第34話
白い雲と雲の間を、二頭の飛竜と紅い飛行艦が飛ぶ。
「ローズ皇帝、魔界から部下の竜騎士と魔族の姫が帰ってきたとは本当ですか」
初老の艦長帽をかぶった男性が聞いた。
「……そうだ、いま学園都市にいるとの報告を受けた」
艦橋の真ん中にしつらえられた皇帝の椅子に座るローズ皇帝が言う。
いま、飛行艦は帰還の連絡を受けて学園都市に向けて飛行中である。
艦橋の丸い窓の外は崖のようにそそり立つ雲の壁。
雲の谷間を飛んだ。
「ん?」
外部通路で
白い雲の中に黒い陰りが見えたのだ。
即座に近くの伝声管を開いた。
「左の雲の中に何かいるぞっ」
「大きいっ」
次の瞬間、
ドウウウン
白い雲を突き破って飛行艦が現れた。
◆
ハーフエルフの国、”シルルート”独特のモノコックボディー。
暗めの灰色。
艦の前部にはデルタ翼。
特徴的な可変後退翼。
槍のような船体の半ばが、艶めかしくくびれる。
そのくびれの根元には、魔術式ジェットのエアインテークが開かれる。
その入口は警戒色のオレンジに塗られていた。
丸みを帯びた艦橋。
その根元の甲板には、二連装二門のニードルスプレッド大砲。
艦の左右には、南の砂漠の国で作られた、”呪符式火炎弾対空銃座”四門。
竜騎士を航空戦力に数えない(←ハーフエルフは竜と契約できないから)シルルートには珍しく後部に飛竜舎を設置していた。
※モデル:ナ〇ィアのニュー〇ーチ〇ス号
◆
大きさは、紅い飛行艦、”テンドロキラム”の二倍くらいか。
艦体の横には、”燃えて朽ちた大木”のシルエットの紋章。
「ローズ皇帝っ!!」
艦長がローズ振り返りながら言う。
「来たか……、”イグドラシル海賊騎士団”と」
「私掠艦、”アッシュ・オブ・イグドラシル”」
※私掠艦とは国公認の海賊船のことである。
「これが……」
「破壊工作や諜報を行う秘密特殊部隊……」
「シルルート女王の座乗艦、”クイーン・オブ・シルルート”の姉妹艦を駆る……」
「シルルート王国一の精鋭騎士団……」
ブツッ
「皇帝陛下っ、無線ですっ」
「艦橋に流せっ」
「来たぜっ、ローズ皇帝、久しぶりだなあ」
奇麗だがどこかドスの聞いた女性の声が無線から流れる。
「来たかっ、”シャラフィファン・カイラギッ”」
ローズが叫ぶ。
「ああ、うちの息子が世話になったなあ、魔界に行ってるんだろお」
「……そうだ」
「ふふん、話がある、ついて行かせてもらうぜ」
ローズ皇帝、座乗艦、”テンドロキラム”に並航して、暗い灰色の可変後退翼の飛行艦、”アッシュ・オブ・イグドラシル”が魔術学園までついて来た。
「ローズ皇帝陛下、彼女は一体」
艦長が聞いてくる。
「ふう、もとの名前は、”シャラフィファン・シルルート”」
「現シルルート女王の姉に当たる女性で」
「”カイラギ・カイト”の母親だよ」
ローズがため息交じりに言った。
ちなみに父親は、”カイラギ・ケント”。
ハナゾノ帝国で、優秀だが地味な文官をしている。
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