第29話 初めての海

掃除を終わらせてリビングでデザートを食べる。ここの家はリビング、キッチン、寝室×3のスッキリした平屋だ。家が少し小さめの代わりに庭は広いし、目の前には海が見えててプライベートビーチもある。値段は高かったけどそれに相応しい価値はあると思う。


「ママ、海見に行きたい!」


「いいよ〜、その前にお着替えしてからね」


「わかった!」


ソフィーは待ち切れないのか、もうウズウズしている。ふふっ初めての海だもんね、どんな反応するか今から楽しみだなぁ。


「他に行きたい人は?」


今リビングにいる3人に聞く。(ユキちゃんは自室でお昼寝中)


「すみません、私は夜ご飯の準備があるので…………」


セラが申し訳なさそうに言う。

う〜ん…………海で何か取ってきてあげよう。


「私は行きますよ!!なんたって護衛ですから!」


「あっエリンは元々強制だから大丈夫」


「私の扱い酷くないですか!?」


いやいや、護衛なんだから当然でしょう?


「私も行きたいです!」


「良いねぇ〜じゃあ少し休憩したら行こっか。あっ今日は入らないから水着の準備はしなくても良いよ」


「わかりました!」


◇ ◇ ◇


「ほら、見えて来たよ」


「わぁー!!!」


家を出て少し歩くと海が見えて来た。

そして砂浜に着くとソフィーが海に向かって強く砂浜を蹴り出そうとした


「わっ…………!!!」


砂に足を取られたソフィーは転びそうになって………………


「ソフィア様!!」


それにいち早く気づいたエリンが神速の速さで地面を蹴り、ソフィーに駆け寄る。が……………


「おっとっと……………」


「ブヘッ!!!!!」


「……………ぷっ!エリンさんどうしたんですか!!」


助けに入ったエリンが盛大に砂にダイブをして、ソフィーは普通にバランスと取り戻していた。そしてそれをソフィーはキャッキャっと見て笑っていた。


「ほらソフィー、エリンのこと助けてあげな〜」


「はーい!エリンお姉ちゃんだいじょうぶ?」


「はい!大丈夫ですよ!なんせ私ですからね!!」


まぁ……………エリンが転ぶ程度で何かなるとは思えないけど、大人としてはこういう時にすぐに手を差し伸べられる子に育ってほしいからね。


「ソフィア様、肩車しますよ!!乗って下さい!!」


「いいの!?やったー!」


そう言うとエリンはソフィーを肩車すると砂浜を走り出した。相変わらずエリンは超スピードで走り続けていて、ソフィーも楽しそうに笑っていた。


「エリンー棒の先には行っちゃダメだからねー」


「わかってますよー!!」


棒の先はプライベートビーチじゃなくて公共のビーチだからね。一応は結界で区切られてて外からは入れないようになってるんだけど、中から外には出れちゃうからそこだけは気をつけないと。


「ソラちゃんは行かなくていいの?」


「少し疲れてるので、今日は見るだけです♪」


そう言うとソラちゃんは近くにあった石に腰を下ろした。

私も隣に座る。


「明日はみんなで行こうね」


「はい♪」


「……………眠い?」


「…………!?いえいえ、大丈夫ですよ!」


けどそう言うソラちゃんの顔は赤くなっていた。眠いなら素直に言えば良いのに、誰も怒らないんだから。


「ふふっソラちゃん、おいで?」


私は両腕を広げて包み込むような素振りを見せる。


「〜〜〜〜〜っ!し、失礼します!」


そう言うとソラちゃんはゆっくり私に体を預けて来た。それにしても…………やっぱりまだまだ大きくなってるんだよなぁ、この家に来た時はまだまだ小さかったのに。


「どう?落ち着く?」


「………はぃ」


「今日は手伝ってくれてありがとうね、助かったわ」


「……………いぇ、それが仕事ですからぁ」


「ゆっくり休んでね」


そう言いながらソラちゃんの背中をゆっくり撫でる。

遠くでは楽しそうにエリンとソフィーが波打ち際で波を避ける遊びをしているのが目に入った。


◇ ◇ ◇


「ママー!みてみて大きい貝あったよー!」


大きい貝殻を持ってこっちに走ってくるソフィー、その後ろで盛大に転んだエリンは視界から消したのは秘密だ。


「ふふっ凄いの見つけたねぇ。綺麗に洗って持ち帰ろっか」


「うんっ!」


時間も経って帰るには良い時間になった。地平線の向こうはオレンジ色の太陽が沈みかけていた。


「そろそろ帰ろっか」


私はそう言ってソラちゃんを抱き上げる。ソフィーの重さに慣れていたせいで少しバランスを崩しかけたけどなんとか持ち直してそのまま家に帰る。ソフィーは砂浜で拾った貝殻をたくさん袋に詰めてニコニコだ。


「ただいま〜」


「お帰りなさいませ。お風呂の準備、出来てますよ」


家に帰るとセラが湯船を沸かして待ってくれていた。さすが完璧メイドのセラだ。


「じゃあ先に入らせてもらうわね。ソフィー行こっか」


「はーい!」

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