第61話 夏休みの宿題はみんなでやると楽しい1
次の日……雪乃はルンルンな気分で、さくらの家へ向かった。
あらあら、スキップとかしちゃって。
相当に楽しみにしていたようです。
(さくらさんの家……どんな感じなのかな?)
いつもふわふわした雰囲気をしている彼女からして……。
と考えても、そんなものでは家がどんな感じなのかなんて想像できるわけがない。
ということで、雪乃はとりあえず、よく見かける家の形をベースに想像してみることにした。
(もし新しい家だったら……こんな感じ?)
雪乃の頭の中で、最新型の家が建築された。
総2階建てで、今流行りの箱型の家。
そして、リビングは多分おしゃれなのだろう。
(古めの家だったら……こんな感じ?)
次に思い浮かべたのは、年月が経った家。
最新型の家とは違い、ザ・コンクリートな感じで白い壁。
そしてトタンの屋根が目立つ、でも家の中はおしゃれなのだろう。
(――――でも、どっちにしろ楽しみ!)
笑顔を溢しながら、またルンルンと楽しそうに歩く雪乃。
すると……。
「あっ、荻さーん!」
「――――!」
自分を呼ぶ声がして、雪乃は後ろへ振り返った。
そこには、仲良く横並びでこちらへ向かってくる颯太と渚がいた。
よく見ると、2人は手を繋ぎながら歩いていた。
ちょっと羨ましいとか思ってしまう雪乃。
「おはよう荻さん」
「おはよー!」
雪乃は笑顔で手を振る。
「そういえば、荻さんってさくらちゃんの家からそれなり近いところにあるんだよね?」
渚の質問に、コクリと頷く雪乃。
「そっか〜。でもここで一緒になるなんて、すごい偶然じゃない!?」
「――――!」
渚の言う通り、いつもは反対方向から校門前で出会うが、今回は雪乃がいつも通る十字路で出会うなど、まさに偶然と言える。
これはまさに……運命と言わざるを得ません!
雪乃も表情がちょっと乙女チックに……!
「――――お、荻さん?」
『――――っ!』
颯太の声に、雪乃は我に返る。
慌ててなんでもないと言うように、手を振りながらアワアワする。
そんな彼女を見て、渚はというと……。
(荻さんってもしかして……意外と表情豊かな人なのかも?)
雪乃ともっと仲良くできれば、もっと可愛らしい様子を見せてくれるのかもしれないと思った渚なのであった。
◇◇◇
3人が出会ってから歩いて徒歩10分。
遂にさくらの家が見えてくるところまで来た。
ちなみに……皆さんお忘れかと思いますが、清太は完全にお寝坊でございます。
いちばん重要な彼氏さんは何やってるんですか!?
一応彼が何しているのか覗いてみましょう。
「やっべ! 完全に寝坊したじゃねえか! さくらにマジギレされるッ!」
はい、清太は釜茹での刑決定です。
いや、それ以上の刑でもいいかと思います
だってね?
あの可愛い可愛いさくらにカッコ悪いところ見せてしまうんですから。
許せません、というか許しません!
「ここが……さくらちゃん
「場所は合ってるみたい。にしても……結構立派な家じゃない? それどころか立派すぎるような……」
スマホで地図を見ながらたどり着いた、さくらの自宅。
もう明らかに普通の家ではない。
両サイドに建っている家だけでなく、周りに建っている家たちは総二階建て、あるいは一階建ての平屋などで、ごくごく普通の家だ。
それに対し、さくらの家はというと……。
『和風感がすごい!!』
「う、うん! さくらちゃんの家がこんなに立派だったなんて……!」
あまりの驚きに、口をあんぐりと開けながら呆然とする渚と雪乃。
一方で颯太はというと、呆然となりながらも頭は働いていた。
大きな門と、家の周りを囲む竹の柵、そして奥には……見るからに古風な家が建っている。
明らかに只者の家ではないことがすぐに分かった。
(もしかして……893じゃないよね……? いや、あのさくらちゃんだよ? あんな感じの性格のさくらちゃんだよ!? まさかそんなはずは……)
と思いながらも、見た目からして、どう見てもヤクz……ゔゔん! 893にしか見えない。
いや〜……うん、ねっ?
あのさくらですよ?
この作品ももう60話を超えていますからね、読者の皆さんならさくらの性格は知ってますよね?
もし知らなかったら……この作品読み直し確定ですからね!
「えっ、これどうやって入れば良いの……? 颯太くん分かる?」
「わ、分からないよ……。あ、でもインターホンがここにあるよ」
颯太が指を差した先には、小さなインターホンが門の柱に設置されていた。
明らかに古い型のインターホンで、祖父母の家に行けば必ずありそうな、あのタイプである。
(えー……大丈夫かなこれ……)
颯太はインターホンを鳴らそうと人差し指を出すが、だんだんと心配のほうが大きくなっていく。
後ろでそっと見守る渚と雪乃も、ゴクリと唾を飲み込む。
一旦は動きを止めたものの、颯太はついにインターホンを押す決断をした。
恐る恐るインターホンのボタンを押す……。
「ちょっと待ったぁ!!!」
「「「――――!?」」」
「――――! お前らめっちゃ顔怖いぞ!?」
押そうとした瞬間、横から大声が聞こえて颯太の動きが止まった。
3人とも緊迫した状況だったため、3人同時に声のした方へいきなり振り向く。
ものすごい
「悪い! 完全に寝坊しちまったよ……。で……何でそんな顔してんのかまず聞きたいんだけど」
「いや、清太。これを見たらこんな顔になっちゃうに決まってるよ!」
「えっ? ああ、そういうことか」
「えっ……? 清太くん、何でそんなに冷静なの?」
「いや、まあ……。ははっ、初見だったら誰もがこんな反応するから安心してくれ!」
ピンポーン!
「「「――――!?」」」
何の躊躇もなく、平然とインターホンを押した清太。
それを見た3人は驚き、体をビクリと跳ね上がらせた。
そして、少し待っていると……。
「はーい、どなたでしょうか?」
「あ、お久しぶりです! 加賀 清太です!」
「あらまっ! ちょっと待っててくださいね!」
頑丈そうな扉で閉じられた門が、ゆっくりと開かれた。
そして、そこから出てきたのは……女性だった。
「あら〜! 清太くん久しぶりね〜!」
「お久しぶりです、さくらのお母さん」
『「「さ、さくらのお母さん!?」」』
そうです!
凛として現れ、優しそうな目に腰辺りまで長く、そして艶のある美しい黒髪……。
頬に手を当てて出迎えてくれたこの方こそが、あのさくらの母親なのです!
「さくらから聞いてるわよ〜。もしかして、後ろの3人はお友達かしら?」
「はいそうです。同じ高校の同級生です!」
「あらそうなのね〜。皆さん初めまして、わたしがさくらの母親、『
『「「ええーーー!!!」」』
3人とも良い反応!
次回に続きます!
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