第3話 2人が結婚するまで1

 さあ、幸運とも言える偶然の出会いから物語が始まった颯太と渚。

この出会いをきっかけに2人は仲が良くなり、渚の提案で遂に休日に2人で遊ぶことに。

そう、これがデートというものである。


「颯太くん!」


「あ、おはよう渚さん」


 駅前の広場で待ち合わせることになっているが、意外にも早く着いてしまった颯太。

ソワソワしながら待っていると、右方向から渚の声が聞こえた。

そこには、セーラー服を着ている時とは違い、明るめの服と膝丈くらいの白いスカートを身に着けて颯太のところへ走り寄る渚がいた。


(ま、眩しい!)


 あまりにも美しい、可愛すぎるその姿に、颯太は腕で目を隠してしまいそうになるほど神々しかった。

それは颯太だけでなく、周りで誰かの待ち合わせをしている人、今日はどんな女と遊ぼうかと朝から下品なことを考えている馬鹿アホなチャラ男、休日なのに何故仕事をしなければいけないんだと文句を垂らしながら会社へ向かう社畜サラリーマンやOLたちでさえ、そう見えてしまうほどだった。


「もしかして待たせちゃった?」


「ううん、僕もさっき来たところだから気にしないで。あと……僕今日全くプラン考えてなくて……。もし渚さんが行きたいところがあったらそこにしようかなって思っているんだけど……」


 あー、これは完全にやらかしてしまいましたね。

男なんだからしっかり渚をエスコートしないとジト目で見られてしまいますよ!

――――と、言いたいところだが、女の子と何度も遊んだ経験がない颯太は、一晩中考えたが全く思い浮かばず……。

結局、渚に任せることにしたのだ。


「んー……。あっ、じゃあスポーツ専門店に行きたいかも!」


「えっ? そこに行きたいの? 良いけど何で?」


「颯太くんにバスケットボールのこと教えてもらおうって思ったの! わたし結構好きみたいで、色々知りたかったの」


「なるほど……。じゃあ、ちょっと歩くけど良いところがあるからそこに行こう」


「うん!」


 ということで颯太と渚の、デート(カップルではない)の始まりです!

ここからしばらくは、あっっっっまい空気が続くと予想されますので、鼻血と尊死にお気をつけ下さい。

あ、わたくしは堂々と鼻血出して尊死しながら実況いたします!












◇◇◇












 さあ、2人はスポーツ専門店に向かって歩き始め――――ぐふぅっっっっっ!!!

失礼いたしました……ティッシュティッシュ……。

 ――――ダメです、もうダメそうです!

この先をわたくしはもう知っているわけですが、頭にちらっと出てきただけでもうダメそう……。

とりあえず、ティッシュで鼻に栓をしておきます。


「――――? 気のせい……? さっきから騒がしい気がするけど……」


「休日だし、いつもより人が多いからじゃないかな?」


 すいません、騒がしく聞こえる原因はわたしです……。

さて、颯太と渚は10分弱歩くと、背の高い商業ビルにたどり着いた。

そのビルの下に、階段があり、そこがスポーツ専門店だ。


「着いたよ。ここが僕の行きつけのスポーツ専門店だよ!」


「へー、そうなんだ! ――――ねえ颯太くん、このお店の名前変じゃない? えっと……『ぽぴぽぴ』って言う名前の店なの……?」


「あー……そうなんだよね。変な名前だけど、品質とか品揃えはすごく良いから」


「そ、そうなんだ……」


「――――じゃ、じゃあ早速中に入ろう」


「う、うん!」


 さあ、このいかにも怪しい名前の看板をかけているスポーツ専門店に、いざ突入!

一応お伝えしますと、颯太が言った通りちゃんとしたお店ですのでご安心を……。

渚は微妙な顔をしながら、そして颯太は苦笑いをしながらお店の中に入るという、なんとも言えない雰囲気に包まれたまま、お店の中へ……。


「わあ! すごいスポーツ用品の数!」


「ね、すごいでしょ? 品揃えが豊富だから、僕も結構気に入っているんだ」


 店内に入った瞬間そこに広がっている風景は、渚が思わず感嘆するほどだった。

地下にあるお店とは思えないほど広く、バスケットボール用品、バトミントン用品、サッカー用品など様々なスポーツ用品が揃っていた。

しかし、広い割には人はまだら。

気になった渚は失礼な言葉になってしまうと考慮し、颯太の耳元で聞いてみることに。


「ねえ颯太くん」


「――――!? ど、どうしたの?」


 渚の耳元でコソコソ話をされ、思わず顔が熱くなってしまう颯太。

こんな美少女と一緒に行動していることが奇跡的なのに、耳元で囁かれるとは思ってもいなかった颯太は、もうこの時点で耐えられそうになかった。


「颯太くん? すごく顔赤いけど……大丈夫?」


「な、何でもないよ! 気にしないで!」


「そう……。じゃあちょっと颯太くんに聞きたいことがあるんだけど……」


「なに?」


 颯太は心を切り替えて、平常心を保ちながら耳を傾けた。

しかし、心臓はバクバクうるさいくらいに鳴っていた。


「こんなに品揃えが良いのに、何でお客さん少ないの?」


「それはね――――」


「――――!?」


 今度は颯太が耳元で囁いたが、渚はそれをやられ、思わず颯太から顔を離した。

渚も颯太と同じく、顔を赤くしていた。


「だ、大丈夫?」


「えっ、あ、うん……。ちょっと、颯太くんの顔が近かったなって思っただけだから……」


「あっ……ご、ごめんね!」


 それを聞いた颯太はまた顔を赤くして、渚から顔を離した。

お互い反対側を向いた。

しばらく気まずい雰囲気だったが、なんとかしようと颯太が渚に話しかける。


「えっと……。じゃあ、とりあえずバスケのコーナーに行こう」


「う、うん……」


 ちょっとだけ渚から離れて心を落ち着かせようと、先にバスケットボールコーナーへと向かっていってしまった颯太。


(あ、あんなことされたらドキドキしてしまうに決まってるよ……)


 そんなことを心のなかで思っている颯太。

そして、そんな颯太の後ろ姿を見つめたまま立ち尽くしている渚はというと……。


「〜〜〜〜〜〜!」


 下を向きながら、顔を真っ赤にしていた。

たったこれだけの理由だが、渚のきっかけはこれが最初だった。

ああ、わたくしはもう耐えられなさそうです……。

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