第10話 みんなでお風呂

夜ご飯を食べ終わって今は家族全員が揃っているためみんなで雑談をしていた。ユキちゃんとソラちゃんはソフィーにべったりしている。最初はやめさせようかと思ったけどソフィーも嫌がってはなかったためそのままにしている。


「ねぇねぇソフィーちゃん、ソフィーちゃんの誕生日っていつなの!」


「ん〜わかんない」


「え〜それじゃあ誕生日のお祝いできないじゃ〜ん………ナギサ様! ここでソフィーちゃんの誕生日決めませんか?」


そっか、ソフィーは奴隷だったから誕生日とかも知らされてなかったのか。それは確かに可哀想だなぁ。けど、こういうのって勝手に決めても良いのかな。


「う〜ん、決めてあげたいのは山々なんだけど………勝手に決めても良いのかな? セラはどう思う?」


「う〜ん………別にちゃんとしたものでも無いんですし自由に決めても良いんじゃないですか? それにソフィア様は“人”として生まれたばかりなんですし」


「う〜んじゃあちょっと考えよっか」


「はいはい! 私は7月が良いと思う!」


さっそく案が出たのはユキだった。

こういう決める系の時はユキがいつも先行して言ってくれる。


「それはなんで?」


「え〜だって、私は3月、お姉ちゃんは1月、エリンさんは12月、セラさんは5月、そしてナギサ様は9月。そうなると開いてるのは7月だけですよ!!」


「「「「???」」」」


寝ているエリン以外の頭に(?)が浮かぶ。

え、どういう事?


「みんな分かんないですか!? ソフィーちゃんを7月にすると2ヶ月周期で誕生日パーティーが出来るんですよ! それって良くないですか、だって定期的にイベントがあるんですよ!」


ああ〜そういう事か。確かにそう考えると綺麗に2ヶ月ごとに誕生日が来てるんだな。なんか凄い奇跡が重なってるな。


「ソフィーはどう思う?」


「ん〜それがいいとおもう!」


そうは言ってるけど………絶対分かってないよね。だって話を聞いてた時ぽへぇ〜って顔だったし。


「ほらね! ナギサ様ソフィーちゃんの誕生日は7月で良いですよね!」


「そうね、ソフィーもいいって言ってるし7月にしましょうか」


「やったーー!!」


ふふっそんなに喜んじゃって。最近は少し大人びてきたかなって思ったけどまだまだお子様ね。


「さて、そろそろ区切りも良いしお風呂に入りましょうか」


「やった〜! 久しぶりのナギサ様とのお風呂〜準備してきま〜す!」


そう言うとユキちゃんはぴゅーと走って行ってしまった。


「あらあら、それは私の仕事なのに。奪うのは良くないわ〜」


そしてそれに何故か納得がいってないセラが空間魔法で一瞬にしてお風呂場に消えていってしまった、セラも大人気がないわぁ。ユキちゃんもまさかセラがここまで躍起になるなんて思ってもしないだろうに。お風呂場に不穏な空気が流れなければ良いけど。


「ナギサ様、私達はゆっくり行きましょうか」


「そうね〜ソラちゃんはちゃんとしたお姉さんで助かるわ〜」


そう言うとソラちゃんは少し顔を赤くし恥ずかしそうに顔を下に向けてしまった。


「えへへ、私はナギサ様が大好きですから!」


「ふふっ私もソラちゃんのこと大好きよ」


「ーー!?」


私がそう言ってソラちゃんのことを包み込むとソラちゃんの頭からプシュ〜という音が聞こえて水蒸気が上がってしまった。あらあら、ソラちゃんには少し刺激が強すぎたかしら?


「ソフィーもままのことだいすき!」


それを見ていたソフィーも私を真似して私に抱きついてきた。

あぁ♡可愛い♡


「じゃあ行きましょうか」


「は、はい!」「うん!」


ふふっ久しぶりに家族全員で入るお風呂、楽しみだわ。

何か忘れてるような気もするけど………忘れるくらいだから重要な事じゃないしほっといても大丈夫だね。




「ぐぅ〜………」


◇ ◇ ◇


お風呂場に入ると不穏な空気が流れていた。なぜって? それは………


「なんでセラさんがいるのよ!?」


「だってお風呂を準備するのは私の仕事ですので、いるのは当然でしょう?それに、それを言うならなぜ貴女こそいるんですか?」


はぁ、やっぱり私の予想してた通りになった。ユキちゃん、元気なのは良いけどすぐに他の人に喧嘩を売っちゃうのがなぁ。まぁ今回のはムキになったセラも少し悪い気もするけど。


「こーら! せっかくのお風呂なんだから仲良くしなさい!」


「ひぅ…」「すみません……」


二人に雷を落とすと二人は一気に静かになった。


「今回は二人とも悪いわ。ユキは毎回セラがお風呂の準備をしていることは知っていたでしょ? ソフィーのための頑張りたいって気持ちはわかるけどもう少し考えてから動きなさい」


「はい……すみません……」


私がそう言うとユキちゃんは子犬みたく縮こまってしまった。


「セラもよ、確かにお風呂の準備をするのは貴女の仕事よ。けど少しくらいは可愛い後輩のために譲ってあげても良かったんじゃない?」


「はい……配慮が足りませんでした………」


はぁ、言いたいことは言えたけど………せっかくの楽しいお風呂の雰囲気が台無しだわ。これだからお説教とかはしたくないのよ。


「まま! さむいからはやくはいろ!」


「……ふふっそうね! ほらみんな早くお風呂に入るわよ、一番ちっちゃい子に負けてて恥ずかしくないの?」


大人の私たちが静寂に包まれていると下からその静寂を打ち破る元気な声が聞こえてきた。下を向くとすでに服を脱ぎ終わってスッポンポンの状態のソフィーがいた。

ソフィーが意図して声をかけてくれたのか、それとも単に早くお風呂に入りたかったのかわかんないけどこのおかげで明るい雰囲気に戻すことが出来た。




「ナギサ様、今日は私がソフィア様のお髪を私が洗ってもらって良いでしょうか?」


私が湯船に浸かっているとソフィーとさっきからずっと一緒にいたソラちゃんが話しかけてきた。別にそんな事に許可を取りに来なくても良いのに。やっぱり真面目なんだなぁ。


「大丈夫よ、しっかり頼むわよ


「ーー! はい!」


そう言うとソラちゃんはソフィーの手を取って髪の毛を洗い始めた。こう見ると少し歳の離れた姉妹みたいで可愛いわね♡


「ユキちゃん、貴女はダメよ♡」


私の背後からゆっくり気配を消してソフィーに近づこうとしているユキちゃんを私の特別な力で止める。


「うぐっ………」


近づけないと分かったユキちゃんは諦めて湯船に浸かり始めた。


「ナギサ様、少し宜しいでしょうか」


「どうしたの?」


「先程はすみませんでした。最年長者としての自覚が足りませんでした」


そう言うとセラは申し訳なさそうに頭を下げた。


「そうね、確かにさっきは少し自覚が足りなかったわね。けど……セラの人間っぽいところが見れて私は嬉しかったわ」


「すみません………」


もうっ! せっかくいつもの雰囲気に戻したのにセラがそんなんじゃまた暗くなっちゃうじゃない!


「じゃあ今日は罰として………私がセラの髪を洗ってあげるわ!」


「へっ!?」


「拒否権は無いわよ! さっ行きましょう!」


「………はい!」




その頃…………一人残されたエリンはというと


「あれ? みんなどこ行ったのー!?」


目が覚めて暗い部屋に一人取り残されていた。

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