第35話 海(エリン編)
「うっ……………!!」
別荘に来た次の日、私は
「今日は海に行くので、用意して下さい」
「何か言いましたか?」
「……………いんや、顔洗ってくるよ」
私はあいつは人の皮を被った悪魔か何かだと思ってる。
顔を洗ってリビングに向かうと既にリビングの一角に海の持っていく用の荷物が山積みにされていた。
「丁度いいところに来ましたね、裏の物置からテントを持って来て下さい。私はその間に朝食の用意をしますので」
「あいよ………………あれ?ナギサ様は?」
いつもだったら既に起きているはずのナギサ様がいない。いつもだったら私が起きたらもうキッチンにいるのに、どうしたんだろう。
「ナギサ様なら朝の散歩にソフィア様とお出かけになりましたよ」
「……………またか」
ナギサ様はたまにフラッと散歩に出かけたりする。別に散歩に出かけられるのは構わないけどせめては護衛をつけて欲しいものだ。いや、ナギサ様が最強なのは身をもって知ってるよ?けど、ナギサ様の体裁的には護衛をつけて欲しい!
「ナギサ様には困ったものですよ。まぁたまには親子水入らずで話したいのもわかりますが…………」
セラがそうため息を吐く。まあこれには私も同意見だね。
「……………準備してくる」
「お願いしますね」
私は玄関を出てテントを取ってくる。
◇ ◇ ◇
「じゃあセラとエリンそれにソラちゃんはテントをよろしくね。私とユキちゃんは受付に行ってくるから」
「はい!」「お任せ下さい」
ナギサ様にテントを任された。
「まずはいい場所を探しましょう」
こういう所では(も)セラを中心に動く。
今日は公共のビーチ、だからたくさんの人がいる。人混みを避けてこの大荷物(テント)を担いだままだと当たりそうで若干怖い。
「あっ!セラお姉ちゃん、あそこどう?」
キョロキョロと周りをしっかり見ていたソラちゃんが指を刺す。
そこは海からも、屋台からも程よい近さがあった。
「いいですね。ではそこにしましょう」
〜〜数分後〜〜
「みんなお疲れ様、しっかり水分取ってね」
ちょうどテントを建て終わったところでナギサ達がテントにやって来た。
そして水着に着替える時に一悶着あった。
「はい!じゃあ後は自由行動!ソフィー海いこっか」
「うん!」
若干ナギサ様がヤケクソ気味にソフィア様を連れてテントを出ていってしまった。そしてテント内には私とソラちゃん姉妹が残された。
「2人はテントにいる?」
「はい、ユキが暑さでダウンしてしまったので。収まったら海に行きます」
「じゃあ私は出るね」
「はい、お任せ下さい!」
さてと、行くか、あそこに……………
◇ ◇ ◇
私はテントを出て屋台が続く道を奥へ奥へと進んでいきある屋台の前で止まる。
「来たよ」
「…………合言葉は?」
「力・イズ・パワー☆」
「気をつけてな」
意味不明な合言葉を唱えると目の前に空間の歪みが現れる。
私はその空間に入り込むと、一瞬にして景色が変わってビーチの遙かなた上空に存在する闘技場が現れた。
天空のリングには海パン一丁の男達が本気で殴り合いをしていて会場のボルテージはMAXになってる。
「おおっ今年も来たか!おーい!【破壊神】が来たぞー!」
私はこの闘技場を時々来ている。
この闘技場は領土全域に存在する国公認の闘技場で、私はそこで【破壊神】の二つ名を携えながら賞金という名のお小遣いを稼いでいる。
「誰か挑む命知らずはいねぇかー?破壊神相手には特別ルールがあるぞー!」
私専用の特別ルール。それは【殺す以外ならなんでもあり】である。本来ここの闘技場は【魔法・殺害・召喚術】が禁止にされている(ここは己の力を試す場所だからね)が、私だけはそれだと相手にならないためさっきのルール以外に【リングに収まりきるまでなら】という条件で【1対多】が認められている。
「出るぞ!」
しばらくの沈黙の後、筋肉ムキムキの男達(ざっと10人)くらいが立ち上がる。そしてそれに釣られて他にもどんどん名を上げていく。
「審判、リングに入らなくても全員参加でいいよ。空きが出たら次々投入すれば良い」
「…………!本当にいいのか?連戦になるぞ。」
「それくらいしなきゃ練習にもならん」
「ふっ…………良いだろう」
そして今日だけの特別ルールが施行され早速リングに入る。
リングには戦士、騎士、重戦士、魔術師、召喚士、まあいっぱいいる。けど、これくらいしないと私の相手は務まらないね!
『では………………始めっ!!!』
審判が開始のゴングを鳴らす。
その瞬間に前衛職の人間は一斉に私に突っ込んでくる。更には後衛職の魔術師や召喚士が魔法や精霊の召喚を行い、凄まじい弾幕が私に向かって放たれる。そんなにごちゃごちゃしながらだったらフレンドリーファイアがあるんじゃないかって?残念、あいつらは【戦友の腕輪】という魔法具をつけてるから同じ魔道具を身につけている奴からの攻撃はすり抜けるんだ。まったく、魔法具師は尊敬するよ。
「ぶち●せー!!!!!」
私はこちらに向かって放たれる魔法を、斬撃を、拳を全て紙一重でかわす。もちろん身体強化無しでね。野郎どもは全員が魔法で身体能力を強化されてるけどそれでも私には届かない。
野郎どもの攻撃を避け続けること10分、そろそろ避けるのも飽きて来たな……………終わらせるか。
私は足に力を溜め、上空に体を飛ばす。
もちろんそんなものを魔術師は見逃すわけがなく、すぐさま魔法がこっちに向かって放たれる。
私は左の拳に力を溜め……………
「破拳!!!!」
左の拳を一直線に地面に向かって振り翳す。
〈ゴオォオ!!!!〉
振り抜かれた拳からは軽く小さな街一つを吹き飛ばすほどの威力の波動を放出し、地面の結界を突き抜けて…………………
威力の衰えないまま海に着弾した。
そして海は私の破拳の影響で水が押し上げられ、巨大な津波となって浜を襲おうとしていた。
「やばいやばいやばい!!!!!ちょっ、行ってきます!!!!」
このままじゃ犠牲者が出る!その前に止めないと!!!
私は結界を突き破って津波の到達地点を先読みして拳に力を溜めながら急降下を始める。
(急いで急いで急いで!!!!)
そして不運なことに津波の進行方向にナギサ様達がいるのが見えてしまった。
うぁ〜!!!!なんでそんな所にぃ〜!!!!いや、もうしょうがない、こうなったら『助けに来た』風を装ってナギサ様の前で津波を【破壊】する!これしか道は無い!
そして…………………
「ナギサ様!お待たせしました☆」
平静を装ってナギサ様の前に現れて溜めていた右の拳を振り抜いた。
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