第26話 到着

「ソフィー起きて、朝だよ」


「…………ふわぁ〜、おはよ〜」


出発する1時間前にぐっすり寝ているソフィーを起こす。ソフィーは最近起きたら顔を洗う、歯を磨く、着替える、のルーティーンが出来始めてきて、私に言われなくても1人で出来るようになってきた。最近はソフィーの成長が著しいから親からしたら嬉しい限りだよ。


「顔洗ってくる〜」


「は〜い、お洋服はママが準備してるから歯も磨いておいで」


「わぁった〜」


ソフィーが眠そうに目をこすりながらベッドから降りて洗面所に向かう。洗面所に向かうソフィーを見送って荷物入れから今日着る洋服を取り出す。


〜〜〜1分後〜〜〜


「ママぁ、しあげやって〜?」


「はいよ〜、じゃあこっちおいで」


顔を洗ってきたソフィーが歯ブラシを持ってリビングに戻って来た。歯磨きの仕上げはまだ私がやっている。ソフィーは「1人でできるよ!」って言うけど………ソフィーを見るとちゃんと奥まで磨けてないんだよね、まぁ子供あるあるだよね。そんなソフィーもとびっきり可愛いんだけどね!!


ソフィーをベッドに寝かせて膝枕をする。

そして歯磨きの仕上げをしてるとあることに気がついた。


「あれ? ソフィー手前の歯、グラグラしてるね」


「んぁー?ほーなのー?」


「そうだよ。あっ歯が抜けたらちゃんとママに教えてね?」


「はぁぬえちゃうのぉ?(訳:歯、抜けちゃうの?)」


「そうだよ〜けど安心してね。今生えてるのは子供の歯で、子供の歯は抜けるようになってて、子供の歯が抜けると今度は大人の歯が生えてくるからね」


「ほぇ〜ほーあんだ〜」


そっかぁ、ソフィーももう歯が生え替わる年頃かぁ。だんだん大人になってっちゃうなぁ。まだまだこんなに小さいのに。そうだ、抜けた歯はちゃんと取っておかないとね。ソフィーの成長の証だからね!


「はい、おしまい!うがいして来な」


「あいあお!」


仕上げを終わらせるとソフィーはぴょんと起き上がって洗面所に走って行った。さてと、私も着替えないとな。


◇ ◇ ◇


「ナギサ様!ソフィア様! おはようございます!」


「おはようユキちゃんって、その髪どうしたの?」


部屋を出るとちょうど隣からユキちゃんが出て来た。そしてなぜかユキちゃんの髪は寝癖がついたままだった。ソラちゃんがよく寝癖をつけたまま起きてくるのはあったけど、ユキちゃんが寝癖のままなのは珍しいなぁ、なんて思ってると………


「こらー!!!」


ユキちゃん達が寝てた部屋からそんな声が聞こえて来た。そして声が聞こえて来てすぐにが部屋から出て来た!?


「お姉ちゃん!私のイメージ下げるようなことしないでよ!」


「ちぇ〜面白いと思ったんだけどなぁ」


そう言うと目の前のユキちゃんの髪が光り出して金髪から銀髪になった。これは…………あれか、私がソフィーのしてることと同じことをしたのか。


「改めて、おはようございます」


「おはようソラちゃん。それはそうと髪、直してきてね」


「は〜い」


まったく、いつもあれほど言ってるのに。


「ナギサ様、ソフィア様、おはようございます」


「おはよう、セラ。あれ、エリンは?」


後ろにはいつの間にかセラが立っていた。そしてなぜかエリンの姿が無かった。もしかしてまだ寝てるの?


「あぁ、エリンは馬の世話に行きましたよ」


「…………!? ほんと!?」


「はい、私より早く起きて、『馬の世話してくる』という置き手紙がありました」


あの面倒くさがり屋のエリンが……………自らの意思で馬の世話を?出張の成果が出たのかな?まあいっか。


「じゃあ朝ごはん食べて出発しようか」


そして私達は食堂に向かった。


◇ ◇ ◇


朝食を食べ終えて馬車の揺られること6時間、目的地に着いた。

ここには私たち以外にも別荘を建てている人がいっぱいいる。わかりやすく言うと日本の軽◯沢みたいな所。違うところと言えば、この目の前に広がる“海”かな。ここは目の前には海、街の真ん中には大きな川、そして街の後ろ側には山が街を覆うように囲っている。


そしてこの街がなぜ避暑地と言われているのか、それは………………この街全域を覆う“特殊結界”が関係しているの。ここの結界は気候、温度、季節に応じて自動で温度調節が行われて常に過ごしやすくなってるの。


ん? なんで王都とかでやらないのかだって?そりゃぁ、規模が大きすぎて大変だからだよ。私も人から聞いただけで詳しくは知らないんだけど、実際に王都でやろうとしたら広すぎて結界が張れなかったんだって。


「ソフィー、ソフィー、着いたよ」


「うぅ〜ん…………わぁ!!」


ソフィーを起こして馬車の窓から外の景色を見せるとソフィーは街を、遥か彼方へ広がる海を目をキラキラ輝かせていた。ふふっ、こんなに喜んでくれるなんて、来た甲斐があったよ。


そして馬車は山を下って私たちの別荘へ駆けて行った。

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