エピソード18【レイの故郷】

「ここがレイの産まれ育った国...」

ネロは初めて観る国の風景に目を輝かせていた。

ここは俺の故郷の大和国(やまとこく)だ、

幼い頃にお婆さんと弟のケントと一緒に引っ越してしまったけど

ここもずいぶん変わったなぁ。

「わぁーっみんな着物だぁ!」

「着物は初めてか?」

「うん!」

こうして見るとやっぱりネロも子供だなって思う。

まぁ、俺もネロより歳上ってだけでまだ子供なんだけどな。

「いいなぁ、服屋さんで何着か、買おっかなぁ?」

「ネロって服そんなに好きだっけ?」

ネロは周りを見ながらウキウキしていた。

「うん!王族の時は決まった服しか着れなかったけど

結構いろんな洋服とか好きだよ。

錬金術でたまに服作ったり余所の国の贈り物でよく送られるんだけど

余所の国からの贈り物は全部受け取らないで返してるけどね」

幼なじみ、だけど何か意外な一面を観れたな...。

「てか、贈り物返してのは何でだ?」

「いや、だって多分あれねお世話になったお礼でもあるんだけど

ほとんどお姫様を嫁がせる為の捧げ物だと思うそれ受け取ったら

後々、面倒だから受け取らない事にしてるんだ」

なるほどな王族は確かに自分の人生を決められないもんな。

「さてと、何処に買いも...」

「用事があるだろ」

ガシッ

俺はネロのマントをつかんでそのまま歩いた。

「ああ、ちょっとだけぇ!」

「お前のちょっとは何時間だろうが!!」

そして俺達は叔父さんの所に向かった。


数時間後...。


「ここがレイの叔父さんが住んでる所?」

「ああ、そうだ...」

ここは昔から変わってないなぁ。

叔父さんお金持ってるはずなのにある程度暮らすのに必要な設備があれば

問題ないってここの、こじんまりした家で暮らしてんだよな。

コンコンッ

「叔父さーん!俺だよレイだよー!!」

あれ?おかしいな返事が無いな?。

ガシャンッガシャンッ

「カギは閉まってるよ

レイの叔父さん出かけてるのかな?」

「あれー?おかしいなぁ、年の為に手紙は送ったんだけど

まだ届いてなかったかなぁ?」

困ったな叔父さんがいないとなると...。

「どうする?出直す??」

「いや、俺ちょっと探してくる」

「えっ?いや探すって言ってもどこ行くの?

それだったら家の前で待ってようよ!」

ネロはそう言ってるけどだけど...

やっぱり久しぶりだから叔父さんに早く会いたい!。

「大丈夫だ、確かに色々変わったけど土地勘はちゃんとあるし

叔父さんの行く所はだいたいしってるから」

俺はポケットから古びたお守りを取り出して

ネロに渡した。

「何これ?」

「それは叔父さんがくれた、お守りだ

もし俺が探してる間に帰って来たらそれを見せたら良いよ」

ネロすごい焦った顔で俺に言ってきた。

「いや、待ってよ!!わたしは初対面の相手と話すのは苦手なの!

それなら一緒にここで待とうよ!」

「大丈夫だお前なら出来るって」

「でも...」

モジモジしてるかわいい...。

「なぁ、頼むよ」

「叔父さん帰って来るまでに戻って来てよ...」

ムスッとした顔で俺を見てきたけどネロも

俺の頼みを引き受けてくれた。

「ありがとな!それじゃあ早速行ってくる!!」

俺はネロを残して叔父さんを探しに走って行った。


二十分後...。


「はぁあ、一緒に待ってればいいのに...」

あるからずっと待ってるけど全然レイもレイの叔父さんも帰って来ない。

「それなら、時間潰してまた改めて来るって方いいと思うんだけどなぁ」

ここは初めて来た国だから色々レイと一緒に見て回りたかったなぁ。

着物もキレイだったし一度、服屋さんで試着してみたいな。

レイはどんな着物を選ぶかなやっぱり雄用の渋いやつかな?

それともキレイで美しい大人の...。

「着てくれないかなぁ...うふふ...」

「そこの君...僕の家の前で何してる?」

わたしは背筋が冷たく感じた。

「わぁ!えっとぉ...」

振り向くとそこには黒いオオカミの雄の人が立っていた。

「なんだ?僕に用事かい?」

ダメだ言葉が...。

「こんにちは...」

「えっ?...こんにちは...」

いや!挨拶してどうするの!!。

「アレ?君のその首にぶら下げてるの...」

そう言ってわたしの首にぶら下げたお守りを見てきた。

「それは、レイにあげた...

ちょっと待ってもしかして手紙に書いてあったネロくん?」

「はい...」

ああ、何とか返事できた。

「ああ、なんだ!君たちが来るって手紙で書いてたから

お茶と茶菓子を買ってたんだよ!すまないねぇ、わざわざ来てくれたのに

待たせてしまって!!」

やっぱりこの人がレイの叔父さんか。

だけど何となく面影があるなぁ...。

「所でレイは何処に行ったのかな?」

わたしは、声をかけられてハッとした。

「レイは...あなた探しに...行った...」

「ああ、そうか行き違いになったか

とりあえず下手に探しに行くより家でお茶して待ってようか」

そう言われて、わたしは家の中に入れてもらった。


「はい、コレは緑茶って言ってこの国の

飲みのだよ大福も良かったら食べて」

「ありがとう...ございます...」

どうしよう...なんか気まずい...。

「レイから手紙で君の事は聞いてたよ」

優しい目でわたしの事を見つめた。

やっぱり面影があるなぁ。

「あらためて自己紹介するね

僕はヒロムよろしくね名前でいいよ

その方が、かっこいいだろ?」

「もう知ってるけどネロです...」

話し方も何処かレイに、似てるな。

「その、何だもしかして話すの苦手かな?」

「自閉症なんです産まれつき自分じゃ

どうしようも無くて...」

もう、隠すような事も無いよね。

「そっか...レイからの手紙で色々苦労して来た

からあまり過去の事は聞かないで上げてくれって

書いてあったんだけど...

苦労したんだね...」

「ヒロムさんも苦労人かな?」

なんだろう何となく聞いてしまった。

「そうだねぇー僕も色々あったねぇ、

ネロくんレイとケントの両親がどうなったか

知ってる?」

「はい...母親は病気で...

父親は事故で...」

「なるほどあの子、僕の事を庇ってくれたのかな?」

ヒロムさんどうしたんだろう?

「話すの辛い?」

「重い話だけど聞く?」

わたしは無言でうなずいた。

「実はねあの子の父親が死んだのは

半分は僕の責任なんだ」

ヒロムさんは真剣な顔でわたしに話してくれた。

「僕は元々は国の法律と平和を守る

警備隊で働いていて

犯罪者を捕まえていたんだ」

ヒロムさん警備隊だったんだ...。

「だけど、ある時に僕が捕まえた

犯罪者が脱走してしまって、僕も

そいつを探してたんだ」

ヒロムさんは悲しい表情になった...。

「レイとケントの父親は僕の双子の弟で

顔も瓜二つなんだそいつは僕の事を恨んでいて、

たまたま仕事の帰りに僕と間違えて

弟が盗んだ包丁で刺されて...

後は分かるだろ...」

そんな事があったのか...。

「それから警備隊もやめて

レイとケントを引き取ったんだけど

ある知り合いのお婆さんがいて

旦那さんも先立たれて子供にも恵まれなかった

から、もし良ければ引き取りたいって

手紙が届いたんだ」

「ヒロムさんは寂しくなかった?」

ヒロムさんはニッコリ笑った。

「寂しかったけど僕と一緒にいると

また危険な事に巻き込まれると思ったんだ

だけど、まさかケントとお婆さんが

あんな事になるなんて思わなかったんだ

すぐにまた一緒に暮らそうって手紙を

送ったんだけど

その時のレイは多分失う事が嫌だったから

孤独を選んだんだと思う」

レイ...そんな事が...。

「だけど、ネロくんの存在がレイを救ってくれた」

ヒロムさんはわたしの手を握った。

「レイが元気になったのは君のおかげだ

しかもケントも無事に見つけてくれた

君は僕の恩人でもあるだけど頼む!」

ヒロムさんは急にわたしの横に立ったと

思ったら急に土下座した。

「どうかあの子と結婚して欲しい!

レイを幸せにできるのはネロくんしかいない!!」

「いや、そんな!早いですよ?!」

わたしは焦った個人的にまだ幼なじみだけど

もっとお互いの事をよく知ってからだし、

それに...。

「まだわたし...子供...」

今思うと弟のケントさんより歳下なのに

何でわたしなんて好きになったんだろ

レイには歳上の方が釣り合うのに...。

「いや!ネロくんだからレイは幸せになれる

自信を持ってくれ!」

まっすぐな所なんかレイにそっくりだな。

ガラララッ

「おーい!叔父さんいるー?!」

「おっ?レイじゃないか今ネロくんと

お茶してた頃だよ」

レイはやっと戻って来た。

よかったーなんかホッとしたよ。

「叔父さん探したんだよ

茶菓子の定員にさっき買いに来て

家に帰ったって聞いてすん飛んで戻ったんだから」

「いやーすまないレイとネロくんの

お茶と茶菓子を買ってたんだよ」

何かこうして観てると本当に親子って感じがするな。

「ケントの顔もみたかったなぁ」

「あいつは元気にしてるよまた

今度連れてくるよあいつももっと強くなって

叔父さんをビックリさせたいんだって」

その後も二人は笑い合いながら仲良く話していた。


「叔父さん、もう自己紹介したと

思うけどこいつはネロ俺の嫁」

ベシッ

わたしは顔を真っ赤にした。

こんな時までイジメないでよ。

「恥ずかしがるなよー」

それでもあまり効果が無いようで

わたしを抱きしめた。

「そしてこの人はヒロム叔父さん」

「あらためてよろしくね!」

「こんにちはって、離して!」

こんな時にやめてよもう!。

「それで叔父さん俺達の頼み引き受けてくれる?」

ヒロムさんは真剣な顔付きになった。

「もちろん僕で良ければ引き受けるよ。

だけど、まずはレイとネロくんの武術の実力を見たい、

いいかな?」

「もちろん!頑張ろうなネロ!!」

「う、うん!」

こうして、わたしとレイの特訓が始まった。

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