害は出ていませんし、それに罪に問おうとしてもまず無理でしょうし………………そうだ!」
「何か良い案は浮かびましたか?」
「はい、いっその事【労働】させるのはどうでしょうか?エリンさんの結界を突き破るほどの力を使えば解決できていない事も出来るかもしれません!」
「ほうほう………」
「それに、前科をつけるのではなくナギサさんからの“派遣”という形をとればエリンさんの経歴にも傷は付きませんし。そうなればナギサさんはエリンさんへの罰を与えられて嬉しい(?)私達は問題の解決ができて嬉しい。まさしくWin-Winの関係じゃないですか!」
確かにそれなら……………………よし、これで良いか。
「はい、構いません。では詳しい話をしましょうか。セラはエリンを拘束して少しだけ待ってて」
「はい、お任せ下さい」
セラにエリンを任せて警備員さんと派遣期間だったり、その間の給与(あるわけが無いけど)他にも福利厚生(これもあるかはわからないけど)などについて話し合う。
「では、契約書にサインを」
「はい。ではお願いします」
私は誓約書にサインをして契約が交わされる。
◇ ◇ ◇
エリンを警備員さんに預けてセラとテントに戻る。
その途中、気になったことがあったのを思い出してセラに聞いてみる。
「そういえば、どうしてセラはエリンがあれをしたってわかったの?」
「あぁ、簡単な事ですよ。海水浴場に着いてから落ち着きがなかったので、こっそり後ろを付けて、あの場面をとらえたんですよ」
「…………………うん?ていう事は、あの水晶ってセラのだったの!?」
「はい。気づきませんでしたか?これですよ」
そう言うとセラは髪を結んでいたヘアゴムを見せる。ヘアゴムにはさっきの水晶を小さくした様なガラス玉が付けられていた。
まじか、どうやって手に入れたんだろう。普通の人じゃ手に入らないのに(私ですら持ってない)
「これは………………お父様が家を出る時に持たせてくれた、お守りなんです」
私の心の声を読んだかのように大事そうに言う。
よっぽどお気に入りなのかな?
「まぁ、記録する機能があることを知ったのはつい最近なんですけどね…………」
「さぁ、戻りましょうか。ソフィーのそろそろ待ちくたびれてテントを飛び出しそうになる時間だわ」
テントを離れて1時間が経っていた。ソフィーは大丈夫かしら?ユキちゃん達を困らせてなければ良いんだけど…………
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