第2話 颯太と渚の出会い
昔々(2年前だけどね)あるところに、高校に入学してきた1人の男子高校生がいました。
その男子高校生になったばかりの男の名前は、笠間 颯太といった。
中学生のとき、彼はバスケットボールで才能が開花し、キャプテンにはなれなかったものの、彼がつけていた6番の背番号は地区、そして県内でも有名となった。
「――――ふっ!」
彼が魅せるシュート能力、そしてハンドリング力は地区では最高レベルで、『誰にも止められない
高校に入ってすぐ、その才能はすぐに評価されたものの、中学生のバスケットボールと高校生のバスケットボールは比較にならないほどレベルが違う。
高校生のバスケットボールは体の接触がかなり多く、展開が非常に早いのが特徴だ。
中学生では止められない選手でも、高校生相手だと全く通用しなくなり、どんどんと存在をかき消していく……ということが多々ある。
『中学とはわけが違う。中学で活躍したからって調子乗んじゃねえぞ!』
入部してすぐ、颯太の名前は先輩たちにも広まっていたが、最初に話しかけられた言葉がこれだった。
それでも、颯太は1人地道に努力を重ねていたこと、そして才能によって学年が上の高校相手を次々と倒していく。
この時点で、もはや颯太を止めることができる選手はいなかったのだ。
「――――」
そんな颯太が、いつもの練習が終わり帰っている途中だった。
基本ボッチの颯太は、毎日こうして1人で帰ることが日常。
しかし、特に苦はない。
陰キャ……う”う”ん! 1人でいることが好きなだけなのだ。
どすっ!
「――――うわ!?」
「あ、ご、ごめんなさい!」
突然後ろから衝撃が伝わり、颯太は突き飛ばされて転んでしまった。
そして、後ろから女子が謝ってきた。
颯太は後ろを振り向いた。
するとそこには……超絶美少女が颯太を心配して顔を覗い込んでいたのだ。
(もしかして……三井 渚さん? 学校内で一番美人だと言われているという……)
陰キャの颯太でも、彼女の存在は知っていた。
(陰キャで悪かったね! 僕は1人でいることが好きなだけなの!)
あ、はいすいません……!
皆さん、あくまでも颯太は1人でいることが好きなだけですので、お間違えないように!
はい、では気を取り直して……。
そう、彼女こそが後に颯太のお嫁さんになる渚だ。
颯太は彼女に見惚れてしまっていたため、アスファルトで擦りむいた箇所から激痛が走り、血が滴るほど出ていたことを忘れてしまっていた。
「――――! だ、大丈夫ですか!? 膝とほっぺから血がたくさん出てますよ!」
「はっ! っつう! 擦りむいただけですので、大丈夫ですっ……!」
「大丈夫じゃないです! ちゃんと手当しないと! えっと……ちょうど消毒持ってきていたので染みるかもしれないですけど、我慢して下さい!」
「そこまで……痛ったあ!」
渚はポケットティッシュを取り出し、バッグから消毒液が入った入れ物を取り出した。
その蓋を開け、ティッシュに染み込ませ、それを颯太の傷口に当てた。
勿論、消毒液が当たった瞬間に傷口から激痛が走る。
全身から汗が滲み出し、拳をさらに強く握った。
最初は激痛だが、しばらく経てばその痛みは慣れていき、最終的には痛みすらなくなっていた。
すごい不思議だよね〜。
何で痛みって慣れるんだろうね?
「――――うん、これで大丈夫そうですね。本当にごめんなさい! わたしの不注意で……」
「いや、僕は大丈夫だよ。それに、わざわざ手当してくれてありがとう」
「あ、あの!」
「――――!?」
颯太が立ち上がると、渚はずいっと颯太に顔を近づける。
颯太は驚き、顔を赤くした。
そりゃそうでしょうね。
学校一と言われるほどの美少女に顔を近づけられたら、男子ならあっという間に顔を赤くして心臓の鼓動がうるさくなるでしょう。
あらら、なんてうぶな颯太くんでしょうか。
可愛いじゃないの〜。
「もしかして……バスケットボール部にいる笠間 颯太くんですか?」
「えっ、はいそうですけど……」
「わあ! わたし、笠間くんの大ファンなんです!」
「そ、そうなんですか……」
まさか自分の名前が、学校一の美少女に覚えられているなんて、何だか嬉しくなって照れくさくなってしまった颯太。
頭を掻きながら、渚から視線を逸した。
しかし、この頃の颯太はまだ恋というものに疎かったため、美少女相手でもあまり心がときめかなかった。
そのおかげで、少しドキドキしながらも普段通りに渚と接することが出来た。
「はい! わたしの友達がバトミントン部で、早く終わった時に一緒に帰るんですが、待っているついでにバスケットボール部も見るんですよ。すごいですよね! あんなに高く飛んだり、遠くからシュートをしたり……。バトミントンよりもカッコいいって思いました! その時に笠間くんを知ったんです。何回見ても本当に上手です!」
「あ、ありがとう……。すごく嬉しいです……」
女の子からお褒めの言葉をくれるなんて初めてだった。
それに、その第一号が学校一の美少女から言われるなど颯太は思ってもいなかった。
正直、颯太は飛び跳ねるほど嬉しかった。
「では、わたしはこの後用事があるので……。ではまた、笠間くん」
渚は丁寧に頭を下げると、坂道へと向かって行った。
颯太はそれを見送るように、彼女の後ろ姿を見ていた。
これが、颯太と渚の出会いだった。
この偶然が、後に2人の関係を変化させていった。
――――さて、次回はアツアツ展開の予感!?
皆さんぜっっっっったいに鼻血出さないように!
心の中でもですよ?
まあ、ナレーションは滝のように鼻血出しながら見ていますけどね?
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