エピソード1【自分の一部】

わたしは一人で黙々と勉強していた。

「王子そろそろ勉強はその辺にして紅茶でもいいがですかな?」

「いい、大丈夫...」

わたしは素っ気なく返事をしただけど前のわたしなら返事すらしなかった。

わたしの世話係のロビーいつもわたしの事を第一に考えてくれている

大きな茶色い熊で一見怖そうなだけど全然そんなことないむしろ穏やかで

やんわりした性格だ。

「ですが王子、勉強するのも大事ですがあまり無理をされるのもお体に悪いですよ

少し休まれては」

そう言いながらロビーは山の様に積み上げた本のなかをくぐりながらわたしに

近づいたその時。

すうっバコンっパラパラパラ。

「しまった!」

ロビーが下にあった本に気づかないで足を踏み外してわたしの問題用紙と

参考書が床にばらまかれた。

「ああっ...ああっ...」

わたしはこうなると自分で止められない。

「王子、申し訳ありません!落ち着いて下さい!!」

「アアアアアっっうぅあぁぁぁぁぁぁあ」

わたしは昔からこうだ自分ではどうしようもない。

「完成させなきゃ!!完成させなきゃ!!完成させなきゃ!!」

わたしは床にばらまかれた問題用紙をかき集めたそれと同時に扉の向こうから重い

足音が聞こえた。

「何事だ、騒がしいぞ!!」

この国の王でありわたしの父上怖くもあり威厳と貫禄のある獅子の顔と牙そして黒い鬣。

「申し訳ありません!王よ私がついうっかり問題用紙をばらまいてしまいネロ王子が!

紅茶を入れて少し休ませようと思いまして」

「勉強させたいならさせてやれ後継者なら努力することは当たり前だ早くかたずけろ

私は忙しいんだ全く」

そう言って父上は出ていったわたしが昔からこういう発作が出てしまい

わたしの母上もわたしを産んだ時に亡くなった。

どこかわたしに冷い態度を取っているだけどわたしは雄だから次の後継者のために

色々、勉強や習い事をさせられてる

勉強や習い事は嫌いじゃないけど、父上の冷い瞳はたとえわたしが発作がなくても

目を反らしていただろう。

「王子私もお手伝いします」

ロビーと一緒に問題用紙をかき集める

わたしが唯一信頼してる相手は三人このロビーと城を守る憲兵団隊長、大鷲のジャック

そして。

足に矢が刺さっていたそして鮮血が流れてだんだんと水が部屋に流れて上がっていく。

「ごばぁぁっごばぁぁっ」

わたしは苦しくなっていくもうダメだ。

「おい...しっかりしろ...」

声が聞こえる‥。

「おい...しかっりしろって...」

ああ、思い出したこの声はわたしが尊敬する彼だ

その時黒い毛皮と黒い爪で覆われた手が伸ばされてわたしはそれに捕まった。

ばしゃんっ

「ぷはぁっゲホゲホっ」

「大丈夫か、ネロ?」

黒いオオカミの赤い瞳のたくましい彼だ。

バァっ

「はぁ、はぁ、夢か...」

わたしは起き上がったあれからわたしはたまに夢でうなされる時がある。

父上は内密に送られた暗殺者に殺されて跡継ぎであるわたしも、消そうとしたが隊長のジャック達がわたしだけでもと逃がしてくれて何とか、兵士達は追い払い

何人か残党を捕まえて情報を聞き出した所、叔父上が仕組んだ事だと分かり

叔父上は処刑された、叔父上の家族達はわたしに泣いて謝りもうこの国にもわたしの前にも姿を消すと言いわたしがジャックに頼んで極秘に国から逃がしてあげた。

それからわたしは当時は五歳だったがあれから月日が過ぎて

十三歳になった親兄弟も肉親も誰もいない。

「勉強でもするか...」

わたしはいつもの勉強をしたそれぐらいしかする事が無い。

ギイィっ

「おはようございます王子」

「おはようロビー」

ロビーが朝のあいさつに来た。

「おやまた勉強ですかな」

「今日は医学の勉強だよ」

この世界には魔法が存在する

炎・水・土・風・雷・草

のこ六種類だそして稀少な属性が二つ光と闇

わたしは光属性を持っているが回復魔法と強化魔法しかできなくて

わたし達ライオン族は勇ましさと風格のある見た目からも

攻撃に特化した種族だだけどわたしはあいにく、運動音痴だしあまり争い事もしたくない

昔からライオンじゃなくて猫みたいな弱々し顔つきと、呼ばれていた

「なあ、ロビー」

「どうされましたか?」

「わたしは本当は猫族なのか?」

わたしはロビーに問いかけた

「いえ!ネロ王子は立派なライオン族です」

ロビーは力強くこたえる。

「確かに丸く優しいクリっとした青い瞳白い鬣にライオン族とは思えない愛らしい顔立ち一瞬、雌かと間違えるほだですがそんな事ないですぞ」

「慰めになってないよ!!」

わたしは桃色のマズルを下に向けて涙目でうつむいた。

「もっもっ申し訳ありません褒めたつもりで」

「どこがだよ?」

「すみません...」

まあ、いいとりあえず勉強しよう今は何かに集中したい。

「あっそうでした王子に見てほしいものが」

「朝食なら、まだいいよ」

「いえ、縁談の申し込まれた姫君達の...」

「そこまで言わなくていい」

わたしはロビーにキッパリ言った。

「ですが王子あなたも未来の後継者、ちゃんと王妃を決めなければ」

「分かってるでもまだ先の話だろ」

いつかは結婚しないといけない時が来る分かっている、だけど今はそんなのに興味はない。

「成人してから考える」

「しかし王子会ってみるだけでも」

「それに、ロビーどうせわたしの権力目当てだろわたし自信の事は見てない」

わたしは自分の手のひらを見た爪はあるが猫みたいな頼りない自分の肉球

わたし自信を見たって誰も好きになってくれない、なぜならわたしは。

「ああ、そうでした忘れる所でした」

ロビーは胸ポケットから封筒を出した。

「レイ様から手紙が届いていましたぞ」

「何故それを早く言わない!!」

わたしはすぐさまレイの手紙が入った封筒を取ったそう

わたしが昔助けてくれた黒いオオカミだあれからわたしはもっとレイの事を知りたくて

城を抜け出してはこっそり会っていた、そして運良く出会いわたしはあの時嬉しかったけど、レイに危ないだろと怒られたっけ。

それからよく訓練された伝書鳩を使って文通した会いたい時は待ち合わせ場所を決めて

こっそり会っていた、ただ最近会ってくれなくなっていた

だけどこうして手紙をくれるだけでも嬉しい。

「ネロ王子はレイ様の事が好きですね」

「ああ、わたしの恩人であり尊敬する雄だ」

あの凛々しいオオカミの顔わたしがもし雌なら一発で惚れてるだろうな。

「レイ様も、もう十六歳ですな兄上のような方がいて私も嬉しいですよ

本当にレイ様には私も感謝しています」

「だけどここ数年会ってくれない何故だろう?」

わたしは疑問に思っただけどこうしてちゃんと手紙をくれる何か理由があるのだろう。

「なあロビー」

「何ですかなネロ王子?」

「人の手紙を覗き見るつもりか?」

「ああ、失礼しましたでは、ごゆっくり朝食ができましたら呼びますので」

そういってロビーはわたしの部屋を後にした。

「さてレイは今日はどんな事が書いてるのかな」

わたしは封筒を開けた。

『ネロへ

今までゴメンよどうしても傭兵の仕事が忙しくて』

レイは持ち前の腕っぷしの強さで傭兵をやっている本当にたくましいな。

『もし良かったら、いきなりだけど一週間後久しぶりに会わないか俺もお前に話たいことが

あるんだ返事待ってるよ

レイより』

わたしはその文章を読んだ時に急いで返事を書いた

そして伝書鳩に手紙を結んで放った。

「ああ、レイ楽しみだな」

わたしは早く一週間後になってくれと小さく願った。


国から離れた森の中...。


「ネロ、すまないだけどお前との友情を壊したくないし俺も続けたいんだ」

そこには全身黒いオオカミの影があった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る