第21話
「大隊長、前方、グレーターワイバーン一騎、旗は雪の結晶」
「アルテ王女ですっ」
白い飛行服にポールアックス。
その柄には旗がくくりつけられている。
アルテ王女のグレーターワイバーンの後ろには、重装甲の飛竜と鉄の鳥の様なモノ(飛行艇)。
さらにその後ろには鉄の巨大な船が空に浮かんでいた。
「くっ」
先頭を飛んでいる大隊長だ。
Ⅰ―Ⅰと肩に書かれている。
ワイバーンライダーは、戦闘機のパイロットと同じようにエリートである。
高い倫理観を持っている。
「王陛下をハーレム入りさせた亜人っ」
現在、マジ―ン王は、”マユキハーレム”のハーレムマスターだ。
「さらにっ」
先日、飛行艦、
魔力が見える人魔族には、艦全体にピンク色のハートが舞っているように見える。
「う、うわあ」
Ⅳ―Ⅲの女性騎士も少し引き気味である。
「
「全騎攻撃開始っ」
大隊長が叫びながら、真っ先に突撃していく。
リリスがやってしまったようだ。
◆
「待ってください~」
アルテは、氷の結晶の旗のついたポールアックスを必死に振った。
後ろには、飛行艇と飛竜がホバリングで待機。
が、Ⅰ―Ⅰと書かれたワイバーン騎士が、アルテを横目でにらみながら飛び過ぎていく。
ファイヤワイバーンが三角形。
その後ろに、ブラックワイバーン。
ひし
「艦長、左舷からワイバーンの急降下爆撃、来ますっ」
「全艦対ショック姿勢っ」
カイラギが指示を出す。
イイイイヤアアアアアア
急降下爆撃中のブラックワイバーンの翼端は、”ワイバーンの鳴き声”という独特の風切り音を出すのだ。
進入角度、約三十度。
ゴオオオオ
ファイアワイバーン三騎のブレスが艦の表面をあぶる。
ブラックワイバーンの口の周りに複雑な魔法陣が回る。
開いた口の前にはかぼちゃ大の火炎の弾。
ボッ
ドオオオオン
着弾後爆発。
ガガガガガガ
艦が大きく揺れた。
「くう、艦の損傷軽微っ」
被害報告が来た。
第Ⅰ小隊は艦の下に飛び去る。
◆
アルテの横を第Ⅱ小隊が、斜めに騎体をひるがえし降下。
「ああああ」
「ま、まってくださ~い」
グレーターワイバーンはブレスは吐けないが、体は大きく俊敏である。
バッ
アルテが追いかけ、すぐ追いついた。
「させませんよ~」
右手はワイバーンの手綱。
開いた左手に可愛らしい雪ダルマを作成。
ブラックワイバーンにぶん投げた。
ドゴオッ
鈍い命中音。
アギャアアア
ブラックワイバーンがきりもみ状態で落ちていく。
◆
第Ⅲ小隊が降下。
「今行くっ」
サクラギの駆る飛行艇、”ネコジャラシ”が第Ⅲ小隊の後をついていく。
機体の左側につけられた、”ニードルスプレッド
圧縮空気で金属の杭を連続で撃ち出すものだ。
セーフティを解除。
十字のレティクルの前には、ファイヤワイバーン。
さらに、その先には艦の外部通路で小銃を撃っている艦のクルー。
ファイヤワイバーンが、クルーにブレスを浴びせようとしている。
「させないっ」
シュパパパ
連続で撃ち出された杭がファイヤワイバーンの翼をズタズタにした。
しかし、
ズドオオン
「艦長、左前方のティルトローターに直撃」
「プロペラ破損っ」
ブラックワイバーンのブレスが直撃したのである。
◆
「小隊長っ」
Ⅳ―Ⅲをつけた女性騎士だ。
次は、第Ⅳ小隊の
「くうう、アルテ王女……」
「……待機だっ、この場で待機っ」
第Ⅳ小隊の隊長が叫ぶっ。
「了解っ」
少しうれしそうな女性騎士の声。
「「了解」」
他の小隊員も待機した。
◆
「ああっ」
カイラギが
第Ⅰ小隊のブラックワイバーンだ。
口には火炎の球。
このままでは
無事では済まない。
バッ
黒い影が間に入った。
「スキル、”大楯”っ」
竜騎士の”ギルモア”と飛竜、”ピーテッド”だ。
前にかかげた畳のような大盾に光の壁が出る。
ドオン
ブレスの爆発を盾で受けた。
「墜ちなさいっ、
ゴオオオオ
飛行艇、ネコジャラシが飛んでくる。
ネコジャラシの後席からリリスの魔法が飛んだ。
アギャギャ
雷に打たれて、ブラックワイバーンが墜ちていく。
◆
「艦長、艦に火災発生っ」
「ダメージコントロール、火を消せっ」
艦の周りは複数のワイバーン。
――どうすればっ
カイラギが歯をかみしめた。
眼下には黒い煙を出しながら燃えている鉄の船。
その周りでアルテ王女も何度か攻撃を受けていた。
「隊長っっ」
第Ⅳ小隊の女性騎士である。
「ええいっ、これより第Ⅳ小隊は軍より離れる」
「降下っ、アルテ王女を援護せよっ」
第Ⅳ小隊長が叫んだ。
「はいっっ」
「はは、了解」
少し投げやりなⅣ―Ⅱの隊員の声。
「私は離脱させてもらう」
第Ⅳ小隊のブラックワイバーンが離れて行った。
「第Ⅳ小隊、命令違反だ、軍法会議だぞっ」
大隊長が叫ぶ。
「艦長、消火に成功しましたっ」
第Ⅳ小隊の援護でワイバーンの攻撃が緩んだからだ。
その時である。
「義姉上っ、ご無事でしたかっ」
広域無線から少女の声がした。
黒い三羽の
イーズナとクファルカンの里のシノビ二名が到着したのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます