第52話 お泊りの定番といえば!

 さて、部屋の明かりが消えて辺りは真っ暗になりました。

時刻はすでに夜中の2時を回ろうとしています。

みんな疲れて就寝――――というわけにはいかないというのがお泊まり会というものです。

おや、なにやらコソコソ話が聞こえてまいりました。


「おい颯太!」


「どうしたの?」


「今日は絶対お前を寝かせないからな!」


「――――えっ?」


 さあ、波乱の展開はまだ終わる気配がありません!

どうも皆さんごきげんよう、ナレーションです。

それでは早速、OPソングへ参りましょう!

『大好きな人』、歌える人はぜひ一緒に歌ってくださいね!

あ、わたくしは下手っぴなので歌いません……。











◇◇◇










「寝かせねぇぞ颯太……」


「怖い! 怖いよ清太!」


 消灯して10秒も経たずに、早速颯太に襲いかかる清太。

怪しげな笑みを浮かべながら目を光らせる清太、本当に怖いです……。

まるで獲物にかぶりつくような勢いと眼光の光らせ方をしています。

さすが顔はチンピラ……。


「怖くねぇよ。だけどな颯太、俺と一緒のベットになったってことは……どうなるか分かってるよな?」


「――――」


 さあここで一つの疑問が湧いてくるでしょう。

何故、男同士と女同士が別々で寝ているのか? ということ。

ラブコメなんだから、ここは堂々と颯太は渚と、清太はさくらと一緒に寝ればいいじゃないですか。

 まあまあそう焦らずに……。

まだまだ夜は長いです。

これからどんどんラブコメらしく攻めたことを彼らはするので、どうぞご安心を……。

逆に安心出来ないレベルになるかもしれませんね。

なので、今はこの並びでお楽しみください。


「ねぇ渚ちゃん」


「ん、どうしたの?」


「その……渚ちゃんに恋愛相談したいの」


「恋愛相談? うん、全然大丈夫だよ!」


 男子2人が布団の中で暴れ回ってるなか、女子たちもヒソヒソと話し始める。

女性でお泊まりの定番といえば、やっぱり恋バナですよね〜。

もちろん布団の中に潜り込んで話します。


『わたしもそれ聞きたい』


「「――――!?」」


 すると寝ていたはずの雪乃も『恋愛相談』というキーワードを聞いた途端、目をギンギラギンにさせてスマホのメモ機能で高速タップ。

会話文を2人に見せた。


「えっとぉ……荻さんも恋愛相談気になるの?」


『もちろん!』


「うん良いよ! 荻さんも一緒に話そうよ!」


「――――!」


 嬉しそうな表情を見せる雪乃。

さあ只今から秘密の女子会、開催です!










◇◇◇









 女子会を覗く前に――――先に男子2人を最後まで覗いてしまいましょう。

おや、おふざけは終わってこちらも恋愛話になってますね。

どうやら、清太は颯太と渚の出会いについて気になっているようです。

 そう、清太は颯太と渚がどうやって恋愛に発展して結婚にまで至ったのか、まだ知らないのです。

なので、今回で清太は初めて2人の馴れ初めについて初めて聞くことになります。


「初めて渚ちゃんと出会ったのは、実は高校生からじゃないんだ。幼稚園の時に一回だけ会ったことがあるんだ」


「は? ま、マジで?」


 衝撃の事実に一瞬固まる清太。


「うん、本当なんだ。本当に偶然なんだけどね。向こうの方にさ、お日様公園っていう公園あるの知ってる?」


「お日様公園……あれか? 小高い山があって展望台あるところだよな?」


「そうそう、そこで幼稚園の時に偶然なぎさちゃんと会ったんだ。あの時はまだ家族が仲良かったみたいだから、ただ来てたんだろうね。でも、どこか寂しい感じがして……僕が誘って一緒にだるまさんが転んだをしたのがきっかけ」


「はぇ〜、なるほど……それを、渚ちゃんはずっと思えてたってことか」


「うん、それで高校生になって久しぶりに会ったんだ。僕は最初なぎさちゃんのこと忘れちゃってたけど、なぎさちゃんに告白する直前に思い出して……。その時に思ったんだ。僕はなぎさちゃんを守らなきゃいけない立場なんだって。なぎさちゃんのことはもともと気になってて好きになってたけど、今こうやって結婚して……僕は幸せ者だなっていつも感じてる」


 颯太の表情を見ればすぐに分かる。

渚との出会いが、どれだけ自分の人生に影響を与えたかを。

結婚生活にはもちろん不安なことはあるだろうが、そんなことは微塵も感じない。

まさに運命の相手だったというわけだ。


「後悔は全くしてないって感じだな」


「もちろん! こんな僕のことをずっと好きでいてくれたことも嬉しいけど、今こうしてなぎさちゃんのすぐ隣で居られるのが一番嬉しい。なぎさちゃんは重くて残酷な過去を抱えているから、毎日笑って過ごしてくれるのが僕の目標なんだ!」


「――――! 渚ちゃんは絶対幸せだと思うぞ。だからこそ、颯太に尽くしたがりなんだろうな」


「あはは、かもしれないね。でもたまに心配になるくらい尽くしてくることもあるから手伝うけどね。それはそうと、清太はどうなの? さくらちゃんとは順調?」


「い、いきなり俺たちの話になるのかよ……」


「あ、もしかして恥ずかしくなっちゃった?」


「――――ま、まあ……」


 怪しくニヤニヤと笑みを浮かべながら聞いてくる颯太に、清太は思わず肯定してしまう。

清太なら一旦否定すると思ったが……やっぱり恋愛の大先輩には逆らえない様子。

 あっという間に彼の顔は真っ赤になり、颯太から視線を逸らした。

清太がこんな様子を見せることは滅多にないため、颯太は新鮮な気持ちになった。


「ふぅーん……」


「な、何だよ」


「じゃあ清太に聞くけど……さくらちゃんのこと好き?」


「――――っ!? おまっ! 何言わせようとしてんだよ!」


「しーっ! 声大きいよ!」


 思わず大声を張り上げそうになる清太。

颯太に止められ、自分の手で口を塞いだ。


「な、何でそんなこと聞くんだよ!」


「え〜? だって僕となぎさちゃんと付き合い始めた時は、清太結構聞いてたよね? しかも、毎日のように聞いてた……よね?」


「あっ、はい……。毎日のように聞いておりました……」


「だから、僕が聞いても良いよね?」


「も、もちろんでございます……」


 この時、清太は思った。

颯太をあまりからかいすぎると、とんでもないバチが当たるということを……。

彼の笑顔は、やけに恐ろしく見えた。


「で、どうなの? 清太はさくらちゃんのこと好き?」


「――――ああ、もちろんだ。俺はさくらのこと好きだよ」


「付き合うことが出来て良かった?」


「ああ、めっちゃ嬉しいよ」


「じゃあさ、清太はさくらちゃんのどんなところが好きなの?」


「お前そこまで聞くのか……?」


 そう聞く清太だったが、颯太は何も言わずにじっと彼を見つめたまま微笑む。

完全に縮こまっている清太は、颯太の笑みに勝つことは出来ずに正直に答えた。


「さくらの好きなところ、か……。まあ見た目が可愛いし性格もめっちゃ良いって言うのもあるけど――――やっぱりさくらが泣き虫なところだな」


「な、泣き虫なところ?」


 意外な答えが返ってきたため、颯太は訳が分からなかった。

しかし清太の口から出たこの答えは、長い付き合いがあるからこそだった。


「俺とさくらってさ、幼稚園からの長い付き合いじゃん? さくらって昔からずっと泣いてばかりだったから、俺が慰める役割はもう既にこの頃からやってた。でも、今になってもすぐ泣くのを見るとさ、どこか子どもみたいに見えるんだよ。でも、それがさくららしいっていうかさ……。いつもオドオドしてる、でも優しくて意外と頑張り屋さんなところが一番惹かれた理由だと思うな」


 そう話す清太を見て、颯太は思わず笑みを浮かべた。

これはもちろん威圧の笑みではない。

 最初はたださくらのことが放っておけなかったという理由だったが、高校生となった今は違う感情になった。

泣いてばかりだが、誰にでも優しい彼女の姿が清太の恋心に刺さったのだ。


「じゃあ……清太は心の底からさくらちゃんと付き合えて良かったって思ってるんだね」


「そうだな」


「だって、さくらちゃん。良かったね!」


「はっ?」


「ふぇ!? き、気づいてたの颯太くん!?」


 実は颯太はずっと気づいていた。

さくらが起き上がって、ずっと清太のことを見ていたことを。

さすがに最初は幽霊でも出たのかと驚いたが、よくよく見ると姿形からさくらだと分かった。

だから、颯太はわざと清太にさくらのことを好きになった理由を聞いたのだ。


「まあね、何か足音聞こえてきたなって思って向かい側見たらさくらちゃんの姿見えたんだ」


「颯太くん気づいてたの?」


 「最初は幽霊かと思って焦ったけどね……。でもすぐにさくらちゃんだって気づいたよ。あ、僕避けるよ。あとは2人で楽しい一時を……」


「えっ、はっ、颯太!?」


「こういうのはこういう時にしか出来ないからね。だから遠慮せずにどうぞ! 僕はなぎさちゃんのところに行ってるから」


 そう言って、颯太は渚のもとへ行き、渚の隣に寝転がった。

さあ、残された2人は一体どうなってしまうのか!?

次回の展開が楽しみ! って思いますよね!

はいそうです、次回は清太とさくらが一緒のベットで寝ます。

神回間違いなさそうですね!

 おっと、時間が来てしまったようです。

EDソング『ドキドキ!』が聞こえてきました。

では、次回もお会いしましょう!

さようなら!

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