第27話 さくらは雪乃を知りたい!2
放課後……さくらは清太に見守られながら雪乃に接近する。
しかし、なかなか1歩目が出ない。
さくらは体を震わせながら清太を見た。
それを見た清太はガッツポーズをした。
さくらなら大丈夫だと伝わったようで、さくらは大きく息を吸った。
そして……1歩目を踏み出して雪乃の傍まで歩み寄った。
「あ、あの! 萩さん!」
「――――?」
「――――!」
さくらに名前を呼ばれ振り向く雪乃。
黙ったままさくらを見る彼女の姿は恐ろしいものだった。
雪乃はただ呼ばれてさくらを見ているだけだが、鋭い目で睨みつけられている、無表情で黙り込んでいるため、さらに恐ろしさが滲み出ている。
さくらは今にも逃げ出したい気持ちだ。
しかし、このまま何も話しかけられずに終われば、せっかく自分が友達になれそうだと思った人を失ってしまう。
「――――あの、わたし矢野 さくらって言います! この間のグループディスカッションで右側にいた人です。萩さん、あの良かったら……わたしとお友達になってくれますか!?」
泣きそうになりながら勇気を振り絞って、ついに雪乃に話しかけることが出来たさくら。
ものすごい勢いで頭を下げるさくらを見つめる雪乃。
この様子を教室の外の出入り口から見守っている清太は、完全に緊張していた。
これでダメだと言われたら大泣きすること間違いなしのため、清太は雪乃と友人になってほしかった。
悲しみの涙より、喜びの涙のほうがよっぽど慰めるのが楽だからだ。
(頼む萩さん! 良いよって言ってくれ!)
すると雪乃はバッグのチャックを開け、メモ帳とシャープペンシルを取り出した。
そして、サラサラっとメモ帳に文字を書いていく。
「――――」
「――――?」
ずっと頭を下げたままのさくらの肩をポンポンと叩く雪乃。
さくらが顔を上げると、雪乃の胸元に文字が書かれたメモ帳があった。
さくらはそれを読むと……目から涙が溢れ出した。
メモ帳に書いていたのは、
『良いよ。ぜひ友達になってください!』
だった。
さくらは思わず雪乃を抱きしめた。
雪乃は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐにもとの表情に戻った。
そして、さくらの背中を優しく抱きしめたのだった。
(――――今日の俺の出番はここまでか。おめでとうさくら。萩さんを大事にしろよな)
抱き合う2人を見て、清太は教室を後にした。
嬉しい気持ちもあったが、彼の後ろ姿にはどこか哀愁が漂っていた。
◇◇◇
雪乃と友達になった。
しかも自分の力で。
さくらは舞い上がっていた。
今までは清太繋がりで出来た友達がほとんどだったが、雪乃の場合は違う。
自分の力で作ることが出来たのだ!
この勇気ある行動に皆さん盛大な拍手を彼女に送ってください!
お、もうすでに感動して泣いていらっしゃる方々もいますね。
良いんですよ泣いたって。
自分の推しキャラが進化したところを見たら、自然と泣けてきちゃいますよね。
泣いてください、どんどん泣いてください!
「萩さんはお家どこら辺にあるの?」
「――――」
雪乃はメモ帳に書き記した。
いちいち間に説明を入れるのは面倒なので、これからは二重括弧で表しますね。
会話速度が早くなってしまいますが、その方が見やすいでしょうしね。
その代わり勘違いしないでいただきたいのは、雪乃は決してテレパシーで話しているわけではありません!
メモ帳を使って相手と会話をしているだけなので、そこはご理解をお願い申し上げます!
『白山町』
「えっ! わたしが住んでいるところと同じだよ! ちなみに何丁目?」
『2丁目』
「ええっ!? わたしも2丁目なの! ねえ、今日から一緒に帰ろう? もちろん学校行くときも一緒に行こうよ!」
「――――!」
さくらに誘われた瞬間、雪乃の雰囲気が少し変わった。
もちろん表情は変わらないが、どこか嬉しそうだった。
さくらは完全に調子に乗ってしまっているため、雪乃の雰囲気が変わったことに気づいていなかった。
あわあわ、わたわたしながらも腕を振って話す。
それを見ると、雪乃はまたメモ帳に何かを書き始めた。
そして、興奮しているさくらの肩をとんとんと叩いた。
「ひゃわっ! ど、どうしたの萩さん?」
雪乃はすっとさくらの眼の前にメモ帳に書き記したものを見せた。
そこに書いていたのは……。
『うん、良いよ』
「――――! う、うええええん!!」
最高の答えだった。
さくらは嬉しさのあまりその場に崩れ落ち、大泣きしてしまった。
それを見た雪乃はしゃがみ込み、さくらの顔を覗き込んだ。
そして……。
「――――」
さくらを慰めるように優しく抱きしめた。
放課後2人きりの教室には、温かい雰囲気が流れ込んでいた。
すると、雪乃の感情にも変化が。
いつもしまい込まれていた感情が再び芽吹いていようとした。
それは友情という感情だった。
普段から一言も話さないため、絶望的なくらいに友達が出来なかった。
しかし、今日この出来事で雪乃の人生に転機が訪れた。
いつも泣いてばかりのさくらが、まさか自分と友達になって欲しいと言われるとは思ってもいなかった。
「――――」
「――――!? えっ、萩さん?」
先ほどよりもさらに強く抱きしめられる感触がして、さくらは顔を上げた。
さくらの視線からは雪乃の背中と肩、首、そして後頭部しか見えなかったが、耳元からは鼻を啜る音が聞こえた。
さくらは驚いた表情をした。
しかし、だんだんとその表情は変わっていき……最終的ににへらっと笑った。
そして、さくらも雪乃と同様に強く抱きしめた。
泣き虫のさくらと全く話さない雪乃……それぞれ問題を抱えた少女たちの新たな友情が芽生えた瞬間だった。
2人の今後の友情に幸あれ!
ということで、新たな仲間が加わりました!
言葉を話さない謎の少女、萩 雪乃が今後さらに物語に登場します!
それにしても……さくら良かったねぇ〜。
ずずっ! ああ、わたしも泣けてきちゃいました……。
ティッシュ……ずびびーっ!
はあ……ということで、今回のお話はここまで!
次回も雪乃が登場しますが……とある人物に危機が迫ります。
それではエンディングへと参りましょう!
いつもの『大好きな人』……ではなく、EDソングもさくらのキャラクターソングとなります!
では聞いてください!
歌は矢野 さくら、演出は矢野 さくらと萩 雪乃で『ふたりは
それではまたお会いしましょう!
バイバイ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます