第3話 ママになる
家に戻ってすぐにお風呂の準備をしてもらった。
ソフィアちゃんの体が汚れが酷いし、髪もボサボサでカチカチだから同じ女の子としては綺麗にしてあげたい。あと、傷の手当てもしてあげないと。このままにしておいたら傷が残っちゃう。
「ナギサ様、お風呂の準備が出来ました」
「わかった、今行くわ!ソフィアちゃん行くよ」
私がソフィアちゃんの手を取ってお風呂に向かおうとするとソフィアちゃんにその手を弾かれてしまった
「ごっごめんなさい!ごしゅじん様が先にはいってください!奴隷のわたしなんて最後でいいので」
「……ソフィアはもう奴隷じゃないの!ソフィアはもうわたしの……娘なんだから」
「……わたしは奴隷としての生き方しかしりません」
「じゃあ私たちが教えてあげる!こっちに来なさい!」
「は、はい」
私はソフィアをこっちに来るように言い私の前に立たせた。そして私はソフィアの首に付けられている首輪を魔法で破壊しソフィアの胸に刻まれている“奴隷印”を剥がした。
私には女神様から貰った力のおかげで普通の人には出来ない事をすることが出来る。
「これでソフィアはもう“奴隷”じゃないの、ソフィアはもう“人”なの。わかった!」
「は、はい!」
ソフィアは目をパチパチとしていた。
けどやっと理解したのか目から涙が溢れ出してきていた。
「あっあれ?なんで?なみだ、とまんない。ごめんなさい、ごめんなさい……」
ソフィアは強引に目の涙を拭おうとしてるけど拭ってもすぐにまた涙が溢れてきていた。私はソフィアをそっと抱きしめた。
「ソフィア……ちょっと長いわね、う〜ん………よし、決めた!ソフィア、今日から貴方のことをソフィーと呼ぶことにしたわ!」
「わたしのあたらしいなまえですか?」
「違うわ、愛称よ。私たちは家族になるの、だったら親しみを込めて呼んだほうがいいでしょう?」
「ま、まだ……わかんないです」
「ま、良いわ。ほらお風呂行くわよ!女の子なんだから綺麗にならなくちゃね!」
私はそう言ってソフィーの手を引いてお風呂場に向かった。
お風呂場にはすでにエリンとセラがお風呂の準備を終わらせてくれていた。私の家にはあと二人のメイドがいるけど今は出かけている。まぁそのうち帰ってくるでしょう。
「ほらソフィー服脱いで」
「はっはい!」
ソフィーに服を脱ぐ指示を出す。そしてソフィーが着替えてる間にセラには服を探してきてもらわないと。
「セラはソフィーに合いそうな服を私の部屋から探してきて頂戴」
「かしこまりました」
私がそう言うとセラは空間魔法で一瞬にして目の前から消えていった。
空間魔法は便利そうだから今度私も教えて貰おうかしら。
「エリンは私の手伝いをしてもらうわ。あ、後セラが戻ってきたらセラも入るように言っておいて」
「わかりました!」
「さっソフィー入るわよ」
そしてソフィーの手を引いてお風呂場の戸を開けた。戸を開けると湯気?水蒸気で視界が曇る。ん〜!やっぱりお風呂に入った時のこの感じがたまんない!
「まずは……ソフィーの髪と体を先に洗っちゃいましょう!」
「そうですね。あと、傷口に染みないようにテープも貼っておいた方が良いですよね」
「そうね」
エリンが言ったテープは現代のような粘着性のある物じゃなくてこっちの世界では主に傷口の応急処置に使われる布を指すわ。まあ現代で言うガーゼとか包帯ね。
私はソフィーの傷口にテープを貼って染みないようにした。
明日にはちゃんと教会に連れてってあげて傷を綺麗に治してもらわないと。
「ソフィーちょっと染みるかもしれないけど我慢できる?」
「はっはい!」
「すぐに終わらせるからね」
ソフィーはそう言うと目をギュッと閉じた。
あ〜!可愛い!ちっちゃい子が目をギュッてしてるのがもう………好き♡
「……ナギサ様、ソフィア様の髪固くないですか?」
「ん〜やっぱりずっと髪とか洗ってもらって無かったんだと思う」
ソフィーの髪はやっぱり思った通りガシガシだった。やっぱり奴隷っていう存在は好きじゃない。
ソフィーの髪を二人がかりである程度柔らかくした。けど……オイルが欲しい。このままじゃまだまだ硬いし。
そして洗っている途中でセラがお風呂に入ってきた。そしてセラの手にはオイルが握られていた。う〜ん、優秀!今取りに行こうか悩んでたところにちょうど持ってきてくれた。やっぱりこの四人の中じゃセラが一番優秀だな。
「セラ!ナイス!」
「はい、先程ソフィア様の髪を見て固まってそうなので必要かと」
「じゃあエリンは先に湯船に入ってて良いよ。この後はセラと私でやるから」
「はい!ありがとうございます!」
私がそう言うとエリンは喜んで湯船に飛び込んでいった。
まったく、ソフィーの教育に悪いから湯船に飛び込むのはやめて欲しい。
「ナギサ様、どこまで洗いましたか?」
「髪を洗い終わって今から柔らかくしようとしてた所」
「では早速始めましょうか」
そう言うとセラはテキパキと準備を始め、髪の手入れをし始めた。あれ?これ私要らない?
「あっそういえば今出ている二人から手紙が届いてました」
「あれ、そうなの?なんて書いてあった?」
「明日の夜には家に帰れる、と」
「へ〜わかった。ありがとうセラ」
そっか〜やっと帰ってくるのか。2週間くらいは家を出てたからな。まぁその二人の説明は帰ってきてからでもいいか。
「ナギサ様、終わりました」
「……うん、ありがとう」
結局セラが一人で終わらせてしまった。やっぱりセラは私には勿体無いくらい優秀だよね。
「ソフィー終わったからもう目を開けていいよ」
私がそう言うとソフィーはゆっくりと目を開けた。
うんうん!初めてみた時に比べたら遥かに綺麗になったね!やっぱり女の子はこうでなくっちゃ!あとは……髪も整えてあげて、爪も切らなきゃ。やる事はいっぱいだぁ。
「それじゃあ湯船に入ろっか」
「はっはい」
そう言うとソフィーが恐る恐るゆっくりと片足ずつ湯船に入れていった。そして10秒くらいかかってやっと肩まで湯船に浸かった。私達にとっては丁度良かったけど、ソフィーにはちょっと深かったかな?私達だと胸の位にお湯が来てるけどソフィーだと完全に顔がお湯に浸かっちゃう。
「ソフィーこれ使って」
私は湯船の近くに置いてあった椅子を湯船に沈めてソフィーが座っても顔が出るようにした。これでソフィーもお風呂でリラックスできるよね!やっぱりお風呂ではリラックス出来なきゃ!
「あっありがとうございます!ごしゅじん様!」
「………」
「ごしゅじん様?」
「ソフィー私たちの関係ってなんだっけ?」
私はずっと我慢していた事をソフィーに聞いた。
「えっと、私達は………家族……です」
「そう、私たちって家族よね。………ソフィー!ソフィーはなんで私のことを『ご主人様』って呼ぶの!」
私はずっと『ご主人様』って呼ばれる事を我慢していた。だってこれから家族になるのに私のことを『ご主人様』って呼んでたらそんなのは家族じゃないじゃない!それに私は純粋にこの子のことを愛したい、幸せにしたい!そう思って引き取ったのに………こんなんじゃ全然『家族』じゃない!
「だ、だって……それ以外になんて呼べばいいかわかりません……」
「じゃあ………ナギサって呼べば良いじゃない!」
私がそう言うとそれを聞いたセラとエリンに「はぁ…」とため息を吐かれてしまった。そんなに今のダメだったかな?
「ナギサ様、親の名前を呼び捨てにする家族はいませんよ」
そうか、確かにお母さんの事を名前で呼んだとき無いな。
「う〜ん……」
「はいはい!私良い案思いつきました!」
私が悩んでいるとエリンが声をあげた。
はっきり言って嫌な予感しかしないけど……一応聞いてみるか。
「お母様なんてどうでしょう!この家の雰囲気に合っているんじゃないですか!」
「「却下!」」
それを聞いたセラと私の声が重なった。
なんでセラも却下したのかわかんないけど、とりあえずお母様なんて言われたくない。なんか嫌だ。
「え〜二人して否定しなくても良いじゃないですか〜」
「あっあの!」
エリンが不貞腐れて顔を水面に沈めてブクブクし始めると今度はソフィーから声があがった。
「おっソフィー何か良いの思いついた?」
「あっあの、その……えっとぉ」
「ソフィア様、そんなに急がなくても大丈夫ですよ。ほら、深呼吸して、落ち着いて」
緊張で言葉が詰まっているソフィーを落ち着かせるためにセラが優しく背中を
「あの、えっと、ま、ママって呼んで………良い?」
「…………!!!」
あぁ、お母さん自分で産んだ訳じゃないけど私はやっとママになれたよ。これが現世だったらお母さんにも見せてあげれたのになぁ。
「ナギサ様!?」
あぁ嬉しい!こんな可愛い子から……ママって呼んでもらえるなんて!!好きぃ♡絶対に私が幸せにしてあげるからね!!!
「セラ」
「はっはい!何でしょうか?」
「私は幸せよ」
私はそう言って湯船の中に沈んでいった。
「ナギサ様!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます