第15話 夜って雰囲気変わりがち

 はいいいいいぃぃぃぃぃ!!!!!

皆さん……この日を、とっても楽しみにしていたことでしょう!

 皆さんごきげんよう。

今日も『可愛い嫁さんとの結婚生活』をお送りしますっ!

パチパチパチ〜!

 はい、ということで……今日も盛り上がっていきましょう!

よろしくお願いしますぅ〜。

 さて、前回はラストで茹でたてのおでんくらい熱々な展開でした。

しかし、今回はどれを遥かに超える熱々なので、皆さん気化しないようご注意ください。


「あ、もうこんな時間……もう寝ようかな」


「うん、わたしも眠たくなってきちゃった……」


 時刻は深夜1時。

2人で颯太が読んでいたラブコメ漫画を見ているうちに、だんだんと眠気が襲ってくる。

もう限界に近づいていた2人は寝室へ向かうことに。

 ちなみに……寝室には、何故かダブルベットがある。

このダブルベット、実は颯太の両親が勝手にプレゼントしたものなのである。

何を期待したのか分からないが、自分の息子が結婚することを知った途端速攻買ってきた。

もっと良いやつをプレゼントする気はなかったのでしょうか……。

 プレゼントされた2人は戸惑いを見せたが、せっかく買ってくれたものをいらないと言うわけにはいかない。

2人は仕方なく置いた。

そう、最初は仕方なく置いて使うはずだった。


「そうたくん……」


「なぎさちゃ――――」


 しかし、このダブルベットを使っていくうちに、2人はさらに仲を深めることとなる。

夜、そして明かりがない『暗闇』という特別な空間で2人きり……。

男女と共にいるというのは不思議なもので、暗い場所でベットにいると雰囲気が変わってしまいがちである。

 本当に何ででしょうね?

人間の本能的なものがそうさせるのでしょうか?


「ん……」


 先程よりも、さらに長いキスをする2人。

颯太よりも、渚のほうが積極的のため、スキがあればこれである。

 読者の皆様は……特に男性の読者の皆様はどうでしょうか?

自分から積極的になりたいですか?

それとも、渚のように相手から積極的になられたいですか?

まあ、両方にしろドMかドSかになってしまいますが……。

 わたくしですか?

わたくしは……攻められたいし攻めたいですね〜。

本当に何の話をしているのでしょうかね〜。

――――続きいきましょう。


「な、なぎさちゃん……。今日はどうしたの? いきなり積極的になって……」


「その……さっきのラブコメで……」


「さっきのラブコメ?」


「うん……。最後のシーンで、敷布団が1つしかないから仕方なく一緒に寝る場面あったでしょ?」


「――――うん、あったね」


「その後、何故かわからないけど良い雰囲気になって、主人公とヒロインはキスしちゃったよね」


「うん」


「わたしたちも今そんな状況だなって思って……」


「う、うん……。そうだね……」


「そう考えたら……したくなっちゃったの」


「そ、そうなんだー」


 思わず棒読みになって答えてしまう颯太。

しかし、渚の言う通り、男女2人が同じベットを共有している。

そして、人間の本能的なものかは分からないが、この状況になると、だんだんと空気が変わっていくのは、先程読んだラブコメ漫画と全く同じだった。

 颯太も少しはそんな気分になっていたが、それはいけないことだと抑え込んでいた。

しかし、彼は思春期真っ只中の男子高校生。

完全に抑え込むのは不可能だった。

 それは渚も同じ。

女の子だからといって、そんな気にはならないということはない。

思春期真っ只中の女子高校生にも、そんなことを完全に抑え込むのは不可能に近い。

そのため、渚は気持ちをさえ込めずに、颯太の唇を奪ってしまったのである。


「ご、ごめんねそうたくん……。わたしの勝手な行動で困惑させちゃったよね……」


 自分が思わずしてしまった行動に、渚は表情を暗くした。

すると、自分の手が触れる感触がした。


「なぎさちゃん、僕は大丈夫だよ。だって僕たちは夫婦なんだよ? 僕はなぎさちゃんのことが大好きだから、そして、なぎさちゃんも僕のこと好きでいてくれるから、今こうして僕たちはいる。だから、なぎさちゃんは遠慮しなくて良いんだよ」


「そうたくん……。うん、ありがとう」


 きゅっと渚の手を優しく包み込むように握る颯太の手を、渚も握り返した。

毎日触れていて安心出来る颯太の手。

渚の心はぽかぽかと温かくなっていき……幸せイオンを蓄える――――


「そうたくん!」


「うわあ!? な、なぎさちゃん急にどうしたの――――」


「もう、全部そうたくんのせいだからね?」


「えっ?」


 それどころか、逆に渚を大暴走させる原因を作ってしまった。

渚はいきなり颯太に抱きしめ、彼の胸に顔を埋めた。


「そうたくんとこうやって一緒に居られるだけで、わたしはすごく幸せなのに、そんなに惚れ直しちゃうようなこと言われたら……わたし止められなくなっちゃうよ?」


「――――良いよ。なぎさちゃんが止められなくなっても、僕はちゃんと受け止めてあげるから」


「――――! そうたくぅん!」


 嗚呼……おっと、漢字を使ってしまうほど2人の甘い雰囲気に浸っておりました。

おかげで鼻血は止まらない次第であります。

今日も貧血確定ですね。

 ベットで抱き合い、ぬくぬくしている颯太と渚。

この後の展開に、読者の皆さんは顔を赤くしながら、ニヤニヤといやらしい表情を浮かべている思いますが、そんな展開は一切ありません。

しかし、何度も言いますが2人は思春期真っ只中の高校生。

本当はそういう展開に持っていきたいという気持ちでいっぱいです。

今の2人を見ていると、そういう系の知識をまだ持っていない純粋な高校生と思うが、かなり抑え込んでいるのです。


「ねえ、そうたくん」


「なに?」


「わたしはこの先の展開になっても良いんだよ?」


「そ、それは……。確かに僕はなぎさちゃんとこの先の展開に持っていきたい。でも、僕たちはまだ学生だから……。なぎさちゃんだって望んでいるのは十分に分かってる。でも、今はこれで我慢して欲しいんだ」


「うん、そうたくんがそう言うなら、わたしも我慢する。わたしはそうたくんがそばに居てくれるだけで十分だから」


「ありがとう、なぎさちゃん」


 そう言って、またキスをする2人。

こういうことをするのは夜だけ。

完全に2人きりになるという条件が揃ったときだけに起こる、2人にとってはとっても大事なイベント。

結局、夜というものは雰囲気が変わりがちなのである。

 では、この2人をどアップで映しながら、静かにエンディングにいきましょう。

今日のEDソングは『2人きりの夜』です。

ピアノ主体の静かな曲を聞きながら、2人の甘い雰囲気の余韻に浸ってください。

それでは、また次回お会いしましょう。

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