エピソード21【シロイハナ(前編)】

「おや、これは...」

「ちょっと、トメさん!こんなべっぴんさん

何処で見つけたんだ!」

わたしはお風呂で汚れを落とし

風呂場のカゴに着替えを入れて貰ってたんだけど...。

これ、雌用の部屋着の着物じゃん!

トメさんと雑用係の雌の人がびっくりしてる

みたいだ。

「ちょっとトメさん達うるさいよ...

あれ?新入りかいその子?」

襖から綺麗な雌の人がやって来た。

「ちょっと聞いてよミヨ!

この子は雪華組の所で雑用してくれるって

言ってくれたんだけどね!

はじめはこの子すす汚れてて分からなかったんだけど、風呂に入れたらこんな可愛い買おしてたんだよ」

わたしはミヨと言われた人に顔を向けた。

「あんた...花魁に向いてる顔してるよ...

掃除係と言わずに一緒に

花魁で殿方の相手をしないかい?」

彼女は誘って来たけど、それだと

わたしが雄だとバレるし

自由に中を見てまわることが出来ない。

「ごめんなさい...わたし...

そういうのはちょっと...」

わたしは何とか断ろうとした。

「いいのかい?雑用より花魁の方が

稼げるよ、人気が出てきたらもつと…」

「トメさんやめてあげなよ、

あんたも私と雌のだろ、私もこの子の事

誘ったけど...私達は選べなかった時に

トメさんが救ってくれたけど。

この子はまだ選べる状況かんだよ、

雑用係でいいならさせてやりな」

そう言ってミヨさんはわたしを庇ってくれた。

「そうだね、選べるなら選ばせて

やらないとねゴメンね無理強いさせて。

だけど、あんた可愛いねぇ」

「まぁ、でもさトメさん

今は雑用係の人の方が少ないから

よかったじゃないか」

わたしって...そんなに雌に見えるのかな...。

「それで...あれ?ハナどうしたんだい?」

「なんでも有りません...」

わたしは涙目になりながら

襖を開いてその場を去った。

スゥッ

パタンッ

「あたし...何かやっちゃったかな?」

「トメさんが花魁に誘うから

怖くなったんだよ!」

「あー...あの子に悪い事したねぇ」

声聞こえてるけど、違うそうじゃない...

そもそも、雄のわたしが花魁に

誘われる事がわたしのメンタルにヒビが入った。


ガチャッ

「ネロ、どうしたの?レイちゃんの

呪いの手がかりは?!」

「今は後にしてそれより...」

わたしはレイの頭に手を置いた。

ファアアアア

光がレイの体を包み込む。

「ネロ...レイちゃんに何を?...」

ファアアアアン

さらに光が強くなる。

「待って!それ以上やるとあなた自身の体が...」

パァアアアアアン

レイを包み込んだ光が弾けた。

バァン

わたしは壁に叩きつけられた。

「ネロ!大丈夫なの?」

「大丈夫です...」

わたしは先生に手を貸して貰って

何とか立ち上がった。

「どうしてこんな無茶を?」

「今は直ぐに戻らないと行けないから

ちゃんと説明出来ないけど...

何とかレイの呪いを弱くさせて

体力も保つようにした、これなら

一週間は大丈夫だよ」

でも、わたしに出来るのはこれが

限界だ一週間後にわたしはなんとしても

レイの呪いを消さないといけない!。

「分かったあなたの考えがあるのね。

ヒロムさん達には私から

上手く説明してとくから

レイちゃんの為に行きなさい!」

「はい!」

後は先生に任せよう。

「ところでネロ」

「何ですか?」

「何で雌用の着物を着てるの?」

しまった、急いでたからこのままの

服装で来てしまった。

「いえ、これは...」

「素敵じゃない!起きたらレイちゃんにも

見せてあげて!」

「絶対いや!」


その日の夜...。


わたしは雪華組に行くまでに

住み込みで働く事になった。

まぁ、ここの雑用をこなして

慣れろって事なんだろうけど...。

「ハナちゃんお酒と食事の用意を!」

「はい!」

「ハナちゃんこっちの食器後でいいから

片付けて!」

「はい!」

「ハナちゃんお酒の追加が入ったから

取ってきて!」

「はい!」

夜はホントに忙しいなぁ。

「ハナちゃん食事が出来たら

運んでくれない!」

「はい!分かりました!」

わたしは食事とお酒を用意した。

レイに簡単な和食の作り方を教わってよかった。


コンコン

「失礼します」

スゥウウウ

わたしは襖を開けてあら

入った。

スゥウウウ

コンッ

そしてゆっくりと閉めた。

「いやー、今日も来ちゃったよー」

「あら、嬉しいですよー」

「ほらほら、もっと踊れー」

これが花魁かお酒で酔っ払った

雄達が綺麗な花魁の人達と

騒いでいる。

そして、この人達と夜伽を...。

いや、今は目の前の仕事に集中しないと。

「食事とお酒を持って来ました」

「おお、悪い...」

急に周りの雄の人達が静かになって

わたしの方を全員で見てきた。

「あらー...これは偉いべっぴんさんだなぁ」

「君は新入りかい?」

「なぁ、料金の追加でこの娘にも

接客させてくれよ」

えっ!嘘どうしよう...

わたしは人と目を合わせて話せないし

それにもし、夜伽なんてなったら...。

「ちょっとこの娘は雑用係で

花魁じゃないですよだから

買えませんよ」

ミヨさんが横から入って助けてくれた。

「いいじゃないか、頼むよ」

「ですがこの娘は...」

「むむっ...わかった!体の相手は

諦めるだけど、酒をついで欲しい

金はちゃんとあげるから」

いやいや、わたしは接客は無理だって!。

そう思ってたらミヨさんが小声で話かけて来た。

「しょうがないよ、ここは

言う事をきいた方がいいよ。

なぁに、酒をついで欲しいだけって

言ってるから安心しな」

安心しなって言われても...

襲われないかな、わたし...。

わたしは仕方なく隣に座った。

「君の名前は?」

「ハナです...」

「よろしく別に取って食おうなんて

しないから。ほらお酒ついで」

三人の中の一人がお酒をついで欲しいと

言ってきたのでわたしはお酒を

持ってついであげた。

「おっとっと、ごくごくごく

ぷはー、やっぱ美人についで貰う酒は

いいなぁ!」

ホントは雄についで貰った酒だけどね...。

「あの...わたし...そろそろ...

雑用が...」

「いや、そう言わずにさぁ

あっ!それだけ綺麗だからあそこの

娘達と何かしてよ」

えっ!いや、急に言われても!。

「頼むよーこんな君みたいに、可愛い娘

そうそう、いないんだよー」

さっきお酒ついで欲しいだけって

言ってたじゃん!。

「ハナちゃーん何処にいるのー?

こっちの食事の用意手伝ってよー」

誰かがわたしを呼んでる声がする。

「すいません...他のお客様の準備が

ありますので...この辺で...」

「えー、そんなぁ...」

「しょうがないっすよ先輩

元々は雑用係の娘ですし」

「ここ来る時はまたお話だけでも

しようよ。お願い」

「はっはい...」

二度とするか!。


バサァ

「ああ、疲れた!」

わたしは布団の上で横になりながら

今日の事を思い浮かんだ。

大変だけど、雑用だけなら

まだ、よかったけど。

「なんで、わたしの事を雌って勘違い

してお酒をつがせようとするんだよ」

一回だけじゃなく

何度も頼まれた。

こんな事が何度もあったらと思うと

不安になるけど。

レイの呪いを消すためだ待っててね

もうすぐだからね。


一週間後...。


わたしは花魁の人達とは別々の馬車に乗って、

後ろにある雑用係の馬車に他の人達と乗っていた。

「どうも...今日はよろしくお願いします...」

「あら?新人さんね」

「可哀想にまだ子供なのに雑用とは

いえ、あんなに怖い場所で働くなんて」

「だけど、一番大変なのは花魁の娘達ね

覚悟はしてると思うけど、それでも

怖いだろうね」

やっぱりみんな怖いだな雪華組が。

だけど、わたしは一刻も早く

レイを呪った相手を探さないといけない。

そう思ってる内に雪華組についた。

外に出ると雪華組の雄の人が出迎えてた。

「到着だね...それじゃあ新人さん一緒に頑張るよ!」

そう、言われてわたしも後に続いた。

「花魁の中でも今日もミヨさんは綺麗だね相変わらず」

「あらあら、ありがとうございます」

やっぱり、ミヨさんは一番人気なんだなぁ。

「それじゃあ、雑用係の人達はいつもどう...」

一人の雄がわたしを見てきた。

「ちょっと...あの娘...」

「どうした?...何だよすげえ上玉じゃないか!」

わたしの事を見ては二人は騒いでいた。

「なぁ、あんた名前は?新入りか?」

「ああの...わたしは...」

「ちょっとその娘は雑用係なので一緒に相手は出来ませんよ」

「なに!せっかくの上玉なのに...」

雪華組の二人は残念そうに落ち込んでいた。

「まぁ、仕方ない雑用係には手を出さない。

そういう契約だから仕方ないかぁ」

わたしはミヨさんに小声でお礼を言った。

「ありがとう、ミヨさん」

「別に、ただ客を取られたく無いだけさね」

そう言いながら顔を赤くしている。


「それでは...先にわたしは掃除に行って来ます」

「頼むよ、人手が足りない時は呼びなさいよ。

ここ広いから」

わたしは雑用係の人達にそう言ってからその場を後にした。

ここにレイを呪った奴がいる

そいつにコンくんの妹のリンちゃんの居場所を

聞き出さないと。

わたしは集中してレイの呪いの道標をたどった。

あの時は性格な場所が分からなかったけど。

ここは雪華組のなか何処にいるのかわからないけど、

近くにいるのは確かだ、反応は強く出るはず。

そして、光の糸がうっすらと見えてきた。

わたしはそれをたどった。


十分後...。


しかし、ここは本当に広いなぁ。

迷子になりそうだよ。

わたしは広い屋敷を何とか迷わないように

気をつけてながら歩いた

そして急に光の糸が消えた。

ここか!。

わたしは目の前の襖に目を向けた。

ここを開けたらもしかしたらレイを呪った奴がいるかも知れない...

だけど、時間がない!

わたしは襖をゆっくり開けた。

スゥウウウウ

誰もいない...

なんだか物置みたいな所だなぁ。

その時、何か違和感を感じ取った。

わたしはその違和感の気配を感覚を研ぎ澄まして

周り一体を見た。

そして、わたしは引き出しを開けてみた。

スゥウウウ

トッ

開けてみたら、その中には一枚の

封筒があった。

「もしかしてこれ...」

わたしは封筒の中身を開けてみた。

ピラッ

中には見た事無い呪文字が書かれた札が入っていた。

「これがレイを苦しめてる呪い」

わたしは目を閉じて集中した。

「帳(とばり)よ夜明けと共に

照らされよ」

レイの国に伝わる邪悪を祓う光属性の

魔法のひとつだ。

シュウウウウ

そして、呪いの札は消滅した。

コレで、レイが起きてくれれば

いいんだけど...。

いや、余計な事は考えない

すぐにリンちゃんを見つけてレイの呪いが消えたか

様子を見に行かないと。

わたしはすぐにその場から去るために

全て片付けて痕跡を残さない様にした。


わたしは歩きながら考えた。

リンちゃんは何処にいるのか?

ここじゃない別の場所?

一体何処にいるんだ、気配を探すには

少し困難だし...。

ドンッ

考え事をしていると何かにぶつかって

わたしは尻もちをついた。

「痛たた...」

「あっ!お姉さんごめんなさい...」

「いや、こっちちゃんと前見てな...」

わたしは目の前にいる少女を無言に

なってしまった。

そこにはコンくんそっくりの

雌の子がいた。

「あっ!ちょっとリンちゃん」

そして奥の方からもう一人九本の尻尾がある

狐の雌の人が

やって来た。

リンちゃんって名前で

コンくんそっくりな雌の子...

他人の空似でもこんなに、似てる子は

いない、間違い無いこの子だ!。

「駄目じゃない、勝手に部屋からでたら」

「だって、お兄ちゃんに会いたい!」

「ごめんね、もうちょっとだけ待ってね」

「待ってていつなの?お兄ちゃんきっと

心配してるよ!」

リンちゃんは走って行ってしまった。

「あっ!リンちゃん...」

狐の雌の人は俯いてしまった。

「あのー...」

「あっ!ごめんなさい...

怪我は無いかしら?」

「大丈夫です...」

「よかった、雑用係の人でしょ?

迷ったのかしら?ここ広いものね

案内してあげる」

「ありがとうございます...」

わたしはしばらくこの人について行く事にした。


「あの...聞いてもいいですか?...」

「さっきの子、気になるでしょ?」

彼女は察して自分から話した。

「あの子は悪くないの...

私のせいなの...あなたも知ってるでしょ?

ここがどんな所なのか...

妹思いなあの子のお兄さんを利用して

人を捕まえる手伝いをさせたの...」

もしかしてこの人!。

「だけど、これが終わったら

無事にちゃんとお家に帰すつもりなの!

あの子には何もしない絶対に!」

彼女は急に大声を出した。

「えっえっと...」

「あっ!ごめんなさい...」

「おい、アオイどうした?」

そして、彼女と同じ狐の雄の人がやって来た。

「アカネ...リンちゃんが...」

「気にするな...ごめんな...

本来オレが責められないと

いけないのに...あの子の事をアオイに

任せて...」

「そんな...あんた、だけの責任じゃないよ」

二人はお互いを庇っていた。

「あれ!君は?」

「あっ!この人は雑用係の...

あらごめんなさい名前を聞いて

無かったね」

「ハナです...」

わたしは自己紹介した。

「あれ?君は白いライオン属だよな?」

彼は不思議そうにわたしを見た。

「どうしたの、アカネ?」

「いや、白いライオンって珍しいなって...

ちょっと待て確か顔と名前は

知らないけど、白いライオンの王子が

この国にやって来たって噂が...」

わたしの心臓の鼓動が早くなってきた。

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