第30話

「ニャンドロス神聖王国、女王、ヒミャコ・クロじゃっ」

 黒いネコミミ、二股のネコシッポ。

 巫女装束を着た黒髪の美少女が言った。


「アルンダール王国第一王女、アルテアレ・アルンダ―ルです」

 白髪、緑色の目の大柄な女性がぺこりと頭を下げた。


「アルンダ―ル王国第二王女、イーズナ・アルンダ―ルです」

 黒い髪にかっ色の肌。

 ダークエルフのハーフの為、少し耳がとがっている。


「ハナゾノ帝国空軍少佐、飛竜飛行艇三段空母、朧月おぼろつき艦長、カイラギ・カイトといいます」

 茶髪で茶色い目の男性がぴしりと敬礼した。

 ちなみに、カイラギは平民だが軍の少佐は、男爵と同じあつかいになる。

 平民では、王族の謁見や警護などで支障を来たすからだ。

 

 ここは、ニャンドロスの王都、神社、”お松大権現”の謁見の間である。

 ヒミャコの後ろには、ハイケットシーと他種族の宰相や文官が並ぶ。


「今、アルンダ―ルは王弟殿下のクーデターで国が乱れております」

 アルテアレが正直に言った。

「姫様っ」

 正直すぎるアルテの言葉にリリスが慌てたように声を挙げた。

 イーズナは、アルテを信頼しているのか黙ってうなずいた。


 実際、王都は制圧され、王は北にあるユキメの里に避難している。

 また王都から亜人が追い出されたとも聞く。


「私達を助けてほしいのです」

 アルテが言う。


「うむうむ、聞いておるぞ、その王弟とやらは亜人を嫌っておるのじゃろ」

「まあ、アルンダ―ルは、カツオブシとマタタビの産地」

「助けるのに文句はないなあ」

 ヒミャコは、チラリと横にいるタマ・ミケを見た。


「はい、女王様、その二つは重要な軍事物資」

「アルンダ―ルのクファルカンの里でしか作れません」


「発言の許可を」

 カイラギだ。


「ん? そなたは?」


「瘴気の森の向こうから来た人族です」

 カイラギだ。


「飛行艦とやらでじゃな、奴隷商人がたまに乗って来て目障りじゃっ」


「私の隣の国で、たくさんカツオブシが作られています」


「ほほう、……つまりカツオブシを輸入することが可能だと」

 タマ・ミケが顎をさすりながら言った。

 カツオブシが増えると、単純に空中移動要塞神社の稼働率が上がる。

 ネコ達がイタズラに戦争をするとは思えないけど。


「一度、国同士で話しあってみてはどうでしょうか」

 カイラギは外交の権利も持たされている。


「ふむふむ、我が国に十分、利益がありそうじゃのう」

「そうですね、女王様」

 タマと周りの文官が頷く。


「よかろう、ニャンドロス神聖王国ネコ女王ケットシークイーン、ヒミャコの名において、そなたたちを助けようぞ」


「ありがとうございます」

 アルテ達が頭を下げた。


 アルテ達王側に、ニャンドロス神聖王国が味方についたのである。

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