第11話
カイラギとアルテ、リリスの三人は、昼食を食べるために魔術学園の学食に来ていた。
カイラギとアルテは、から揚げ定食(←アルテは大盛り)。
リリスは、チャーシュー麺。
四人掛けのテーブルに、アルテとリリスが並んで座る。
アルテの正面にカイラギが座った。
「あと少しで、艦の改修が終わりますね」
飛行艦、”
”補給工作艦”から元の、”飛竜三段空母”へ、である。
「はい、そうですね~」
アルテが大きな丼に入った白米を、上品に食べている。
白に近い銀髪を指であげた。
「そうですね、姫様」
ずずずずう~~
リリスが豪快に麵を
黒いひっつめ髪にホワイトプリム。
メイド服。
不思議と下品な感じはしない。
その時、後ろから女性の声がした。
「お、いたいた」
「相席いいか?」
空いている席、カイラギのとなりに、お盆に乗せられたカレーうどんが置かれた。
続いて見知らぬ女性が座る。
二十代半ばくらいか。
肩までの黒髪。
「えっ」
カイラギだ。
左目に白い眼帯。
「あらっ」
アルテである。
右腕に白い長手袋。
「姫様っ」
リリスだ。
眼帯と長手袋には細かな刺繍が施されている。
「ほほう、どれどれ」
びくりっ
長手袋をした右腕が、一瞬暴れるように跳ねた。
「魔族をコ〇せとうずいたか」
「確かに魔族だね」
「……聖女様、ですよね……?」
真珠のように白い普段使い用のドレス。
その胸には、教会のベルが金色の糸で刺繍されている。
「「?」」
アルテとリリスがわからないような顔をした。
「”金色のベル”は、―福音を鳴らす者― を意味していて、竜教会に認められた、”聖女”にしか身につけられません」
カイラギが説明した。
「そうだよ、オレの名は、”マガリ”っていうんだ」
びくりと動く右腕を抑えるように、ポケットから取り出したスキットルの蓋を開けてあおる。
多分ウイスキーか何かだろう。
「ふう」
「で、ちょっと失礼するぜ」
と言いながら左目の眼帯に手を伸ばした。
「あっ」
「むむっ」
アルテとリリスが魔力を感知。
リリスが、腰の
マガリが左目の眼帯を上にずらす。
瞳孔が横に開いたヤギの目だ。
一瞬、右目が金色に光り縦に瞳孔が開く。
「魔眼っ」
「姫様っ、右目は竜眼です」
「ええ」
リリス、アルテ、カイラギの順でゆっくりと見まわした。
「姫様、マーキングされました」
魔力でである。
魔眼で大まかな位置がわかるようだ。
「ま、アマリリス学長に頼まれたんだよ」
マガリが眼帯を元に戻しながら言う。
「お、……んん、わかったよ」
「ちょい、変わるぜ」
マガリがうつむいた。
「「「?」」」
スッ
とマガリが背筋を伸ばした
今まではどちらかというとだらしなさそうだった雰囲気が変わる。
マガリが、まさに、”聖女”の雰囲気をまとった。
周りの空気が神聖なものに変わる。
「
学食にいた誰かが言った。
「はじめまして、私は、”レイリア”と言います」
「えーと、
聖女は二重人格者だった。
「は、はあ」
余りの情報量の多さに反応が鈍る三人。
「さあ、食べましょうか」
つらつらと世間話をしながら昼食を再開した。
◆
マガリの父親は、名も知らぬ貴族。
母親は、その貴族に買われた魔族の女奴隷。
貴族の元を逃げ出して孤児院に。
”レイリア”の人格が神に与えられる前は、酒と煙草とツマミしか食べられない超偏食。
偏食を直すために、食事の時、”レイリア”の人格が出るのだ。
◆
「……
白い真珠の様なドレス。
そのドレスにはねたカレーうどんのツユ。
「あああ」
この世の終わりがきたような表情を浮かべる聖女様を見ながら、カイラギは小さくつぶやいた。
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