第62話 夏休みの宿題はみんなでやると楽しい2

 さあ、夏休みの初めからいきなりの衝撃が走りました!

まさかの、さくらの母親の登場です!

そして、さくらとその母親、清太以外はこう思ったわけです。


(((喋り方そっくりだ〜)))


 さくらの特徴的な吊り目はなく、全く似ていない。

もはや、真逆な顔をしている。

話し方だけで想像する人物像通り、垂れ目で如何にも『おっとりした方ですよね』といった見た目である。


「ここで立ちっぱなしなのもあれだから、遠慮なく上がってってくださいね〜」


『「「お、お邪魔しまーす!」」』


「お邪魔しまぁす!」


 さくらは遠慮なく門をくぐって行った。

そして清太も遠慮なく、さくらの自宅へと上がっていった。

まあ、さくらは自宅なので遠慮なんてものはいらないし、清太はさくらとは長い付き合いだし、何度もここに訪れている。

そのため、遠慮というものがない。

 問題は他の3人だった。

さくらの母親が、すごく優しくて良い人なのは分かった。

しかし、この家の見た目でなんとなく躊躇してしまうのであった。


「おーい、3人とも何立ち止まってるんだ? 先行っちゃうぞ?」


「――――! ま、待ってよ清太!」


「あっ! そうたくん待って!」


「――――!」










◇◇◇










「みんな〜、これお菓子ね。お勉強頑張ってね〜」


『「「「ありがとうございます!」」」』


「ママありがとう〜」


「良いのよ〜。さくらも頑張りなさいね〜」


「は〜い!」


 早速お勉強中の5人。

そこに真由美が来ると、大きなテーブルの真ん中に、大量のお菓子が入った籠を置いた。

お礼をすると、真由美は静かに部屋を出ていった。

 すると、渚はさくらの方を見る。


「ねえ、さくらちゃん」


「なあに?」


「さくらちゃんのお母さんって、すごくキレイな人だね!」


「えっ、そ、そうかな〜?」


 自分のことでは全くないのに、照れるさくら。

ほんのりと頬を赤くするさくらに、清太はこっそりと顔を赤くする。

 颯太はそれを逃すはずがなく、清太に体を近づけた。

そして、彼にこそっと話をする。


『おーい、清太〜』


『うおっ!? な、何だよ……』


 突然、耳元で話しかけられた清太は、一瞬体をビクリと飛び上がらせた。

聞こえた方には颯太がおり、ため息をつきながら、顔を近づけた。


『清太に言いたいことがあるんだ』


『な、何だよ』


『清太の顔、すごく赤いよ』


『――――っ!』


 清太自身は隠していたつもりだったようだが、隣で偶然目に入ったようだ。

まあ、他人の恋にも敏感な颯太が、見逃すはずがないんですねぇ〜!

彼の恋電波を受信する速さは、5Gを超えますからね!


「――――? 清太くんどうしたの? 顔、すごく赤いよ?」


「ななな、何も無いから気にしないでくれ!」


 さくらも、清太の不自然な動きに違和感を覚えたらしく、心配して声をかけた。

もちろん、顔が赤くなってしまった原因の張本人に言われたものなら、さらに慌てるのも仕方のないこと……。

その証拠に、清太の目は渦を巻いています。

まるで瀬戸内海の『鳴門の渦潮』ように……!

 だからといって、清太の目を本当の渦潮にしないでください!

編集者さん何してるんですかぁ!

キャラクターを使って、隠れて遊ぶなァ!


(あ、危なかった……。危うく、さくらにバレるところだったぞ……)


 自分がさくらの表情を見て、見惚れていたところを見られては、一巻の終わり。

そう思った清太は、なんとか誤魔化すことが出来て一安心のようだ。

小さく安堵のため息を漏らした。

 なーんだ、さくらにその表情を見られたら、楽しい展開だったのに……。

あーあ、残念な結果になっちゃった。


(あーあ、残念だったなぁ〜)


 おや、どうやら颯太も、我々と同じ考えをお持ちだったようです。

まあこの作品はラブコメですから、こういうのはもの凄く期待しちゃいますよね!


「ねえ渚ちゃん、ここってこうしたら良いのかな」


「うーんと……。うん、そう! それで良いと思う!」


「分かった! 渚ちゃんって、やっぱり頼りになる〜」


「ふふっ、そう言われたら、ちょっと恥ずかしいかも……」


『わたしも、渚さんのこと頼りにしてる』


「お、荻さんまで……。2人とも大袈裟だよ」


『嘘じゃない これは本音で言ってる』


「そうだよ! わたしも雪乃さんと同じ!」


「ほ、本当……? はわわ、恥ずかしくなってきちゃったよ」


 2人が急に渚を褒めまくり始めた。

渚はだんだんと、さくらと同様に顔を赤くし始めた。

 その様子を見ながら、清太は、ニヤニヤしながらお隣さんの顔を覗いた。


(こいつも絶対、俺と同じことになってるに決まってる!)


 そんなことを思いながら、目をギラつかせる清太。

ゆっくりと、目から光の軌跡を残しながら、颯太の方を振り向いた!

清太の目に映った、颯太の表情は如何に……!


「――――」


「あ、あれ……?」


「ん、どうしたの清太」


「いや、なんでもねぇ」


 ここで、『いや、何で平然としてられるんだよ……』と小声で言おうとした清太だったが、聞き返される自信しかなかったため、グッと堪えた。

 とは言ったものの……実際颯太はどう思っているのでしょうか?

では、わたくしナレーションの特権を活用して、彼の周りに心の声のフキダシを出してみましょうか。

これをこうして、こうして……こうして、こうしてこうっと!


(えっ、なぎさちゃん可愛すぎ!)


(僕のお嫁さん可愛すぎでしょ!)


(天使! もう一生捧げます!)


(なぎさちゃん! なぎさちゃああああん!)


 あっ、これは……。

踏み込んじゃいけないところまで行ってる気がするので、もうこれ以上フキダシを出すのは止めにします!

まあ予想通りですけど、皆さんも多分同じようにご察しの事でしょう。

あれですね、もうちょっと酷いところまでいけば『○○○コピペ』ってやつと同レベルだと思っても良いでしょう。

あれ、もしかして皆さんもう知らない世代……?

これがジェネレーションギャップってやつ……?

とりあえず泣いても良いですか?

 それはともかく、果たしてちゃんと勉強会はしっかりと機能しているのでしょうか……?

わたくしナレーションは不安で仕方がありません……。

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