第9話 2人が結婚するまで7
さて、次の日になった。
颯太は学校に来て早々、職員室に入る。
「佐々木先生!」
「――――! 笠間くんどうしたの? そんなに焦って……」
颯太が話しかけた教員は、颯太がいるクラスの担任をしている若い女性教員、
清楚系お姉さんのような見た目の25歳の女性で、学校全体、特に男子からの人気が非常に高い。
もちろん女性、男性教員からも熱血なファンが多い。
えっ、わたくしはこういう人は好みなのかって?
それは……まあ、お姉さん系の女性も魅力的だと思いますよ?
わたくしの性癖を知られるのは恥ずかしいので、ここはノーコメントで……。
まあ、後々お教えします。
ちなみに……清楚系お姉さんだからといって、スーツがパツパツになるほど胸が大きいという勝手な妄想はやめてください。
ここだけの話……佐々木 木乃葉のカップ数は……Dカップです。
ね? お姉さんだからといって、HカップとかJカップとかそれ以上の大きさがあるとは限らないですから。
「あの! 三井 渚さんの自宅の住所って分かりますか!?」
「えっ、三井さんの……? 何か用事?」
「はい、出来れば今教えてくれますか?」
「え、ええ。分かったわ!」
若いながらも彼女は勘が良い教員で、颯太が渚の自宅に急ぎの用事があるのだとすぐに分かった。
そして、渚の家庭事情を把握している木乃葉はもしものため、颯太に自分の電話番号も教えておいた。
「一応この紙にも書いておくわね」
「ありがとうございます! 失礼します!」
木乃葉は、職員室を出ていった颯太を見送っていた。
普段は目立たない人物が、あれほど真剣な目で自分に話をしてくるとは全く思ってもいなかった。
まあ、彼は陰k……ゔゔん!
1人でいることが多いですからね!
(なんだか青春を眼の前で見た気がするわ。ふふっ、懐かしいわね)
実は、木乃葉には夫がいる。
中学生でクラスメイトとして知り合い、中学校の卒業間近になった頃に夫から告白をされて2人は付き合い始めた。
それから高校、大学はそれぞれ違う大学で努力を積み重ねて無事卒業。
2人が24歳になった時、8年という長い期間を経て、夫は木乃葉に告白した日にプロポーズをし、木乃葉は泣きながら頷いた……とまあ簡単に経緯を話すとこんな感じ。
この作品を読みに来てくれた方々の大半は、恐らくラブコメをこよなく愛し、ドキドキしたいとかトキメキたいでしょう?
普通こういう経緯を話す時というのは番外編であると思うのですが……恐らく早くどういう経緯で結婚に至ったのかを知りたいと思いだと判断したので、敢えてわたくしはここで軽く経緯を話したわけです。
これで満足できたでしょう?
「――――? 佐々木先生どうしたんですか? そんなに嬉しそうな顔して……」
「いいえ、単に青春真っ盛りの生徒たちは良いなってちょっと羨ましく思っただけですよ」
「な、なるほど、そうですか……」
木乃葉の隣りにいるもう1人の若い女性教員は、昔のことを思い出している木乃葉を不思議に思いながら話しかけた。
この女性教員は……また後の機会にご紹介します。
今は颯太がこの後どうなるのかが今回の重要なところなので、下校時間になるところまで時を飛ばします。
まだ渚について説明していないので、颯太の後を追いながら解説していきます。
我々にしか見えない魔法のドローン行ってらっしゃい!
◇◇◇
時刻は15時20分。
教室の掃除当番だった颯太は、掃除を終えた後すぐに学校を後にした。
スマホのナビ機能で渚の自宅の住所を検索し、ナビに案内されながら渚の自宅へと向かった。
さて、颯太が渚の家に着くまでの間に、渚について説明します。
実は、颯太とのデートをした日以降、渚は登校日数が徐々に少なくなり、現在はほぼ休んでいる状態。
クラス全体にはとある病気にかかってしまって入院している、ということになっているが、それは全く事実と異なる。
渚が学校を休んでいた理由、それは……。
「はっ、はっ……。ここが……渚さんの家……」
颯太のスマホが目的地に着いたことを知らせた。
颯太が立っている左手側には一軒の住宅が建っていて、家の敷地を囲っている塀があり、玄関に繋がっている通路の横の塀には『三井』書かれた表札が付けられていた。
その表札の横にはインターホンがあり、中の人が出てきて塀に付けているフェンスを開けるような仕組みになっていた。
うん、説明するの難しい!
映像の力って凄いって改めて実感するわたくしでした……。
まあ、簡単に言うと、ぐるっと家を囲むように塀が立っていて、玄関につながっているところだけ口が開いている。
その隙間に人が入らないようにフェンスで閉じられているってことです。
――――これで何となくは伝わったでしょうか……?
バンッ!
「――――!? な、何!?」
颯太が恐る恐るインターホンを押そうとした瞬間、渚の家の扉が乱暴に開く音がした。
颯太はビクリと体を跳ね上げて、インターホンを押そうとしていた手を引っ込ませて縮こまった。
「早く出ていけ!」
「いや、いや! きゃあ!」
怒鳴る男の声と1人の少女の声が響く。
すると、1人の少女が玄関から突き飛ばされて体ごと地面に打ち付けられた。
打ち付けられた勢いで体が跳ね上がり、颯太の方向に横の体勢になってまた地面に打ち付けられる。
その少女は、まさに渚だったのだ。
「な、渚さん!?」
「――――っ! そ、颯太くん!? 何でここに……」
地面に擦りむいて、渚の綺麗な肌は血だらけになっていた。
それだけではなく、渚の顔や体のあちこちに黒く滲むアザがあることに気づいた颯太は、渚の家庭事情を初めて知ることになった。
「渚さん! こっちに来て!」
「で、でも……」
「良いから! 早くこっちに来て渚さん!」
「――――! う、うん」
普段大声を出さない颯太が、この時珍しく大声を張り上げて、渚にそう言った。
これほど真剣な目で、大声を張り上げる颯太を初めて見た渚は、一瞬戸惑いを見せたが、颯太の言う通りにし、フェンスを開けて外に出た。
「――――っ! 颯太くん!」
「渚さ――――うわあっ!」
フェンスを開けた瞬間、渚は颯太に勢いよく飛びついた。
颯太は一瞬バランスを崩しそうになったが、流石バスケットボール部の主将だ。
抜群の体幹力で何とか渚を受け止められた。
しかし、渚とこれだけ密着している状態は初めて。
「うっ、うう……颯太くん……颯太くん……!」
奇跡的に颯太が来てくれていた。
助けが来てくれたことに、渚は思わず大粒の涙を流し、何度も颯太の名前を呼んだ。
そう、渚がとても大好きな彼の名前を。
嗚咽を漏らしながら泣いている渚をそっと抱きしめる颯太。
そして、よしよしと言いながら渚の頭をポンポンとしてあげたのだった。
「――――とりあえずここから離れよう。それと……もし話せるなら話してもらっても良い? 渚さんが良いというのなら……」
「――――うん。颯太くんに全部話すね。わたしのこと……」
颯太と渚は家から離れ、近くの喫茶店を探すことにした。
颯太はスマホを取り出し、マップで喫茶店を検索する。
運良く徒歩3分のところに喫茶店があったため、そこで休憩することにした。
その時、渚は喫茶店に着くまで、颯太の手を繋いでいた。
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