第5話

 夜が明けて次の日である。


「軍本部に連絡しました」

 カイラギの前にいる背の高い女性とメイドに声をかけた。

 ”アルテ”と”リリス”がソファーに座っている。


「アルテ様はの王家の方なのですね」

 カイラギが確認した。

 

「はい、第一王女になります」

 アルテが答える。


「これから本艦は、”皇立魔術学園”のある都市、”フラワーポッド”に向かいます」



 ここは、”ハナゾノ帝国”。

 東にイグノット海。

 西にシェルダの森。

 北には白眉はくび山脈。

 南には、”マジワリの森”。

 ”マジワリの森”を超えると魔族の国があると言われている。


”皇立魔術学園”は、”マジワリの森”の近くにある都市、”フラワーポッド”にあった。

 ”皇立魔術学園”はその名の通り、魔術や魔族、魔獣や瘴気を研究する学園である。

 ”マジワリの森”には沢山魔獣がいて、過去に度々、大暴走スタンピードを起こしていた。


 魔族や魔獣研究の最前線を走る学園である。

 さらに、飛行船の開発と研究も有名であった。



「はいです~」

「わかりました」

 アルテとリリスが魔術学園に向かうことを了承した。



 グルルル


「大きな船ですね~」

 今、カイラギとアルテは三段飛行艦の一番下、飛竜用の竜舎にいた。


 目の前には、グレーターワイバーン。

 大きさは中型のトラックくらい。

 脇に二人乗り(タンデム)用のくらが外しておいてある。


 巨大な運搬用エレベーターが、一段目の飛行甲板まで貫通している。

 本来なら二段目は、飛行艇用の格納庫だ。

 ブリッジは二段目の前方にある。

 今二段目は、作業場兼、補給物資の倉庫になっていた。 

 艦の中央には重厚な装甲をしたシタデル構造。

 前と後ろは大きな扉で開閉式である。

「ええ、”補給工作飛行艦、朧月おぼろつき”と言います」

「元は、三段飛竜飛行艇空母でした」

 老朽化して旧式化したため改造されていた。


「まああ、大きくて凄いですわ~」

 グレーターワイバーンの鼻先を撫でながら周りを見渡した。

 H型の鉄骨。

 最大六騎の飛竜の運用を想定されていた。


「しかし魔獣ですよね」

 カイラギが、ワイバーンを見た。


 グルウ


「……姫様が、”肉体言語(物理)“で屈服テイムされたのでございます……」

 リリスはグレーターワイバーンの尻尾がのを見ながら言った。


「マカロンちゃん、いい子、いい子~」

 アルテはグレーターワイバーンの鼻先を優しく撫でている。


「艦長、”フラワーポッド”が見えてきました」

艦橋ブリッジに来てください」

 艦内放送が鳴った。

 壁にある伝声管の蓋を開けた。


「了解、すぐに向かう」

「目的地が近づいてきました。 ブリッジに来てくれますか」

 カイラギが二人に聞いた。


「わかりました~、いい子でいるのですよ~」

 ワイバーンがコクコクと首を縦に振る。

「姫様……」

 リリスがその様子を少し呆れた目で見ていた。


 ーーしかし、ワイバーンは凶暴な魔獣だったような……

 カイラギが不思議そうに小首をかしげた。

 


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