第14話
カイラギは艦長席のひじ掛けの横に吊るされた、艦内無線用のマイクを取った。
平型艦橋の四角い窓の先には、三段目の飛行甲板の先と、うっそうとした森が広がっている。
”マジワリの森”だ。
カイラギが四角いマイクの横のボタンを押した。
ブツッ
「告げる、こちら艦長」
「あと少しで、”マジワリの森”の上空に進入する」
艦の後部にある機関室。
太いシャフトが物理術式陣を光らせながら回る。
機関士たちが屋根のスピーカーを見ていた。
「マジワリの森は魔の領域だ」
「我々が初めて入ることになるだろう」
三段目の飛竜舎。
グレーターワイバーンが身じろぐ。
竜騎士が相棒の竜の鼻先を黙って撫でた。
「様々な困難に遭遇するかもしれない」
「しかし、魔族の貴人を送り届ける使命がある」
二段目後部、飛行艇格納庫。
整備士たちが手を止めて放送を聞く。
サクラギが愛機である、”ネコジャラシ”を見上げた。
リリスが側にいた。
「皆が無事祖国に帰って来れることを願う」
カイラギが隣に座るアルテに振り向いた。
アルテが小さくうなずく。
「……”マジワリの森”に突入せよ」
「「「「了解」」」」
ズズズズズズ
重低音を響かせながら、巨大な飛行艦が森の上空に突入した。
◆
飛竜飛行艇三段空母、
森の所々に黒いもやのようなものがある。
瘴気もしくは魔力だまりと呼ばれるものだ。
魔力とは魔の幼女神、”ルルイエ”が竜の女神、”龍華”の世界を書き換えようとする力である。
瘴気を浴びることで普通の獣が魔獣になるのだ。
これは人にも影響は大きい。
瞳孔が羊のようになったり、下半身が蛇になる例もある。
「魔力だまりは回避だ」
「木よりも高い所を飛行せよ」
カイラギが指示を出した。
木よりも高く瘴気は上がらないようだからだ。
「何か森の中に目印のようなものはありますか?」
カイラギがアルテに聞く。
「そうですね~、まずは森の中の湖を目指してください~」
アルテが答えた。
「湖ですか?」
「はい~、セイレン湖です、その湖から流れる川があります~」
「その川は、アルンダールまで流れて~」
「隣国のニャンドロス神聖王国との国境になっていますね~」
「ニャンドロス……?」
「強力なケットシー《ネコ型獣人》の国です~」
「川沿いに飛ぶとアルンダ―ルにつきますよ~」
「分かりました、見張りに伝えます」
とりあえず森の中の湖を探すことになった。
セイレン湖の名の通り、そこにすむ生物が事件を起こすことになるのである。
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