第9話 ままと四人のお姉ちゃん
「ナギサ様、夕飯は何にしますか?」
ソフィーをベッドで寝かしつけて食堂に戻るとセラとエリンが夜ご飯の準備を始めていた。
「そうね〜昨日はシチューだったし、今日は違うのが良いよね」
「そうですねぇ……今日のお昼がお肉だったので夜はお魚とかの方が良いですよね」
「あっ! そういえば帰ってきた二人がゴールデンサーモンを4匹も持ってきてくれたんですよ!」
ゴールデンサーモンを4匹も!? ゴールデンサーモン1匹でも私たち5人でも5日くらいは生活できるくらい大きい。それを4匹も………やっぱり私の家には優秀な人が多いな。
「じゃあ生か、焼くか、漬ける………う〜んいっぱいあるなぁ。セラ達は何が良いと思う?」
「私はやはり焼くのが1番ですね。塩焼きもいいですがムニエルも外せません」
「え〜! 私はやっぱり刺身が1番ですよ。それにゴールデンサーモンだったら生が1番です! 市場のおじさんもそう言ってました!」
う〜ん二人の意見がまったく違う。
ていうか4匹もいるんだし全部やっちゃえばいいじゃん!
「う〜ん……いっぱいあるし全部で良いんじゃない?」
「「あ〜」」
よし決定だね! じゃあさっそく料理し始めないと!
「じゃあ今日は………生ね!」
「はい!」
そしてさっそくゴールデンサーモンを捌き始めた。
ゴールデンサーモンは全身が上質な脂があり、口に入れるとすぐに溶けてしまうほどだ。更にはそれを手に入れることが難しいため市場に出回ると安くても大銀貨5枚にもなる。
「じゃあ、捌くのはセラに任せて私たちはそれ以外の準備をしてましょうか」
「はい!」
その間に私はサーモンを漬けるタレとかお皿を用意しないと!けど、やっぱり生で食べるのも良いけど漬けて食べるのが1番美味しい。
まあ残念なのはこの世界には醤油もだし醤油もごま油も無いことなんだけどね。似たようなのはあるんだけどやっぱり本物にはまったく及ばない。だからいつかは私が本物を再現してみせるんだから!
「あっ! ナギサ様〜!!」
「うん?」
急に後ろから名前を呼ばれて振り返ると金色の髪を長く伸ばした少女がこちらに向かって走ってきていた。そしてそれに気づいた時にはすでに遅く、少女はもう眼前にいた。
「うわっ!」
「ナギサ様〜! 会いたかった〜!」
「会いたかったって、実家に帰ってたのは1週間だけだったでしょ?」
「それでもですよ〜!」
私に抱きついてきたのは王都の魔法学校を卒業したばかりの女の子のユキだ。
ユキちゃんは魔法に関してはセラの次に優秀で王都の魔法学校を主席で入学して主席で卒業したという凄い子なのだ。で、なんでこんな優秀すぎる子がうちで働いてるのかというと………
「ユキー! お姉ちゃんと一緒にナギサ様のところに行くって約束したじゃん!」
バァンと食堂の扉の扉が開けられると今度はユキちゃんよりも少し大きい銀髪の女の子が部屋に入ってきた。
「ナギサ様! ただいま帰りました!」
「おかえりソラ」
この子はソラちゃん、ユキちゃんのお姉ちゃんだ。
そうだ、さっきの説明の続きをしないとね。なんでユキちゃんがうちで働いてたのかというとソラちゃんが関係してるんだよね。
なんでかっていうと、ちょうど私が去年メイドを探してた時に住み込みの仕事を探してたソラちゃんが私の家で働く事になったの。で、その時はまだユキちゃんは王都の魔法学校に通っててそれまではソラちゃんの家から通ってたらしいんだけどソラちゃんがうちで働き始めたからそれにくっ付いてユキちゃんも一緒にきた。
それで流石に何もしないで家に居させるのは嫌だったから家事をしてって言ったら案外楽しかったらしく、そのまま学校を卒業したらここで働くって言い出したのだ。
「ナギサ様、何か手伝うことはありますか?」
「う〜ん、特に無いから休んでて良いよ。その代わり明日からはいつも通り働いてもらうからね」
「はい! 任せて下さい!」
「じゃあ私はナギサ様の背中にくっ付いてよ〜」
「ダメですよ〜」
そう言って背中にくっついて来ようとするユキちゃんをソラちゃんが引きずって食堂を出て行った。ユキちゃんは「ちょっとだけだから〜!」という言葉を残して消えていった。
「はぁ、また騒がしい人が戻ってきてうるさくなるなぁ〜」
このやりとりを見ていたエリンがそう呟いていた。
エリンもうるさい部類に入ると思うんだけど。
「エリン、貴女もうるさい部類に入るわよ」
「えっ? いやいやナギサ様、冗談きついですよ〜」
「………」
「無言はやめて下さい!」
私のメイドはセラが完璧担当、ソラちゃんが真面目担当。エリンとユキちゃん騒がしい担当。で、年齢順に並べるとセラ、エリン、ソラ、ユキの順になる。セラはこの三人の先生でお母さん的立場だ。
「ナギサ様、お魚の準備終わりましたよ」
「あっありがとうセラ」
机を見るとお皿の上にゴールデンサーモンの薄造りが出来上がっていた。
本当にセラってなんでも出来るんだな。こうなってくると逆に何が出来ないのか気になってくるよね。
「じゃあセラ達は席に座って待ってて、私はソフィーを連れてくるから」
「はい、わかりました」
さてと、夜ご飯もできたしソフィーを起こしに行かないと。
あと、ソフィーをユキちゃんとソラちゃんに挨拶もさせないと。
◇ ◇ ◇
ソフィーの部屋に入ると一回も起きてないのか電気はつけられていなかった。私はソフィーを起こすために電気をつけた。
「ソフィー起きて〜ご飯できたよ〜」
「う〜ん………あ、ままぁ!」
「ソフィー? どうしたの?」
「……さみしかったの!」
そう言うとソフィーは私にぎゅって抱きついてきた。
そっか、暗いところに一人だけだったもんね。昨日はエリンもいたから大丈夫だったんだ。今日からはソフィーが寝付くまでは一緒にいてあげようかな。
「ごめんね、今日からは一緒に寝てあげるから許して?」
「………やくそくだよ」
「うん、約束………じゃあ下行こっか」
「……うん」
そして私はソフィーを抱っこしてセラ達が待っている食堂に向かった。
「お待たせ〜」
食堂に入るとセラとソラちゃんが楽しそうに雑談をしててユキちゃんが本を読んでいた。そして………エリンはつまみ食いをしようとしていた。う〜んさっきエリンは騒がしい担当って言ったけどやっぱりバカ担当だわ。
「全然待ってないよ! ってその子どうしたの!?」
「大丈夫ですよナギサ様! って何その子!?」
ユキちゃんとソラちゃんが私が抱っこしているソフィーを見て驚きの声を上げていた。そしてソフィーはその二人の声にびっくりしたのか握ってた力が強くなった。
「この子は私の子のソフィアよ、仲良くしてあげてね」
「わぁ〜可愛い!! 私はユキって言うの。よろしくね!」
真っ先に反応したのはユキだった。ユキは今までずっと一番下だったから下の子ができて嬉しいのかな。そして目が星になっていた。
「私はユキの姉のソラと申します。よろしくお願いしますね、ソフィア様」
二人のお姉ちゃんに一気に詰め寄られたソフィーは驚いて顔を隠してしまった。けど、すぐにちょっとだけ顔を上げて二人の方を見て「そ、ソフィーです……」と小さな声で言っていた。頑張ったね、ソフィー♡
「さっ早く食べましょう、ソフィーもいきなりそんなに詰め寄られたら困っちゃうでしょ。あとで時間は取るからその時にね」
「「はーい!」」
まぁ、ソフィーも二人を見て特に何も無かったから仲良くやっていけそうかな。ソラちゃんはユキちゃんもいたから子守も得意そうだし忙しい時は任せようかな。
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