第34話 海(ナギサ・ソフィー編)

「ソフィー、ママとお手て繋ごっか」


「うん!」


ソフィーと手を繋いでゆっくりと波打ち際まで近づく。昨日もエリンと一緒に波打ち際まで近づいたからか、波に物怖じもしないで普通について来てくれる。そしてソフィーの足に波が掛かった。


「わっ!冷たい!」


「ふふっそうでしょ。気持ちいい?」


「うん!」


ソフィーは私の手を離して寄ってくる波を後ろに避けて、引いてく波を追いかけたり、子供のよく見る行動を見せる。


「(やっぱりこういうのは誰でもやるんだなぁ〜。可愛い♪)」


ソフィーはニコニコの笑顔でパチャパチャと音をたてて楽しそうに遊んでいる。

波にも怖がってないし……………もうちょっと沖の方まで行ってみても大丈夫かな? 私は持って来ていた浮き輪を膨らませる。


「ソフィー、もう少し奥の方に行ってみよっか?」


「…………!行く!!」


ソフィーの目のキラキラの星が宿る。

ふふっ相変わらず好奇心が旺盛ね。


「じゃあこれに体を通して………………よし、行こっか」


ソフィーにの体に浮き輪を通して沖の方に歩いていく。


「ソフィー、足がつかなくなったら浮き輪を絶対に離しちゃダメだからね?」


「あい!」


浮き輪を離しちゃって沈んでいっちゃったら本当に私の心臓が持ちそうになからね。まぁ私もなるべくはソフィーの体を支えてようとは思ってるけどね。


テントはすっかり小さく見えて来て、私も完全に足がつかなくなった。ソフィーはガッチリと浮き輪を掴んで辺りを見渡していた。


「すごいすごい!みんな楽しそう!」


「ふふっそうね」


周りを見ると流石にソフィーくらいの子はいなかったけどソフィーより少し大きい子はちょこちょこ見えた。けど流石にここまで来ると“浮き輪”というよりもサーフボードの方が多くなってきていた。


なんて思っていると


「ママ!ママ!!おっきい波くるよ!!!」


ソフィーが興奮気味に後ろを指さすから私も後ろを見ると


〈ゴゴゴォ……………!!!!〉


「………………津波?」


後ろを見ると軽く私達を包み込めそうなくらい巨大な波が迫って来ていた!?

あれ?これ大丈夫なやつだよね?そう思い周りを見ると


「逃げろぉぉおおお!!!!」


サーフボードを手にしたムキムキの男達が必死の形相で泳いで逃げていた!


「ちょちょちょ!!これマズイやつじゃん!!!ソフィー逃げるよ!」


公共の場では(攻撃)魔法の使用が制限されている。ここがプライベートビーチなら私が魔法で凍らせたり相殺させたりも出来るんだけど……………流石に出来ない。


「唸れぇ〜!!私の体ぁ〜!!!」


私は自身の体に強化魔法をかけて全力で水を押す。

しかし相手は全ての母、自然。私ごときじゃ相手にならない……………
















私達に波が覆い被さり『もうダメだ』と諦めた瞬間………………私達の頭上に1人の人間がいきなり現れた。


「ナギサ様、お待たせしました☆」


「え、エリン(お姉ちゃん)!!!」


私達の頭上にいきなりエリンが現れる。そしてエリンの右の拳は血管が浮き上がるほど力が溜め込まれていてその拳は見るだけでも普通の人間…………いや、それなりの手練れでも負けを覚悟するほどのオーラを放っていて


「行きますよ〜〜せ〜のっ! えいっ!!!」


〈パァアアアンッ!!!!!!!〉


エリンが渾身の拳を波に向かって振り翳す。

その瞬間エリンの拳から体が吹き飛ばされそうなほどの豪風が放たれ(私達は水のおかげで吹き飛ばなかった)巨大な波はエリンの拳(豪風)によって綺麗さっぱり打ち消され、さらには頭上にあった雲までもが拳(豪風)によってかき消され晴天が広がっていた。


エリンの拳はこれで一切魔法を使ってない生身の体なんだよね。これってそこら辺の魔物よりも圧倒的に脅威なんじゃないかな。


「「…………………」」


「ナギサ様、ソフィア様、大丈夫でしたか?」


「え、ええ、ありがとう怪我はないわ。ソフィーは?」


「大丈夫!」


まったく、あれだけ大きい波に飲まれそうになったのになんでソフィーはこんなに楽しそうに笑ってられるんだろう。何も知らないからこそ、なのかな。


「一回戻ろっか」


「うん!」


「お運び致します!」


私とソフィーはエリンに抱き上げられ?砂浜に戻った。(なぜかエリンは水面をさも当たり前のように走っていた。エリンって人じゃない?)


砂浜に戻ると沢山の人から恐怖の眼差しを向けられた。

まあそりゃそうか、あんな災害級の大波(津波)を1人の女が打ち消したんだから、う〜ん、面倒なことになりそうだなぁ。


「すみません、少しお話を伺っても宜しいでしょうか?」


テントに戻ろうと歩いていると複数の警備員に止められた。


「…………はい、ですが少し待っていただけませんか?子をテントに戻して来ますので」


流石にソフィーを連れて行くわけには行かない。多分ユキちゃんがテントの中にいるはずだからちょっとだけ見ててもらおう。


「ソフィー、少しだけ大人しくしててね」


「……………うん」


「ユキちゃん、ちょっとお願いね」


「はい…………」


私はユキちゃんにソフィーを任せてテントを出る。

そして私はエリンと一緒に監視塔に連れていかれた。

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