第35話

 魔術学園の応接室にローズ皇帝と関係者が集まっている。

 ローズ皇帝の机の前には、アルンダ―ルと肉球の紋章の入ったニャンドロスからの親書。

 ローズの手には細かい経緯が書かれた報告書。

 ギルモアが提出したものだ。


「ほほう、そなたがイーズナ第二王女か?」

 ローズが褐色の肌のハーフエルフを見ながら言う。 


「はい、アルンダ―ル王国よりきました」

「姉であるアルテアレを助けていただきありがとうございます」

 イーズナが答える。


「ふーん、ダークエルフとのハーフかい」

 ローズの隣にいたハーフエルフが言う。

 金髪青い目、耳が少し尖っている。

 見た目は二十代前半くらい。

 しかし、ハーフエルフの寿命は約二百歳。

 百六十歳くらいから緩やかに初老の見た目まで老い始める。


「……こちらの方は?」

 イーズナの隣にいたギルモアが聞いた。


「ああ、私は、”シャラフィファン・カイラギ” カイトの母だ」


「カイラギ艦長の御母堂様ですか」

 イーズナが驚いたように言う。


「そ、愚息が世話になったねえ」

 シャラフィファンがローズから渡されたギルモアの報告書をめくる。

「ふうん…………うん、決めた、イーズナ第二王女だったっけ」

 チラリとローズを見た。


「はい」


「今度はあたしがあんたを魔界に連れていってやるよ」

「あたしの海賊船、”アッシュ・オブ・イグドラシル”でね」


「いいのか?」


「ああ、大体ハナゾノに長旅に出られる大型艦が無いじゃないか」


 ハナゾノ空軍の主力は、”飛竜”と、”テンドロディウム”級を軽量、発展させた、”リリーマルレーン”級高速爆撃艦だ。

 レンマ王国から輸入した、”ムツキ”級飛竜空母は補給艦に改造している。

 元に戻すのに時間がかかるだろう。

 それに、奴隷売買をする西方の貴族と竜教会原理派が邪魔をしてくる。


「なあに、シルルートの東方の貴族も竜教会原理派と組んで奴隷売買してるんだ」

 ハナゾノの西の森をはさんでシルルート王国がある。

「協力するよ」

 シルルート王国の外部工作部隊ともいえる、”イグドラシル海賊騎士団”なのだ。

「しかも、竜教会の聖女様も来てくれるんだろ」

 胸にベルの紋章をつけた白い聖女服の黒髪の女性に言う。


「ああ、カイラギ艦長たちにマーキングしてるからな」

 眼帯をした目を指差した。

 竜教会の聖女、魔族とのハーフである、”マガリ”が言った。


「すまない」

 ローズ皇帝がすまなさそうに言った。


 ”シャラフィファン・カイラギ”率いる、”イグドラシル海賊騎士団”所有。

 可変後退翼を備えた海賊船、”アッシュ・オブ・イグドラシル”に、イーズナとギルモア、竜聖女である、”マガリ”。

 

 それと、つめる限りのを載せて 魔界に出発するである。

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