第44話
王国騎士団は、マジ―ン王弟のいる王都、”パンデモ”に逃げ込んでいた。
ワイバーン騎士団員は、防御障壁のため王都に入れず自分の領地に逃げている。
救援のない攻城戦に勝ち目はない。
ワイバーン騎士団員の領兵の救援を期待した籠城戦になるだろう。
救援に来るのなら、だが。
アジ―ン王たちは、来るか来ないかはわからない救援の兵が来るまでに、王都を攻略する必要があった。
シュパパパパン
圧縮空気の音が響く。
飛行艦、
キキキキキキン
二基、四門の大砲から撃ち出された鉄の杭は、王都、”パンデモ”の防御障壁に命中。
甲高い音を出しながら跳ね返された。
「効かないかあ」
カイトがあごに手をあてながらつぶやく。
「ええ、”パンデモ”を五百年間守って来た障壁ですもの~」
アルテがカイトのつぶやきに答えた。
少し離れたところを飛んでいた、”アッシュオブイグドラシル”も同じ大砲を撃ち込んでいる。
やはり甲高い音と共に跳ねかえされた。
当たった部分に、”防”と魔術文字が白く光り浮かび上がる。
「ふうむ……城門はどうだろうか」
カイトが、城の南北にある大きな門を見た。
「障壁はないですわあ」
アルテだ。
障壁があると、ワイバーン騎士団と同じように誰も中に入れなくなる。
二階建てくらいの高さの城壁。
それと同じ高さの分厚そうな鉄の
「アレをやるかあ」
カイトが少し考えた後、
「アッシュオブイグドラシルに無線をつないでくれ」
無線手に言った。
アッシュオブイグドラシルの艦橋の下にある甲板。
そこに設置された二基の大砲から、鉄の杭が四本撃ち出された。
基本、
やはり甲高い音と共に跳ね返される。
「効かないねえ」
シャラフィファンはあごに手をあてた。
ジリリリン、ジリリリリン
「お頭あ、若頭から無線です」
「つないどくれ」
シャラフィファンは無線のマイクを手に取った。
「シャラフィファン艦長、
「相談したいことがあります」
カイトが無線に話しかける。
「…………カイト?」
「カアチャンと呼びなっ」
シャラフィファンの無線の声が
「他人行儀なあ」
「そうですぜ、若頭あ」
後ろの男たちの声も聞こえた。
「…………くっ」
カイトが苦し気に息を吐いた。
「ぷっ」
隣に座るアルテが思わず噴き出す。
「……シャラフィファン閣下」
カイトは気を取り直して言った。
シャラフィファンは、現シルルート女王の姉に当たるのである。
「カアチャンだっ」
無線から聞こえるゆずらない声に、
「まあっ」
くすくすとアルテが肩をふるわせながら笑い始めた。
艦橋のクルーもプルプルと笑いをこらえているようだ。
「……カアさん、城門にアレをやりましょう」
海賊得意のアレだ。
「は、ははは、アレかい」
「空軍なんてお上品なもんに入ったけど、変わってないねえ」
シャラフィファンが感慨深そうに言う。
「アレって何ですの~」
アルテが聞いた。
「飛行艦の
「飛行艦の
母子の声が二つの艦の艦橋に響いた。
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