第19話 笠間夫婦の恋のお悩み相談所開設中!

「清太もついに……そこまで考えるようになったんだね! 僕は泣きそうだよ!」


『は、はあ?』


「まさか清太くん……気づいてないの?」


『気づいてない? どういうことだ?』


 わざとらしく泣く颯太と、驚いている渚の声を聞いてぽかんとする清太。

そう、清太は極度の鈍感野郎だったのだ。

これじゃあ、最初の時の颯太と同じですね……。

期待していましたが、この調子だと颯太よりも進展は難しそうです。

読者の皆さん、『早く気づけ清太』というハッシュタグをつけて、彼を気づかせてください!

じゃないと、本当に気づかない可能性が非常に高いですよ!


「なぎさちゃん、これ多分本人が気づかないと教える意味ないよね?」


「うん、わたしもそう思う!」


「ということで、僕となぎさちゃんの相談所はこれで終わりです。また次回のご利用をお待ちしております」


『ちょっと待て待てぃ! 答えは教えてくれねえのかよ!』


 颯太が電話を切ろうとしようとするところを引き止める清太。

全くピンと来ない清太は、答えを颯太に教えてほしかったが……。

清太の言葉に、颯太はふっと笑った。


「答えは僕が教えても楽しくないよ清太。理不尽だと思われるかもしれないけど、今回の清太のお悩みはすごく簡単で自分の力で解決できるもの。だから、今回だけは自分の力で頑張って欲しい!」


 ここで映像を颯太から清太に注目!


「――――」


『清太くん頑張ってね! わたしとそうたくん、2人で清太くんを応援してるから!』


「お、おう? が、頑張るぞ」


『それじゃあ、僕はこのへんで! これから、2人でデートしに行くから』


『ええっ!? そんな予定なかったよ!?』


『この話を聞いたら、なぎさちゃんとデートしたくなっちゃった』


『もうそうたくんたら……』


「――――」


 清太は頭の中が混乱しているため、2人が電話越しにイチャついている会話が聞こえても、耳から耳へとすり抜けて全く聞こえていない状態だった。


『とにかく! 清太がさくらちゃんの気持ちに気づけたら分かるかもね。それじゃ、通話切るからね。また明日!』


 清太のスマホは通話が切れたことを知らせる音が鳴ると、そのままトーク画面になった。

清太は耳に当てていたスマホをゆっくりと離すと、正面を向いたまま、目の前にある部屋の壁を見つめた。


「あいつの、気持ち、か……」


 清太はそう小さく呟いた。

 これにて笠間夫婦のお悩み相談所は営業終了!

文字数たった971文字だけという、本当に短い開設時間でした。

いや、本当はもっと長い時間営業していたんですけどね。

颯太はあえて答えを教えず、清太が自分で気づかせるという手段を使いましたが、

果たしてうまくいくのでしょうか……。

 そして、これからデートに行くという2人はというと……。


「そうたくんからデートに誘ってくれるなんて嬉しい! 今日のわたし……止められないかも」


「あはは、止めらなくなっても安心して! 僕がちゃんとエスコートするから!」


「――――そういうところが、そうたくんのかっこいいところ!」


 あっ、そんな甘すぎる会話を聞いたら、また鼻血出ちゃうじゃないですか!

ちょ、スタッフの誰かティッシュ、ティッシュ持ってきて!

あああああああ!!!!

しかも雰囲気に押されてキスまでしちゃって……もう、2人が尊すぎますぅ……。


「それじゃあ行こうかなぎさちゃん」


「うん! そうたくんとデート楽しみ!」


 部屋を出て鍵を閉めると、仲良く恋人繋ぎをしながらエレベーターに乗って降りていった。

目的地は、2人にとっては思い入れがある喫茶店とあの展望台。

清太の話を聞いて、久しぶりにその場所に行きたいと思ったからである。









◇◇◇









 視点を変えまして……清太と同様、今回で初めてカメラを向けた人物、矢野 さくらの様子を見てみましょう。

さくらの家は清楚な感じだから家も豪華で、きっとお金持ちのお嬢様なんだろうなぁぁぁぁぁぁぁ!!!!! って思った読者の皆様、それは間違いです。

本当の清楚担当だからといって、お嬢様というわけではありません。


『お父様が〇〇株式会社の社長なのよ! さあ、わたしをもっと崇めなさい!』


 っていうタイプのお嬢様もいたりしますが、さくらはそもそもそんな性格ではないので当てはまりません。

じゃあ、どんな家に住んでいるのかと言うと……住宅街のどこにでもある、総二階建ての一軒家。


「――――」


 さくらはスマホで撮影した写真を眺めていた。

渚との2ショット写真がギャラリーのほとんどを占めているが、その中に清太の後ろ姿と颯太と話している姿がちらほらとあった。

すると、さくらは清太の後ろ姿を撮影した写真をタップした。

それをじっと眺めるさくら。


「清太くん……えへへ」


 にへらと笑うさくら。

これはもしや……恋の予感!?

じゃあどんちゃん騒ぎしないとね!

太鼓の音を響かせてみんなで何故か盆踊りを踊って……なんか1人しれっと阿波踊り踊っている人いますね。

ちょいと皆さん、それは気が早まりすぎですよ!

 見た目はツンデレ少女、恋だって自覚していても違うと言って譲らないかもしれないですが……なんてたってさくらですよ?

ふわふわっとした雰囲気を強く漂わせる女子高生が、そんな想いを持っているなんて――――


「清太くんかっこいい……」


 なあああああぁぁぁあああぁぁぁああああうわああああああああああああああああぁぁああぁぁぁぁぁあああ!!!!!!!

あなたも恋する乙女だったんですかぁ!?

 ちょっと作者さん!

もしかして登場人物全員くっつけようとかしてないですよねえ!?

――――え、そうじゃないんですか?

はい、はいはい……ということはつまり、男としてではなく友達としてってことですか?


(憧れちゃう!)


 あ、さくらの心の声で完全に理解しました。

この言い方は恋の好きではありませんね。

清太は仲の良い友達、親友のような存在だと認識しているようです。

これは……清太は相当苦労しそうですねぇ……。

なので読者の皆さん、清太を目一杯応援してあげてください!

 ということで、今回のお話はここでおしまいです。

それではまたお会いしましょう!

EDソングはもちろんお決まりの『ドキドキ!』です!

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