第53話 一緒のベットって一番緊張する

 さて、皆さんが一番期待していたシーンが遂にやってきました!

思わず手を叩いて喜んでいる方、あるいはもうお祭り騒ぎで円陣を作って踊っておる方々の姿が見えますが、わたくしも同じ気持ちです。

なので、後でそこの円陣に加わって、わたくしも一緒に踊ろうかと思います。

それでは早速、OPソング『大好きな人』とともにスタートです!











◇◇◇










 はい、ということで早速最初のワンシーンが、一緒の布団に潜り込む清太とさくらの様子という最高のシーンです。

まあ当然2人は恥ずかしくなるわけで、


「――――」


「――――」


 お互い黙ったまま一言も話さず、ただ視線を逸らすだけ。

偶然見つめ合ったとしても、バッとすぐに視線を逸らしてしまいます。

 やれやれ、早くイチャつきなさいよ! って急かす方々が多い方も多いと思いますが、まあまあ落ち着いて……。

一緒のベットに寝るのは実に幼稚園以来。

幼稚園通っているお年頃なら男女一緒に寝たとしても何とも思わない。

しかし、高校生になった男女が一緒のベットに寝るとなると……こうなっちゃうのは普通です。

しかも恋人同士ならなおさら……。


「なぎさちゃん隣良い?」


「んん……良いよ。ごめんね荻さん、ちょっとだけ動くね……」


 前の方からちょっとだけ会話が聞こえた。

そう、颯太と渚である。

なかなか話せない清太とさくらは、そちらの会話に耳を傾けた。


「ごめんねなぎさちゃん、寝てたよね?」


「大丈夫、さっきさくらちゃんが清太くんのほうに行った時に寝ちゃってたみたい」


「そうなんだ。僕もさっきさくらちゃんが清太の後ろにいたの見えたから、場所譲ったんだ」


「そうたくん、なかなかやりますなぁ〜」


「もちろんですよ、僕は気が利く人なんで! あはは……」


「ふふっ」


 この2人は、いつもこんな会話をしているのかと思った清太。

意外と日常的な感じで、普通の会話を楽しんでいる様子だ。


「荻さん寝てる?」


「うん、ぐっすり寝てる。ねえ知ってる? 荻さんってね……胸すごい大きかったんだよ!」


「ちょっ! やめてよなぎさちゃん!」


「え〜? だってびっくりしたんだもん。荻さんって普段そんな感じしないでしょ? でもね……意外なんだけど着痩せするタイプだったの!」


「へ、へぇ〜。そうなんだぁ……」


 こんな話をしている2人が衝撃的過ぎて驚くさくら。

2人とも普段は純粋な雰囲気を見せているため、あまり想像出来なかった。

しかし、渚の言う通り……雪乃のバストは本当に大きかった。

ちょっと羨ましいなと思ってしまうほどに。


「ねえ、そうたくん。そうたくんは大きい方が良いの?」


「へっ!?」


 思わず大きくて変な声を出してしまい、すぐに口を手で塞ぐ颯太。

顔を真っ赤にしながら、視線を渚から逸らした。

すると、渚は強調するかのように自分の両胸に手で触れた。


「わたしって全然大きくないでしょ? あまり魅力的なところもないし……」


 その仕草だけで恥ずかしくて見られないのに、そんなことまで聞かれたら悶絶してしまうほど危機に追い込まれる颯太。

颯太からすると、渚のこの言葉は破壊的な言葉。

ほぼ、颯太を誘っているのと変わらない意味合いに聞こえてしまうのだ。

何故ならちょっと公衆の場では話すことが出来ない、アレな展開になっているときに、渚は颯太に必ずと言っていいほどこの言葉を聞いてくるからである。

 そう、アレですアレ。


「えっと……僕はなぎさちゃんくらいがちょうど良い気がするけどなぁ〜」


「――――! そ、そうなんだ……」


 本人が聞いておきながら、結局彼女も顔を真っ赤にして頭から煙を出してしまう結末。

その前にいる旦那様も同じ状態になってしまった。


「――――清太くんはどう?」


「はっ?」


「わたしも大きくないけど……」


「――――!?」


 さくらも渚と同じようなことを聞いた。

清太は思わず顔を真っ赤にしながら驚く。

まさか彼女がこんなことを聞いてくるなど思ってもいなかったからだ。


「お、俺は……大きいとか小さいとか関係ないと思うけどな。ただ、一つ言えるのは……さくらが可愛いってこと、だな……」


「〜〜〜〜〜!?」


 自分で言って恥ずかしくなった清太は、顔をベットに埋めた。

それに対して、さくらは蒸発してしまうくらいに顔を真っ赤にして固まってしまった。

 お互いの心臓が飛び出てしまいそうなくらいにドキドキしている中、さくらは自分の胸の前で手を握る。

そしてうつ伏せになって顔を隠している清太にそっと近づき、彼の手をそっと触れた。


「――――! さ、さくら?」


「清太くん……清太くんもかっこいい、よ。うん、すごく素敵でかっこいい人。だかから、わたしは清太くんのことが好きなの。清太くん大好き」


「さくら……。俺も好きだ、さくらのこと大好きだ」


 お互いの気持ちを確かめ合う2人。

そして清太は右手を、さくらは左手を出してお互いに手をつなぎ、指を絡ませて恋人繋ぎをする。

そして反対の手でお互いを自分に引き寄せるかのように抱きしめたのだった。

 はわわ……こっちまでドキドキしてきました!

人の家、しかも普段颯太と渚が使っているベットでラブコメ過ぎる展開が待ち構えていたとは……!

もう尊しぎて気絶、意識不明、そのまま昇天してしまいそうです。


「いやはや、あの2人はいま愛を育んでいるようですよ奥さん」


「そうみたいですよ、こっちまで嬉しくなってきちゃいますね旦那さん」


 近所のおじさんおばさんみたいな口調で会話をする颯太と渚。

しかし、隣の2人の雰囲気に浸ってしまったせいで飲み込まれ……颯太と渚もこっそりキスをした。

 あ、甘すぎますってここの部屋の中!!

良いんですか? 本当に良いんですか!?

でもこの作品はラブコメなので、まあ良いとしましょう!

これこそラブコメ!


「すぅ……すぅ……」


 そんな状況を知る由もなく、1人すやすやと心地良さそうに寝ている雪乃。

彼女も新たな出会いがあると良いですね……。

もちろんわたくしはこの物語の全てを知ってる人間なので、彼女が最後どうなるのかも知っています。

彼女は――――。

 ただ、今は皆さんに教えることは出来ません。

ネタバレになっちゃいますからね。

なので、今は雪乃のことをそっと応援してあげてください!

彼女は頑張り屋さんなので、その姿を感じて好きになる読者さんもいると思いますよ!











◇◇◇










 気づけば全員寝ていて、気がつけば朝どころか昼を迎えているのが夜更かしの後の目覚めというものです。

時刻はもうすぐ11時を回ろうとしています。

 この時間になっても全く起きる気配がありません。

おっ、と思っていたら1人が目を覚ましましたね。


「ん……ん?」


 最初に起きたのは颯太。

しかし、起きた瞬間体に違和感が……。

左腕から柔らかい感触が伝わっているのです。

颯太はその方を見ると……雪乃の寝顔が。


「――――! ゆ、雪乃さん!?」


 なんと、雪乃が颯太の左腕を抱きしめながら寝ていたのだ。

実は雪乃は意外と可愛い特性を持っていてですね、寝るときは抱きまくらで抱きしめながら寝るという習性があります。

本人曰く結構安心するようで、抱きまくらがあったほうが心地よく寝られるそうです。

 どうやら寝ぼけたままトイレに行き、そのまま颯太の左側に寝転がって彼を抱きまくら代わりにしてしまったようです。


「ま、まずい……。下手したらなぎさちゃんが嫉妬しちゃう!」


 何がまずいか、それは雪乃が携えている大きな胸です。

颯太の腕に思いっきり当たってしまっています。

そんなのを渚が見たら、絶対に白い目で見られるに違いありません!


「お、荻さーん。ちょっと申し訳ないんだけど、ちょっと体を避けてくれるとありがたい……」


「すぅ……すぅ……」


 声をかけてみるが全く行き届かず、雪乃はまだまだ夢の中。

結局何度も呼びかけても起きることはなく、挙句の果てに渚に見られてしまった。

その時の彼女の表情は……引いていた。

颯太くん可哀想!

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