第30話 別荘での夜

ここのお風呂は小さめで湯船は大人1人、子供1人でちょうどくらいの大きさになってる。そして何よりもここのお風呂の凄いところは


「うわぁ〜!お星さまがいっぱい!!」


ここの天井は結界(マジックミラーの様なもの)で出来ていて、天気が良ければ満点の星空を見る事ができる。もちろん安全面でも外側からじゃ鏡のように見えるから女の人でも安心して入る事ができるの。


体を軽く流して湯船に入る。

ここの湯船は木で出来た私の特注で木の良い匂いが浴室中に広がっている。


「今日はどうだった?」


「楽しかった!」


「明日からはもっと楽しいことがいっぱいあるから楽しみにしててね♪」


「うん!」


ここにはそれなりに子連れの家族がいる。あっちの家は近くに家も無いし、街まで行くのもそこそこ時間がかかるからあんまり子供同士の関わりがなかった。けど、ここだったら子供も近くにいるし、ソフィーにとってもいい経験になるはず。


「ねぇねぇ」


「うん?どうしたの?」


「今日行ったところ明日も行ける〜?」


今日行ったところ………………海かな?


「行けるよ〜。楽しかった?」


「うん!冷たくて気持ちよくてね、貝殻もいっぱいあって綺麗だったの!」


楽しそうに声を弾ませながら話すソフィーの顔は可愛らしい笑顔を浮かばせていて、こっちまで顔が綻んでしまうほどだった。


「明日は公共の砂浜に行ってみよっか」


「こうきょうのすなはま?」


「そうそう、今日行ったのはママ達専用の場所。さっき言ったのはみんなの砂浜で、たくさんの人が来るの」


「ふぅ〜ん」


「もしかしたらソフィーくらいのお友達も来てるかもよ。会ってみたくない?」


「会ってみたい!!」


「ふふっ決まりね」


良かった良かった。まあ心配なこともいくつかあるけど、楽しんでくれたらいいな。


「よし、そろそろ髪の毛洗おっか。こっちおいで」


「うん!」


体も十分にあったまったところで髪を洗う為に湯船から出る。そして私に続くようにソフィーも湯船から出る。


う〜ん、そろそろソフィーの髪も切った方がいいかな。ソフィーの髪はかなり長く伸びていて背中の真ん中あたりまで毛先が届いている。女の子だから長すぎってことはないんだけど………………流石にここまで長いとお手入れも大変だし、何よりも気にしないといけない事が多くなっちゃうからなぁ。


「ねぇソフィー、そろそろ髪も長くなってきたし髪、短くしてみない?」


シャンプーでソフィーの髪を洗いながら聞いてみる。


「う〜ん……………」


「まぁ今の髪の長さが気に入ってるならいいんだけど。ママとしては少し短くした方がいいと思うんだけど、どうかな?」


「う〜ん…………じゃあ切って、みる?」


「そう、じゃあ今度切りに行ってみよっか」


「うん」


髪を切るのが決まった所でソフィーのシャンプーとトリートメントが終わってシャワーをかける。相変わらずソフィーの髪はサラサラで一切指が引っかからない。


「じゃあ次はソフィーがやるよ!」



◇ ◇ ◇



「出たよ〜次どうぞ〜」


ソフィーを抱っこしてリビングに戻る。リビングには起きて来たユキちゃんとソラちゃん、それとセラがいた。エリンは……………日課のランニングかな?


「お姉ちゃん入りに行こ!」


「え〜?私は後からでいいや〜」


一緒に入ろうと誘うも即レスで断られてしまった。ちょっとかわいそう……


「え〜!?入ろうよ〜!」


「では私と入りましょうか」


「へっ……………い、いやぁーーー!!!」


ユキちゃんはちょうど暇そうにしていたセラに転移で脱衣所に連れていかれてしまった。その時間はなんと3秒、ユキちゃんが話し始めてわずか3秒で目の前から消えていったのだ。恐ろしや恐ろしや…………


「ママ〜?」


「…………!ごめんごめん、早く乾かすね」


一瞬の連れ去り事件に驚いてるとソフィーに呼ばれてハッと意識が戻った。

ソフィーと寝室に戻ってソファー(1人用)に座らせて髪を乾かす。


ソフィーは機嫌がいいのか頭をゆらゆらと揺らしていて、小さな鼻歌が聞こえてくる。まったく、なんて可愛らしいのやら。


「マ〜マ!」


「どうしたの?」


「えへへ、大好き!」


「あらあら、甘えん坊さんだね」


髪を乾かし終わるとソフィーが大好きと言ってぎゅ〜っと抱きついて来てくれた。しっかりと受け止めて私からも抱き返すとソフィーはスリスリと私に頬擦りをしてくる。ソフィーの肌はモチモチしていてとても気持ちがいい。


「さっ今日は色々あったから疲れてるでしょう?早く寝ましょうか」


「まま〜抱っこ〜」


「はいはい」


ソフィーを抱っこして歯を磨く為に洗面所に向かう。

寝室を出てリビングに戻ると何故か大量のお酒を持って椅子に座っているエリンと机で寝落ちしてしまっているソラちゃんがいた。


「エリン、そのお酒どうしたの?」


「あぁ、ナギサ様。実はさっきまでランニングをしてたんですが、変な輩に絡まれてしまって……………返り討ちにしたら貰えました!」


「………………怪我はない?」


「はい!控えめに言って雑魚だったので大丈夫です!!」


う〜ん、物理の勝負でエリンに勝てる人間なんてこの世に何人いるのやら…………まあ、怪我がないならいっか。明日からは少し気をつけないとね。


「エリン、後でソラちゃんを部屋に運んでおいてあげて。あと今はセラ達が入ってるから出たら入る事。私達はもう寝るから戸締りはお願いね」


「はいっ!お任せ下さい!!!」


「じゃあ頼むわね」


まあ、セラにもこの事は言うんだけどね。だってエリンだけじゃ心許ないからね。



◇ ◇ ◇



「じゃあ寝よっか」


歯磨きを終えてまた寝室に戻って来た。

ソフィーはすっかりおねむになってて歯磨きの途中からウトウトし始めていて、頭が時々カックンとなっていた。


「ソフィー、お休みなさい」


「おやすみなさい……………ママぁ」


お休みというとソフィーはすでに閉じかけていた瞼を完全に閉じてすぐに夢の中に入っていった。


私はソフィーが完全に寝たのを確認してベッドから降りて薄暗い灯りをつけて机に向かう。そして荷物の中から日記帳を取り出して今日あった出来事を書く。これはソフィーがうちに来てから毎日続けている。まぁ、簡単に言えばソフィーの成長日記だね。


日記を買い終えてベッドに戻る。時間にしては5分くらいだったけど既にソフィーからは可愛い寝言が聞こえて来ている。きっと夢の中でも楽しいことをしてるんだろうなぁ。


私はそっとソフィーのほっぺたにキスをして


「おやすみ、ソフィー」


と言って横になった。

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