第24話 夏、到来

「ママ〜暑い〜」


仕事部屋でいつも通り仕事をしていると暑さのせいでぐで〜っとしているソフィーが話しかけて来た。今年は例年よりも暑くなるのが早くて市場とかでもかき氷や冷たい料理が出回っていた。


「そうねぇ〜。そうだ、キッチンにアイスあるから食べて来ていいよ」


「歩きたくない〜だっこぉ〜」


「まったくもう、ほら行くよ」


暑さで動こうとしないソフィーは両手を広げて抱っこのポーズをしてくる。絶対自分で歩いた方が抱っこされるよりも涼しいと思うんだけど…………まあいっか。


ソフィーを抱っこしてキッチンに向かう。キッチンにある冷蔵庫モドキから試しに作ってみたアイスクリン(練乳、牛乳、卵黄を使ったアイスの原型)を取り出す。アイスクリンは軽い食感で作るのも簡単で、こっちの世界でも貴族や裕福な家ではよく作られるらしい。(庶民には高級品)


「どう美味しい?」


「うん!!甘くてひんやりしてておいしい!」


気に入ったのかソフィーはアイスをパクパクと口に運んでく


「こらこら、そんなに急いで食べたら…………」


「うぅ〜あたまキーンってする〜」


ソフィーはスプーンを動かす手を止めて頭を抑え始めた。アイスは冷たくて美味しいけど、頭が痛くなるからなぁ〜。なんかこれを防ぐ方法があるのは聞いたことあるけど、本当に聞いたことあるだけだからなぁ。


「あーーなんか食べてるー!!」


ソフィーの頭を撫でていると食堂の入り口から暑さを吹っ飛ばすような元気な声が聞こえて来た。


「ユキちゃん、セラのお手伝いは終わったの?」


「うん!終わって着替えて来たところ!」


確かに朝は黄色のワンピースを着ていたけど、今は涼しそうな水色の服を着ていた。


「じゃあ冷蔵庫にデザートあるから食べていいよ」


「やった〜!ナギサ様の美味しいデザート♡」


ユキちゃんは嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねながら冷蔵庫に向かっていく。


「その前に、ソラちゃんとセラ、呼んできてねぇ〜」


「ええ〜〜〜〜〜やだぁ〜〜〜〜〜〜〜」


「じゃあデザートは無しだよ」


「うぅーーナギサ様のイジワル………………」


そこまで言うとユキちゃんは渋々冷蔵庫から手を離して食堂を出て行った。こうでもしないとあの2人はぜっったいに休憩を取らないからね。セラは性格でわかってたけど、ソラちゃんは去年の夏に無理して倒れた前科があるから。


にしても今年はかなり暑いなぁ………………今年はソフィーもいることだし、早めに避暑地に行った方がいいかなぁ。ちょっと後でセラと相談するかぁ。


◇ ◇ ◇


「おいしかったぁ〜」


アイスを食べ終わったソフィーは幸せそうな顔を浮かべて私の膝の上で気持ちよさそうにしていた。ソフィーはセラから冷えたタオルをかけてもらって涼しいかもしれないけど、体温が高い子供を乗せてる私はアイスの冷たさがソフィーに相殺されてちょっと…………暑い。


ちなみに今は寝室に戻って来ている。


「ナギサ様、お話とはなんでしょうか」


「えっとねぇ、来週あたりくらいにに行こうと思ってるんだけど、どうかな」


「あぁ…………良いと思いますよ。でしたら早速準備いたしますね」


「ゆ、ゆっくりでいいからね?また無理されて倒られちゃうのは嫌だからね?」


「ふふっありがとうございます。けど今年は大丈夫ですよ」


そう言うとセラは微笑んで部屋を出て行った。去年は私が早く行きたいと言ってセラに無理をさせちゃってセラを倒させちゃったんだよね。今年はセラだけじゃなくてユキちゃんとソラちゃんもいるから大丈夫そうだけど………………最悪はエリンをこっちに転移させて手伝って貰えばいいか。(現在エリンは長期出張中)


「ママ〜あそこってどこぉ〜?」


ずっと膝の上で蚊帳の外だったソフィーが聞いてきた。


「えっとね、あそこっていうのは暑い時期を涼しく過ごすためのもう一個の家がある場所で、夏は毎年そこに行くんだよ」


「へぇ〜とおいの?」


「う〜ん、馬車で1日くらいだから……………ちょっと遠いかなぁ」


「ふ〜ん………楽しみだね!」


「そうだね」


◇ ◇ ◇


あれから一週間が経った。

4人で頑張ったおかげで荷物の整理も早く終わって避暑地の家に送る事ができた。これで後は私達が家に向かうだけになった……………………はずだったんだけど、ここで問題が起きた。それは


エリンがいつ帰ってくるかわからないということだった。

エリンを出張に送り出してはや1ヶ月、もうそろそろ帰って来てもおかしくない。それを知らせるお菓子がエリンの出張先からつい先程届いたのだ。


「うぅ〜ん…………」


「ナギサ様、どうしたんですか?」


エリンをどうするか悩んでいるとソラちゃんが話しかけて来た。相変わらずソラちゃんは髪がボサボサだった。


「エリンが帰って来そうなんだけど、どうしようかなぁって」


「あぁ〜……………じゃあ1人で来て貰えばいいんじゃないですか?エリンさんだったら本気で走れば半日くらいで着きそうですし♪」


ソラちゃんは笑ってるけど、本当に半日で来そうなんだよねぇ。あのフィジカルお化けは。


「……………そうしましょうか。それにそろそろ私やセラがいなくても1人で生活できるようになってもらわないといけなかったし、ちょうどいいか」


よし、決めた。出発は明日!


エリンは……………その時考える!

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