第14話 魔法
ある日、いつも通り仕事部屋で仕事をしていると〈トントントン〉と扉を叩く音が聞こえてきた。今は10時過ぎだからセラが来る時間ではない、かといってソラちゃんやユキちゃんは普段私の部屋は訪ねてこない。エリンは長期出張中だから居るわけがない。いたらぶっ飛ばしてるからね。
こうなると部屋のドアを叩いてるのは消去法的に………
「ままぁ! きたよー!」
「ソフィー♡ 一人で来れたの〜? 偉いねぇ♡」
私の大好きな愛娘のソフィーだ。最近は一人で動ける範囲もかなり広がって家の中でだったらほとんどの場所を一人で動いても迷子にならなくなった。その為日中はセラ達が近くに付くことは無くなった。
「ままだいすき!」
「ままもソフィーのこと大好きだよ〜♡」
こっちに向かってテトテトと歩いてくるソフィーを椅子を立って抱きしめに行く。ソフィーは私がぎゅ〜っとするとソフィーもそれを返すように小さなお手てでぎゅ〜っとしてきてくれる。もう本当に可愛い♡
「ソフィーはままに何の用があって来たの?」
ソフィーが私の部屋に来る時は何かしらの用がある時だけ。やっぱりどんな物にも興味津々になるお年頃だからかな、最近は頻繁に来るようになって一時間おきに来た時は私もセラも驚かされた。
「えっとぉ……まほうってなに〜?」
「………」
ついにそこにまで興味が行っちゃったか。
いや、魔法に興味を持つのは誰だってそうだし予想もできてた。けどまさかここまで早いとは思ってもいなかった。普通の子が魔法に興味を見出すのは早くても6歳くらいかららしい。その理由は6歳になると教会で洗礼の儀が行われて自分にある魔法の適性を知る儀式が行われるかららしい。
けど、ソフィーはまだ5歳だ。この年で魔法を説明しても理解できるとは到底思えない。けど………それを理由に教えないのは
「ままぁ?」
「ソフィーは魔法をどこから知ったの?」
「えっとね、おほんがいっぱいあるおへやでみつけたの!」
「そう、そのお本は面白かった?」
「うん! ソフィーもしてみたいっておもったの!」
「そっか……じゃあままと一緒にお勉強してみよっか♪」
「やったー!」
◇ ◇ ◇
「じゃあまずは魔法とは何か、それをお勉強しましょう」
魔法とはこの世界に限りなく循環している魔素と体内に秘められている魔力を使ってこの世の法則を超越した力のことなの。魔法は遥か昔、太古の時代からあって遺跡から魔法を使っている様子が描かれた石碑がいくつも見つかっているの。
そして今から200年前、世界中が戦乱に包まれた時代、それまでは日常生活に使われていた魔法を『人を脅かす』ために使われた。そこからの魔法の発展は凄かったらしいわ。今までは〈火・水・風・土・雷・氷・空間〉の七属性が基本だったのが二つや三つ属性を掛け合わせて全く新しい属性が生み出された。そして戦争が終結し、今度は生活を豊かにするために魔法が発展した。モンスターなどから取れる“魔石”を利用して生活の水準は格段に向上した。(そこに私の“知識”が加わって今のめっっちゃ便利な魔道具が完成したの!)
「魔法の歴史はこんな感じかな……ってソフィーには少し難しかったかな?」
ソファーの隣に座っているソフィーはウトウトしていた。4歳児にこれは難しかったね。
「ソフィーは魔法を使ってみたいんでしょ?」
「うん!」
「じゃあ流石に魔法を教える事はできないけど………魔素を感じてみよっか! 魔素を感じ取る事は魔法を扱う上ですごく大切な事だし、こういう練習をしていて損はないしね」
「わかった!」
これから魔素を感じ取る練習をすることにした。
ここで魔法の扱いに適性が有るか無いかはっきり別れるんだよね。適性がある子はすぐに感じ取れるけど適性がない子(例:エリン エリンは全くと言っていいほど魔素を感じ取れない)は感じ取るのに時間がかかる。
「まずはままからソフィーに魔素を流してみるからそれを感じ取ってみようか」
「うん」
そして私はソフィーの手を取ってそこから魔素を流し始めた。もし、ソフィーに魔法の適性があるならきっとすぐに………
「なんかポカポカする」
「そうでしょ、それが魔素よ。ソフィーは魔法に適性がある、それに魔力量もかなり多い。きっとソフィーは素敵な魔法使いになれるわ」
「えへへ〜やったぁ!」
ふふっ喜んでいるソフィーも可愛いわ♡
〈バン!〉「ナギサ様ー!」
「あら? ユキちゃんどうしたの?」
勢いよく扉を開けて入ってきたのはユキちゃんだった。その顔は青ざめていて何かから必死に逃げてきたような顔だった。
「そ、そそ、外に沢山のききき、騎士が……ナナ、ナギサ様を出せ、と……」
騎士達が私に用がある?
…………もしかしてソフィーを…………絶対にソフィーは手放さない!!
「ユキ、セラを呼んできて」
「お呼びでしょうか、ナギサ様」
「うわっ! いつの間に……」
気づいたらソファーの後ろにセラが立っていた。
きっとセラも外の騎士達に気づいてこっちに来てくれたんだろう。
「ユキ、ソラを呼んできてソフィーを守って」
「はい!」
「セラは私と来なさい」
「はい」
私とソフィーを引き剥がそうものならたとえ国でさえも相手に戦ってやる。絶対にソフィーはワタサナイ。
「ままぁだいじょうぶなの?」
「……! 大丈夫よ、絶対に帰ってくるから。そしたらまた魔法のお勉強をしようね」
「うん!」
「良い娘ね。セラ行くわよ」
そして私はセラと共に騎士達が待っているという外門まで向かった。
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